学び・つながる観光産業メディア

旅館業の深刻な人手不足、打開策は複業人材の活用にあり

コメント

旅館業における深刻な人手不足

 日本における人手不足は年々深刻化していますが、その中でもとくに旅館業での人手不足は過去最高水準に上ります。2023年1月に公表された帝国データバンクによる調査*によると、「旅館・ホテル」における正社員の人手不足割合は77.8%、非正社員の割合は81.1%となり、他の職種と比べて最も高い割合を記録しています。

 また、若手の離職率が高いことも問題視されています。2022年10月厚生労働省の公表によると、新規学卒就職者の産業別就職後3年以内離職率の中で、最も離職率の高い産業が「宿泊業・飲食サービス業」だったのです。

*帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2023年1月)」

https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p230207.html

複業という選択肢が打開策に

 人手不足解消の打開策となるのが「複業」という選択肢です。

 今回は、複業人材を受け入れるときと、従業員に対して複業を解禁するときのメリットと注意点についてそれぞれ解説します。

①複業人材を活用する際のメリットと注意点

 メリットは、やはり人手の確保になります。業務の中には正社員に任せなければいけない業務と、正社員でなくても任せられる業務があります。後者の業務を複業人材にお願いすることで、既存社員の業務負担を軽減することが可能です。

 また、複業人材は専門性の高いスキルを持つ人材が多いです。即戦力人材を迎え入れることは教育コストもかからず、自社にはないノウハウを得られるため、顧客への新たな価値提供につながります。

 ここで注意すべき点としては、複業人材を受け入れる前に複業人材がパフォーマンスを発揮しやすい体制を整えることです。例えば、リモートでの業務に対応するための体制を整えたり、複業人材をマネジメントする正社員を配置したりする必要があるでしょう。複業人材採用がはじめての方にとってはすこしハードルが高く思えるかもしれません。

②従業員に対して複業を解禁する際のメリットと注意点

 複業解禁は、従業員への福利厚生の役割が大きいです。複業は挑戦したいときに、誰もが独立や転職という選択肢を取らずとも挑戦できる最高のチケットです。複業を解禁することで、これまでやってみたかったことに挑戦するために、一念発起をして会社を辞める、という選択肢を取る従業員が減るでしょう。

 注意点としては、複業を禁止・制限をする場合の規定を明確にすることです。企業が複業を制限できるのは、企業秘密が漏洩する場合や、企業の利益を害する場合などが挙げられます。そのため、複業を解禁する際には、どのような複業が制限されるのかを明確にする必要があります。また、もしその制限を破ってしまった従業員がいた際の対応を決めておくことも重要となるでしょう。

旅館業における複業人材の活用事例

 私が代表取締役を務める株式会社Another worksが展開する複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」での、複業人材活用事例をご紹介します。

①中途採用の人事(ホテル事業・サービス事業)

 新型コロナウイルス感染症拡大が落ち着き、需要回復に向けて現場体制を強化するために、現場社員の採用を人事職の複業人材に依頼したいという案件です。時給は1,500円~2,800円で、稼働時間は自由です。具体的な業務内容は、面接の実施や評価シートの作成、提出になります。

②toCマーケティング(ホテル事業)

 WEBやSNSツールを用いた集客の強化を図るべく、複業人材を募集しています。時給は2,000円~3,000円で、具体的な業務内容はWEBマーケティング、SNSマーケティングのアドバイスや、SEO対策になります。

③法務(ホテル事業)

 契約書のレビューや規定の見直しなど法務全般を複業人材に依頼したいという案件です。時給は2,000円~で、具体的な業務内容は契約書のチェック、法改正の規定見直し、各関係会社への指導になります。

 今回ご紹介したのはあくまで一部の事例となりますが、他にもカスタマーサクセスや経営企画、WEBディレクターなどさまざまな職種で複業人材が求められています。

 旅館業における人手不足が深刻化する中で、複業人材を上手く活用することが打開策になるのではないでしょうか。

寄稿者 大林尚朝(おおばやし・なおとも) ㈱Another works / 代表取締役

/
/

会員登録をして記事にコメントをしてみましょう

おすすめ記事

/
/
/
/
/