観光地は万人が見ることができるもの、という概念が崩れてきています。「禁制」という言葉が、その象徴かもしれません。
目線を変えると見えるモノ・コト
宮崎から伊丹空港に向かう日本航空2432便は四国沖を旋回。その後、関西空港辺りから大阪平野に入りました。市内上空を越えて伊丹空港までの時間はなかなかスリリングです。
前方に「あべのハルカス」が見え、真横には子供の頃「仁徳天皇陵」と教えられた古墳が見えてきました。「百舌鳥・古市古墳群」は2019年に世界遺産に登録。そして、その中でも一番大きなものが、大仙古墳(伝・仁徳天皇陵)です。
地上から天皇陵を見ると、眼前にはただの緑の山が立ちふさがります。また、天皇陵と位置付けられることによって内部に入ることはできません。世界遺産に登録されて「上から見ることができないのか」という議論がありました。皆さんも記憶にあることでしょう。
そのため、堺市役所の最上階には展望フロアが設置されました。しかし、古墳まではかなりの距離です。「直近に展望タワーを!」という声が多いとも聞きます。
昨今では、ドローンによる3Dツアーなども増えています。しかし、大都市圏においては、ドローン飛行を禁じている都道府県もあります。
「つなぎ」「守り」「維持」すること
世界遺産は、将来において「守ること」「維持すること」などが登録の必須条件とされています。長崎県の軍艦島しかり、福岡県の宗像大社しかり、見ることのできない制限区域がある世界遺産が登録されました。
「守り維持」するために、入場制限やふるさと納税による費用の捻出などが検討課題です。そのために、できることはしっかりと進めなければならないと感じます。
しかし、「旅の恥は掻き捨て」と言うように、日本人の気質は、時折「守り維持」することにはほど遠いことがあります。今、私たちは、大切に将来につないでいくことに軸を移し、しっかりと観光コンテンツを創造する時代に直面しているのです。
歴史は、上書きされる!?
大阪には、戦前戦後の時代を映した建造物も少なくありません。しかし、道路の拡張や建て替えによって、その大切な遺産が失われて行っています。徳川家康が、豊臣秀吉が作った大坂城をつぶし、その上に新しいお城を作ったように、伝統的な建造物やその歴史は、上書きすることはできません。
そのため、私たちは後世につなぐことを至上命題として、観光コンテンツを創造しなくてはなりません。
地上では見えないことが、俯瞰すると見える。たまには、目線を変えてみることも大切です。
着陸態勢に入った飛行機は、いつの間には、大阪駅上空を越え、伊丹空港にたどり着いていました。不思議なもので、仁徳天皇陵だけでなく、聖徳太子や源頼朝、足利尊氏も違う人だったと学校で教えている。摩訶不思議な感覚です。
寄稿者 観光情報総合研究所 夢雨/代表
(これまでの寄稿は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=181