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シニアの“外国語人材”実は豊富に存在、観光業での活用可能性は?

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 訪日観光客が増加すると、外国語での対応の機会も増えるだろう。AIの進歩も著しく、翻訳・通訳のアプリやデバイスも大幅に進化しているが、それでも外国語を話せる人材の需要はあるだろう。今回は、そうした外国語人材についての話をしたい。

 ただ、最初に断っておくが、私たちシニアジョブでは、人材紹介・人材派遣サービスの「シニアジョブエージェント」において多言語人材に特化した対応をしていない。転職サイトの「シニアジョブ」でも2023年11月現在、通訳・翻訳者の求人はないため、実際に転職を支援したノウハウではなく、求職者=人材側だけの動向の情報だと理解してほしい。

 だが、実際に外国語のスキルを“強み”にしているシニア人材は、転職市場にかなり多く存在している。

外国語上級のシニア求職者はたくさんいる

 シニアジョブは、働くことを希望するシニアが全員自由に就職できる未来を目指すため、他の人材会社にもシニア就業支援の輪を広げようと、業務提携契約を積極的に結んでいる。すると、提携先からは、私たちが取り扱っていない職種のシニア求職者にも合う仕事がないかと連絡が来る。そうした中に含まれる人材には、外国語、特に英語が堪能な人材の割合が多い。

 特に大手企業出身者や管理職出身者であれば、初級を含めれば大半が英語スキルを持っており、ビジネスレベルの英会話に不自由しない上級者も少なくない。中にはTOEIC900点以上の人材やネイティブレベルの人材もいるし、海外赴任経験者を探すのも難しくない。

 スキルとして履歴書や職務経歴書に記載されるのは圧倒的に英語・英会話のスキルが多いが、他の言語のスキルを持つ人も多いし、赴任経験先にもさまざまな国がある。

 分布としては明らかに都市部に集中してはいるものの、観光・旅行の業界で外国語人材を活用しようと思った際、シニア人材の中から探すことは理に適っている。転職市場に存在する求職者人口の上では十分過ぎる人口がいるのだ。

先入観で決めずシニア外国語人材の活用検討を

 もちろん課題もある。根本的な話だが、こうした外国語に堪能な人材が観光・旅行業、特に直接販売や接客に係る仕事を必ずしも希望しているわけでないということだ。

 こうした人材の多くは、「外国語スキルを仕事に活かしたい」とは思っている。それが自分の経験・スキルにおける強みだとも思っている。ただ、企業職種は現場の販売・接客ではなく、管理職や企画職、事務職、そして事務系専門職や営業職などに集中している。そして、おしなべて希望年収が高い。

 職業選択の自由はあるので、自身がやりたい仕事を目指すことは間違いではない。お仕事を紹介する立場としても、希望職種以外を無理に勧めるものではない。しかし、50代・60代の転職市場の現実として、これら希望職種の求人が豊富にあるわけでないことも事実だ。

 観光・旅行の業界としても、単に外国語ができるだけでなく、専門的な知識・技能を身につけてもらう必要があるであろうし、その教育期間や適性を考えた場合に、大手の海外赴任経験者のシニアはマッチしない対象に見えるのかもしれない。

 しかし、先にも述べたように、外国語が堪能でそのスキルを活かした仕事に就きたいシニアの人口はかなり多く、その中には観光・旅行の業界適性が高いシニアも当然いるだろう。「シニアは使えない」「どうせ応募してこない」などと間違った先入観で判断せず、訪日観光客への対応人材を探している企業は、シニアの外国語人材の活用を検討してみても良いのではないだろうか。

 冒頭でも述べたように、2023年11月現在、シニア専門求人メディア「シニアジョブ」で通訳・翻訳者の求人掲載はない。求人を出していない会社に直談判するツワモノ求職者はごく一部なので、まずはシニアの外国語人材獲得のための求人を掲載するところから始めてみてはどうだろう。

寄稿者 中島康恵(なかじま・やすよし)㈱シニアジョブ代表取締役

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