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山城の虜 北近江小谷城番足軽・千の日記

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 戦国時代、北近江(現在の滋賀県長浜市・米原市あたり)を治めていた京極氏は、現在の米原市上平寺に居城を築きます。家臣であった浅井氏の台頭によって、北近江守護は現在の長浜市湖北町の小谷城に移り(1524年頃)、京極家は一旦没落。浅井家は、小谷城を中心とした町づくりによって隆盛を極めますが、1573年、織田・徳川軍との「姉川の合戦」によって落城、浅井亮政、久政、長政と3代、50年続いた歴史に幕を下ろしました。その後、戦功を買われた羽柴秀吉、のちの豊臣秀吉によって新しい近江が開かれ、ひいては日本の歴史が始まっていきます。

 この連載では、近江の歴史と山城に魅せられ、現在の小谷城と上平寺城を守る足軽・千が、その魅力をざっくり紹介していきます。ちなみに、研究者でも先生でもありません、ただの「城オタ」ですのでお手柔らかにどうぞ。

「ところでお城はどこですか?」

 観光ムック本に「城」特集が組まれたり、テレビで「最強の城」特番があったり、御朱印ならぬ「御城印(ごじょういん)」が各所で飛ぶように売れ、「歴女」に続き「城ガール」なんて呼び方が出てきたりと、令和になってからも城人気は衰えを知りません。

 そうそう、「100名城」や「続100名城」の認定制度もあって、それらをめぐるスタンプラリーに参加する人も、ますます増えているようです。一概に「城」と呼ばれますが、全国の城の数はどのくらいあると思いますか? なんと2万とも、5万とも言われています。そのうち、大阪城や彦根城といった、誰もがイメージする「天守」のある城は100くらい。じゃあ、それ以外の実に99%もの「城」と呼ばれているものは一体何かというと、「山城」なのです。その中には、戦の際の急ごしらえ、簡単なつくりの「砦」の跡なども含まれています。

 山城とは、「天嶮(てんけん)(険しい地形)を利用して、独立した山頂部などを中心に曲(くる)輪(わ)群を設けた城」(『よくわかる日本の城 日本城郭検定公式参考書』より)で、中世から戦国期に多く築かれた城のことを言います。

 山城にはほとんど建物が残っていません。皆無といってもいいでしょう。余談ですが数年前、小谷城(おだにじょう、長浜市)を案内してほしいという客人を、要所要所でさんざん山城を説明しながら半日ほどハイキングし、皆さん満喫された様子で下山したその刹那、「ところでお城はどこですか?」と聞かれてズッコケそうになったことがありました。

小谷城頂上495mを望む

 そうなんです、山城は土の城、見どころは建物ではなく、土塁や堀、曲輪(くるわ)、石垣などの「遺構」。なので、天守閣(と言ってもほとんどが最近造られた模擬天守ですが)に登って眺望を楽しんだり、殿様気分を味わうような「観光」とはちょっと違います。 

 山城の見方を知り、山城を楽しんでいただくには、パンフレットや本を片手に歩いていただくのはもちろんのこと、「縄張り図」と呼ばれる城の設計図または想像図、地形図などを見ながら、ガイドさんと一緒に歩いて説明を聞いてください! 

 ガイド役には研究者の先生方に頼めれば最高です。各所でイベントやツアーなどを設定していることがよくあります。地元で活躍されているボランティアガイドさんにお願いすることもおすすめします。

安土城も、彦根城も、佐和山城も滋賀県です

 さて、筆者足軽のホームグランドでもある滋賀県には、中近世にかけて1300を超える城郭が築かれたと言われていることを知っている人はほとんどいないでしょう(悲しい)。この数は、単位面積当たりではなんと日本一だそうです。近江を制する者は戦国を制する、と言われている(?)所以でしょうか。

 滋賀県の代表的なお城には安土城、彦根城、八幡山城、佐和山城、そして、我らが小谷城などがあります。県では城を知り、近江を知り、滋賀をもっと知り、たくさんの人に観光で訪れてほしいとの願いを込めて、「近江の城カード」というものを作製、配布しています。カードには、お城の写真と概要が記載され、100名城スタンプや御城印があったらついつい集めてしまう「コンプリート魂」をくすぐる施策ですね。

 詳しくは、県のホームページもぜひご覧ください。予定枚数を終了し、すでに配布していない城もありますので要チェック。

 そして長浜市では今年、開町450年を記念したイベントを行っています。小谷城が落城した1573年から、450年という月日が流れました。ということは、現在の長浜市街地が北近江の中心となって、つまり「長浜市」が開町されて450年ということなのです。

 現在の長浜市は、小谷城の御城下をベースに作られています。小谷城目線で言えば、小谷城が築城されてから500年です。つまり「はじまりは小谷城」というわけです。長浜町では、スペシャルな連続講座を用意していますので、ぜひ遊びに来てください。

小谷城築城500年記念連続講座の詳細はこちら

「はじまりは小谷城」小谷城築城500年記念連続講座
【第1回】2023年6月3日(土)13:30-15:00
【第2回】2023年7月22日(土)13:30-15:00
【第3回】2023年8月12日(土)13:30-15:00
【第4回】2023年10月14日(土)13:30-16:00
<現地探訪 北近江 戦国の聖地を巡る>
【第1回】2023年10月28日(土)9:30-15:30
【第2回】2023年11月18日(土)9:30-15:30

場所

湖北文化ホール(長浜市湖北町速水2745)【第1回〜第4回講座】
史跡小谷城跡など北近江の戦国の舞台(市内全域)現地探訪
受講料 全6回
【受講料】
1講座/500円
全4講座/1,500円
現地探訪を含む全6回/2,000円
問い合わせ 小谷城戦国歴史資料館(0749-78-2320)

寄稿者 千(せん)戦国最強の宿 上平寺御城下 うむ館主

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