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ボーダーフル・ジャパン 第1回 「都城・関之尾滝(せきのうのたき)」

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 私は九州の端っこで生まれ、育った。だからどうかわからないが、端っこに行くの好きである。

 九州と韓国、中国、沖縄と台湾などのボーダー(境界)に関心を持っていたが、どういうわけか、いつのまにやら、北海道に移り、ロシアとの関係を研究するのが仕事になった。おかげで国内外の国境地域(ボーダーランズ)を旅する機会に恵まれていく。だけど、そうは言っても、実はボーダーと言うのは国境に限るものではない。ひとつの国のなかにも様々なボーダーが重層的に存在する。そもそも時代によって国のかたちは変わってくるから、固有のボーダーなんてないのだ。

 このコーナーでは、国内外のボーダーに関わる地域を観光ガイド風に紹介していきたい。

 コラムでは私の幼少時に遡り、いまに戻ってこようと構想しており、当然、最初は日本の話ばかりとなる。振り返れば、日本もボーダーでいっぱい。たまにはボーダーと関係ない話もするけど、そこはご愛敬。

第1回 都城・関之尾滝(せきのうのたき)

 さて、私は小学校のとき、宮崎県都城市で暮らしていた。

 都城は宮崎県に属するが、西都城駅からJRで2駅行けば、もう鹿児島だ。薩摩藩領であったことから、都城を鹿児島だと思っている人も少なくない。その県境に大きな滝がある。大淀川の支流にある「日本の滝百選」にも選ばれた、幅40m、落差18mの関之尾滝がそれだ。

 「お雪さん」なる悲恋物語が滝をめぐって語り継がれている。700年近く前、都城島津家初代領主が、ここで月見の宴を開いた際、酌をしていた彼女が緊張して酒をこぼし、恥じて盃を抱いたまま滝壺に投身したらしい。恋人は彼女の名前を滝のそばで呼び続けるも、行方不明。

 いつのまにやら、名月の夜には滝壺に盃が浮かび上がるようになったとか。

 私は夜に滝に行ったことはないのだが。

 まだクーラーなど家になかった夏場に、親父によく涼みに滝につれていってもらった。同じようなことをしている人々で溢れていた。いまはもうその賑わいはないだろう。

(つづく)

寄稿者 岩下明裕(いわした・あきひろ)北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター教授

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