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ONSEN・ガストロノミーウォーキングで地域を元気に

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 2016年に(一社)ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構を立ち上げ、食とウォーキングで地域を活性化する「ONSEN・ガストロノミーウォーキング」を各地で実施している。参加者の皆様には、「めぐる、たべる、つかる」を基本コンセプトに温泉地の食や酒に舌鼓を打ち、景観を楽しみ、温泉に浸かってリラックスしていただいている。3回に分けて、その目的と成果、魅力、今後の展望についてまとめてみたい。

1.ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構の設立

 全日本空輸在職時、2011年~2014年の4年にわたりANAの中部地区担当役員兼名古屋支店長を務めた。その時のアルザスとの出会いが、最初のきっかけになった。名古屋支店管轄下には神社の中の神社と言われる伊勢神宮がある。何度かお伺いしたが、宮司さんから「ご縁」という言葉をいただいた。まさにご縁の連続、出会いの連続で、現在に至ったと言っても過言ではない。

 当時の中部経済連合会街づくり委員会(委員長=河野名古屋鉄道会長当時)の欧州ミッションの一員として訪問地の一つアルザスを訪れた。そこで食とワインを中心とした街づくりに魅せられ、中部地域とアルザスの交流をお手伝いするようになり、岐阜県とアルザスの連携協定が締結するに至った。その過程で何度かアルザスを訪問した際に現地の方の勧めがあり、偶然ガストロノミーウォーキングを体験した。ワイン畑の絶景の中を歩き各ポイントでワインを傾けながら、地元の料理を堪能した。当地では、約100のワイナリーが連なるアルザスワイン街道の各村で、観光シーズンの6-9月に毎週末実施しているという。毎回3,500人が参加する。毎年3,000万人が訪れる世界有数の観光地がこれほどの努力をしている。日本で開催したら素晴らしいものになると直感した。

アルザスのガストロノミーウォーキング

 さらにご縁は続いた。2015年に着任したANA総合研究所で地域活性化を担当し、全国を飛び回る中で、日本の地方にもアルザスのようなパンチのあり、インバウンド客にもわかりやすいコンテンツが欲しいと考えていた。そんな折、温泉を所管する環境省が保護中心から利活用に舵を切り温泉保護利用推進室を作り、活性化の妙案を求めていると聞いた。調べてみると温泉地は全国に3,000か所以上も点在するまさに日本を象徴するコンテンツである。同様に酒蔵も約1,300もある。そして日本食は、世界遺産になるほど素晴らしく海の幸、山の幸と各地方でそれぞれ個性的な料理がある。これらをあわせれば、2025年に6,000万人に達するとされる外国人旅行客を地方に呼び込むキーコンテンツになる。 

 そこで長らく心に秘めていたアルザスのガストロノミーウォーキングを温泉地で実施して見てはどうかと同室に提案した。提案は思いの外評価していただき、皆様に背中を押していただき、社団法人を作って進めることになった。私が国内観光委員長をしていた日本観光振興協会がガストロノミーツーリズムの本家国連機関UNWTOの日本の窓口となっており、当時の見並陽一理事長、現在の久保成人理事長にもご賛同いただきお二人は、副会長として参画いただいている。

一般社団法人を設立

 会長をお願いした涌井史郎先生(東京都市大学特別教授)からは、「ONSEN」を世界語にする。「心と体のリトリートメント」「テロワール」等キーワードや湯治場として長期滞在する温泉地の復活等多くの指針を示していただいた。国民保養温泉地協会会長の大西長門市長(当時)、長野別府市長等自治体の長が発起人としてご参画され、長野市長は、同年11月の別府でのトライヤル開催を買って出ていただいた。事務局を担うANA総研を始めとするANAグループ、大和リース、クラブツーリズム株式会社、読売新聞等多くの企業の皆様も発足当初から企業会員として応援団を形成していただいている。4月にご提案して半年足らずという一気呵成の出来事であった。

次回は、温泉地の課題とガストロノミーツーリズムについて話したい。

寄稿者 小川正人(おがわ・まさと) (一社)ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構 / 理事長

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