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ハードルが高い海外旅行、行先/時期/目的の選択が鍵

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世界に飛び出し、何でも見てやろう!海外旅行は、何処でも楽しい!という時代は、過ぎ去ってしまったのだろうか?

 海外旅行へのハードルがかつてないほど高くなった。航空運賃のサーチャージが定着し、紛争地域迂回航空路の是正も期待できない。世界中で物価と人件費の上昇が相次ぐうえに、極端な円安が加勢して異国で消費する経費は、何から何まで高く付き、一般の宿泊施設まで宿代の高騰が重くのしかかる。よって、旅行中の財布の紐は、否が応でも締めざるを得ない。それでも、海外に出て異文化体験をしてくる喜びは、何よりも代えがたい。

 お金のかかる海外旅行は、しばらく控える方が増えている。年1回の海外旅行を2年に1回に切り替える方も出てくる。そして、いざ海外に出るとなれば、コストに見合う満足感を保証できる地域、都市、場所の賢明な選択が誰にとっても必要になる。旅行先をどこにするか、現地で何を観るか、どんなアクティヴィティを試みるか、出かける前に十分な情報を集めて、旅の経済効果を徹底的に調べ上げてから、さあ、出発!となろう。

*いま、おすすめはパリ、エーゲ海のサントリーニ島*

 世界各地、コロナ禍が鎮まり始め、海外への渡航者が以前より上向きになり出したが、多くは韓国、台湾を始め、近距離のベトナム、タイ、シンガポールなど東南アジアに集中し、遠距離の欧米諸国への観光旅行は、低調のまま推移している。だが、直近の観光情報を周到に集めてみると、諦めていた旅行先への旅立ちが、高騰するコストの障害を乗り越えて、現実味を帯びた選択肢に上がって来ることを忘れてはならない。例えば、現時点、北半球が初夏を迎える2023年6月に海外に出ようと思えば、フランスの首都パリとエーゲ海の美しい島サントリーニ島(ギリシア)を挙げたい。

*市民も花を求めて公園に繰り出す花の都*

 パリに到着すると、季節の草花が多種多様に咲き揃い、その名の通り「花の都パリ」、強いて言えば「花園の都パリ」を見て帰ることが出来る。知る人ぞ知る「花の都パリ」には、都市の中心部にチュイルリー公園、リュクサンブール公園、パリ植物園など、広大な敷地に通年に渡り季節の草花がところ狭しと植えられた大公園が幾つもある。特に、初夏を迎えたパリの公園には、ツツジ、ポピー、デイジー、アイリス、薔薇などの花々が同時に咲き乱れ、麗しい花園に一変する。快い陽気に誘われて、大勢のパリ市民が待ち兼ねたように市中の公園に集うのは、年中行事でもある。規模と咲き誇る花々の多彩さに於いて、他に類を見ない「花の都パリ」の真の姿を目の当たりにし、パリ市民と感動を共にする体験は、旅行者にとって、極上の土産になろう。

 まず、フランスの首都パリ。パリは、一名「花の都パリ」と表現される。芸術、文化、ファッションといった社交方面での華やかさに満ちた都市美を象徴的に例えたのであろう。6月のパリ行は、まず航空運賃が高騰せず、少しだけ行き易くなる。復活祭(今年は4月上旬)、メーデー(5月1日)、バカンス(7月中旬から)など欧州人の旅行時期と重ならず、運賃が少し安くなるからだ。

 パリの6月は、食材、特に野菜(アスパラ、トマト、パプリカなど)、果物(メロン、ストロベリー、チェリーなど)、そして穀類などの初夏の収穫期と重なり、食卓も華やかになる。世界無形文化遺産に選定されたフランス料理を楽しむ絶好の機会でもある。パリで覇を競い合う名高いフレンチ・レストランで食す本格的フランス料理は、決して期待を裏切ることがない。もちろん、フランス文化のエスプリである絵画、舞踊、ファッション、建築、モニュメントを巡る旅は、何度試みても感動を新たにする。6月21日には、市内一円で音楽祭がある。6月18日、郊外のシャンティイ競馬場のディアンヌ・エルメス杯は、着飾った市民の社交場と化して華やぐ。パリが最も美しく輝く瞬間を迎えようとしている。

*紺青のエーゲ海と白亜の館や青い丸屋根の教会*

 第二の候補は、エーゲ海の孤島サントリーニ島。2023年6月、ギリシアの首都アテネ行き航空便が紛争地域を迂回することなく直行し、運賃の高騰を招かずに就航している。アテネからサントリーニ島までは、フェリーに乗って船旅をするもよし、急ぐなら航空機で直行も出来る。いま地中海で屈指のリゾート、サントリーニ島は、はるか太古の時代、クレタ島クノッソスの海洋文明にも大きな影響を与えたほど栄えていた。ギリシアの哲学者プラトンが唱えた「天変地異によって大西洋に沈んだ理想国家アトランティス」は、実は、現在のサントリーニ島に当たるとする説がある。

 事実、サントリーニ島は、中世にも近世にも度々大災害に襲われ存亡の危機に面したが、その度に新しい街を築いて大いなる蘇生を果たした。紺青のエーゲ海を見下す海抜3百から4百米の断崖の上に建つ白亜の館や青い丸屋根の教会は、毎年5月に島民総出でペンキを塗り直されて、世界中のゲストの来島を待つ。6月は、シーズン到来の直前、ピカピカのサントリーニ島で混雑と宿泊費の高騰を避け、紺青の海に映えるカサブランカの街でくつろぐ。近隣の景勝地、ミコノス島とディロス島への日帰りツアーを楽しむ。幾多の震災から復興し、いま第一級海洋リゾートとして蘇った夢の島のドリーム体験、なしえるとすれば、いまがチャンスの1つになろう。

 海外旅行の魅力は、都市観光に限らない。スポーツの愛好者なら、ウィンブルドン・テニス大会(英国)、ゴルフであればオーガスタ(米国)のマスターズ・トーナメントなどは、一生に一度は観戦したい。音楽の愛好者なら、ウィーンフィルのニューイヤー・コンサートや、チェコやザルツブルグの音楽祭には、一度は参加したいと思いを馳せる。さらに、世界で最も美しい村を訪ねる旅、著名な世界遺産箇所を訪ねる旅、あるいは死ぬ前に一度は見ておきたい世界の絶景など、海外旅行の魅力は尽きない。旅行のハードルが高くなればなるほど、海外旅行の行先の優先順位、旅行時期、旅の安全度、そして旅行の仕方そのものにも心配り、コストに見合う実り大きな旅行を実現したいと誰でも思うようになった。旅の主体性が問われている。

寄稿者 山田恒一郎(やまだ・こういちろう) 旅行作家

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