江戸時代から明治時代の交易を担った北前船の寄港地が交流する「第33回北前船寄港地フォーラムin OKAYAMA」の前夜祭(欧州連合〈EU〉各国大使 歓迎のつどい)が10月5日、岡山県岡山市のホテルグランヴィア岡山で開かれた。全国から自治体や観光関係者のほか、EU各国の大使館関係者ら約360人が出席。実行委員会会長で岡山商工会議所の松田久会頭は「北前船の交流が多彩な顔ぶれを集めた」と来訪者を歓迎した。参加者が北前船を通じた各地の歴史や文化を語り合いながら地域間交流を行った。
北前船は、江戸時代から明治時代にかけて、大阪から下関を経て北海道に至る「西廻り」航路に従事した日本海側に船籍を持つ海運船。食文化や民謡、織物などの文化を運ぶなど、各地域の文化の形成に影響を与えた。会場となった岡山県内には、備前市と倉敷市に寄港地がある。
前夜祭の冒頭、北前船交流拡大機構の最高顧問でANAホールディングスの大橋洋治相談役が「私が愛する故郷・岡山で2回目の開催であり、感無量だ。人や物が融合することで新しい価値が生まれ、魅力ある文化が発展する。北前船の通り道は、日本の文化の通り道である。北前船寄港地フォーラムの熱気を岡山から届け、日本、世界を元気にしたい」とあいさつした。北前船交流拡大機構の濵田健一郎理事長は「北前船の活動はだんだん国際化している。海外交流も進め、地方の発展に寄与していく」と述べた。海外からの来賓として、駐日EU代表部のジャン・エリック・パケ大使は「欧州の人たちは、日本が好きだ。インバウンドが戻り始めており、交流を深めていきたい」と話した。
このほか、来賓として逢沢一郎衆議院議員、山下貴司衆議院議員、横山信一参議院議員、前観光庁長官の和田浩一観光庁参与、EU日本政府代表部の二宮悦郎参事官、ハンガリー大使館前大使のパラノビチ・ノルバート氏、フランス元文化大臣でアルザス・欧州日本学研研究所(CEEJA)のカトリーヌ・トロットマン所長、日本相撲協会の鳴戸部屋親方(元大関・琴欧州)があいさつした。
前夜祭には、地元から岡山県知事をはじめ、岡山市、倉敷市、備前市、玉野市、瀬戸内市、津山市、総社市、赤磐市、笠岡市の9市長が集まるほか、EU各国の大使や県内外の自治体、企業の代表、観光関係者が参加。会場では、「おかやまの酒による乾杯を推進する条例」による鏡開きや乾杯が行われるなど、参加者は提供された地元食材に舌鼓を打ちながら、北前船への思いを語り合った。
また、前夜祭の前には、フォーラム開催を記念したテープカット(コンブカット)を開催。次回のフォーラムの開催予定地である北海道釧路町の小松茂町長が北海道道東から北前船に積み込んだといわれる昆布を持参。小松町長は「昆布は一番長いもので20mぐらいある。長いものは縁起が良く喜ばれる」と述べ、14mの長さの昆布を披露すると会場は大きく湧いた。
今回のフォーラムは、「北前船と吉備の穴海~海と川が織りなした文化・産業~晴れの国・岡山から世界へ」がテーマ。岡山市の大森雅夫市長や、倉敷市の伊東香織市長といった地元首長によるトークセッションのほか、岡山、倉敷、玉野、備前、瀬戸内の5市で北前船に関する観光地などを巡る分科会などが行われた。