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ホテル業界の転機『危機は転機の機会なり』

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 ホテル業界は、現在の日本国が目指す大きな指針である「観光立国」にとって、重要な産業で外貨獲得にも大きな役割を果たす、輝かしい未来産業です。

 では、そのホテル業界の現状は?

 ホテル業界は事業継続が危ぶまれるレベルの人手不足となっています。

 学生さんの就職が厳しい時は、比較的人数を多く採用するホテルの募集は増えます。面接をしていても『でもしかホテルマン』を感じる事があります。故にその後の離職率も高くなります。

 同じく人手不足の学校の先生も『でもしか先生』と言われる時代がありました。

 学校との大きな違いは、学校は統合により閉鎖される学校が増えていますが、我々ホテル業界は、東京オリンピックの開催やインバウンドの増加により、近年は全国各地でホテルが増え続けており、現実の数字が把握できない勢いです。

 私がこの業界に入った1982年は訪日外国人が18万人でしたが、2018年には3100万人を超え、オリンピックが開催予定だった2020年には4000万人を超える予測となっていました。

 新型コロナウイルス蔓延前の2018年、我々ホテル業界に従事する人員は55万人でした。その時でも深刻な人手不足でしたが、コロナ禍の3年間で10万人減少し、45万人となりました。

 この人数は、業界としては日本の就業人口の1%。これまではその1%のホテル業界間を移籍していた時代から、他業種に沢山の人が移行し、戻ってこなくなっています。ホテル専門学校や大学・短大の観光学科も、定員割れが続いています。

 業界への不安による親の反対が大きな原因です。解決しない限り観光立国もあり得ません。国としても取り組む問題となっています。

 私はコロナ禍の3年間、ある人材ソリューション会社の方といろんな対策を練りました。サービス業の人材に特化した会社で、大変勉強になりました。その危機感は我々ホテルに従事する者と先読みのレベルが違い、しっかりとした対策と準備をされていました。今もその会社にいろいろな面で助けて頂いています。

 我々のホテルグループは現在19ホテルあり、今年度も2ホテル、その後の計画も多々あります。転職でこのホテルグループに従事して約40年が経過し、後輩達が各ホテルの総支配人として活躍しています。何とかその恩返しで人材及び人財不足の解決の一助になりたいと考えています。

 そのために必要なのは、人材採用・新人研修・中堅研修・ベテランを有効に活用する事を、同時並行に進める必要があります。個々に対する策も考えました。

 CMで「地図に残る仕事」というキャッチにした会社がありましたが、ホテルもそうだと思います。家族にとっても自慢できる施設であり、スポーツや政治で世界が動く時には必ず利用される施設です。ホテリエはもっともっと誇りを持って働ける職業です。

 ホテルエは、業種として3K・ブラック・低賃金等々が問題とされてきました。3Kやブラックは時代と共に大きく改善され、ようやく初任給や給与アップするホテルもでてきました。当社もそうです。

 今後は、装置産業・労働集約型の薄利多売のホテル業界全体の体質改善が必要です。

 観光立国宣言の今こそが、ホテル業界のこの危機を乗り越える転機の機会です。しっかり利益をだし、社員に還元する企業となる事です。ここ数年は、人員に合わせた宿泊稼働・レストランの定休日の設定等々、無理やりに人を増やさず、利益を考えるようになってきました。今まで、国内の安売り合戦で世界基準と大きくかけ離れていた宿泊料金もここ数年は、値上げの傾向が見られるようになりました。

 国が「観光立国」を目指している、今こそがその改善のチャンスです。今までの常識は忘れて、しっかりとした利益体質の改善を全てのホテルで足並みを揃える必要があります。日本のホテルの施設やおもてなしは、世界基準でも低いものではなく、それに対する対価をしっかりと得る必要があります。この改善を進めていかない限り、業界として破綻する可能性があると言っても過言ではありません。

 では、どうその仕事に臨むか?

 ホテリエの仕事は特殊です。正直、サービス業が好きでないと続くものではありません。

 では、どう仕事に臨んで好きになるか?

 私が15年以上言い続けている言葉です。

 ホテリエに必要なのはCANDOと組織力です。

 我々の仕事は、MUSTやらなければならないと思わずに、CANする事ができると思って臨む仕事です。ベテランも新人も常におかれた状態でお客様のためにできることCANを探し、DOそれを行う事です。その心かゲストに伝わった時、CANDOは日本語読みで感動になります。

 そしてホテルのリピーターになって頂けます。全社員の組織力でそれをお迎えします。そういうゲストが自然に増えていけば、ホテル全体の雰囲気も良くなり、収入となり利益となります。その価値観と誇りを持ったホテリエを育てる事が重要な課題だと思います。

寄稿者 笹井高志(ささい・たかし)㈱ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツ常務執行役員

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