最果てという言葉が似合う天草諸島。最近は、島内に小規模高級旅館が次々と建てられています。まるで、極楽浄土へ誘われているのような感覚です。まず、熊本市内から向かうと宇土半島から天草五橋、延々と長い陸路となります。やっとのことで三角港まで到着。しかし、これからが天草諸島が始まります。途中、ショートカットして船に乗ると、少しだけ早く最果てに到着できます。
その歴史が、最果て感を醸成する
熊本県と鹿児島県にまたがる天草は「甘草」とも書かれ、それを唐風に「苓州(れいしゅう)」とも言われました。
上島と下島が主島。その大きさは、日本列島主要4島を除くと8番目の島です。
かつては、キリシタンの島と言われました。しかし、今は島内にキリスト教徒は人口の1%未満しかいません。
そして、熊本市から一番遠い下島の山上に天草空港があります。地域コミューター航空会社である天草航空が、福岡空港を経由して伊丹空港まで運航。それ故、大阪までの飛行時間は、熊本市内に向かうより近いのです。魔訶不思議な島々だと感じます。
雲上の温泉保養地、雲仙
福岡空港に向かう105便は、飛び立って間もなく、左手、山の中に雲仙温泉の町並みが現れてきます。この天草と雲仙は、日本初の国立公園。そして、雲仙温泉はその中に位置する温泉保養地です。また、西洋リゾートを彷彿させる九州を代表する観光地でもあります。
しかし、最盛期に比べると旅館ホテルの軒数も減少。その状況を打破するため、旅館の共同経営や若手オーナーたちの強い結束力が醸成されています。まさしく、その歴史を守り、成長させている温泉地と言えます。先人たちは素晴らしい。よくぞ、この高原にリゾートを創り出したと感心してしまいます。
ほどなくすると、1991年に大きな被害を出した普賢岳も視野に入ってきます。そして、有明海に出ると諫早湾のギロチンとも言われた干拓堤防も見ることができました。ある時、穏やかな海が刃(やいば)を向けた瞬間、そのニュースを思い出します。
手作り感満載の機内サービス
さて、話しを天草航空に戻しましょう。マリンブルーの機体には可愛らしいイルカのペインティング。飛行時間が短いにもかかわらず、客室乗務員のソフトはピカ一です。機内には手作りPOPや飛行ルートを記したパンフレットが置かれています。なかなか秀逸。外の景色と合致して「今どこを飛んでいるのか」も一目瞭然です。
飛行機マニアがあえて乗りたいと思う航空会社であることが良く解ります。まさしく、気持ちの伝わるフライト、サービス業の原点を垣間見たような気がしました。
パンフレットの似顔絵と乗務員の顔を比べていると、あっという間に福岡空港に到着。天草での折り返し時間が遅れていたため、羽田への乗り継ぎは、ゲートの端から端までの移動となりました。しかし、ここでも、地上係員が待ち構え誘導。スムーズに乗り継ぐことができたのです。汗をかき、かなり走りました。しかし、これも旅の良い経験と言えましょう。
離島観光、日本全国で明るい兆し
2024年、今年久しぶりに新潟県にトキエアという会社が産声を上げました。離島観光は誰もが憧れる旅先です。そして、ボーダーツーリズムというカテゴリーも旅行商品化されつつあります。(なお、ボーダーツーリズム推進協議会の会長は、寄稿者の伊豆芳人さんが就任されています)
https://www.border-tourism.com/
天草しかり、佐渡島しかり、もっと華やかな観光地になることを望み、天草航空ともども、息の長い航空会社にとして、発展することを祈りたいと思います。
寄稿者 観光情報総合研究所 夢雨/代表
(これまでの寄稿は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=181
(伊豆芳人さんの寄稿は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=17