山の天気は不安定です。
今回のアーティストの一人、南こうせつさんは、業界でも有名な雨男です。そして、朝から雨が降っています。
あーあ、雨・・・
昨年、この蔵王では、ジュピアの中に特設会場を作り開催しました。しかし、今回はゲレンデに巨大なステージを作ります。そして、お客様はゲレンデの芝生の上にシートを敷いてお聞きいただくスタイルです。誰もが「中止」ということを気にしていました。
「音楽(おと)のある東北」シリーズは、ここ蔵王の旅館オーナーが「上の台ゲレンデでフォークジャンボリーのようなコンサートをやりたい」
この言葉から始まりました。野外コンサートは、フォーク・ニューミュージック全盛時代の憧れのスタイルでした。
まさしく、今回は、南こうせつさんと伊勢正三さん(ふたりで「ひめ風」)、そして、武田鉄矢さんの海援隊のジョイントです。(「全日本フォークジャンボリー」とは、1969年から3回、現・中津川市「椛の湖畔」で行なわれた伝説のコンサートです)
夏の終わり、ビール片手のコンサートのはずが・・・
リゾートイベントに興じてもらうために「屋台」もたくさん出店していました。しかし、集うお客様は大雨と寒さでビールどころではありません。誰もが雨合羽に身をくるまって、開演を待つことになりました。
「コンサートはもういい。早く帰りたい」と思っていたお客様はたくさん居たことでしょう。
ステージに明かりが灯り、開口一番、こうせつさんは「やはり雨ですね。けれど、今宵このステージ盛り上げていきましょう」と、名曲の数々が蔵王の山々に響き渡っていきました。
そして、武田鉄矢さんが登場すると、なぜか、音楽コンサートというより、漫才のような会話が続き、観客の笑い声を誘っていました。
演奏が進み、しばらくすると、ピタッと、雨が止んだのです。
あぁ、虹!
こうせつさんがつぶやき、すべての観客が振り向くと山頂には大きな虹が・・・嘘のようなホントの話です。
アーティストと観客が一体となった瞬間、「蔵王フォークジャンボリー」といっても過言ではないコンサートが実現しました。アンコールを待つ頃は山の夕暮れ、秋の気配を感じる一日の終わりとなりました。
前日から蔵王入りしていたアーティストの皆さん。終了後は、疾風のごとく山を降りていきました。最終の山形新幹線に乗り、翌日の予定のため、東京に戻っていったのでした。
一方、私たちはいろりを囲んで反省会。少しばかり深酒をして、気がつくと翌朝。
ゆっくりと硫黄の匂いの強い蔵王の湯に浸かってから、山を下りました。
今日は良い天気です!
(つづく)
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寄稿者 荒木伸泰(あらき・のぶやす) 株式会社キャピタルヴィレッジ 代表取締役