あべのハルカスは先日まで10年間、日本一の高さ300メートルを誇るビルでした。2023年に東京の麻布台ヒルズにその座を譲りました。百貨店や美術館、ホテル、展望台などを保有するアミューズメントビルです。
(今回は、飛行機からの景色ではありません)
最上階の展望台はオープンエア、企業のパーティーなどでも活用されています。また、大阪を代表する淀川の花火なども観ることができます。晴れた日には、六甲の山並みから京都の町までを見ることもできます。
大阪市内は、これまで超高層ビルがありませんでした。これは、御堂筋が高さ50メートルの制限があったことに起因します。その中で、あべのハルカスは、2014年に開業しました。
リピーターづくりが最大課題
展望台は「一度登ったらもういい」とお客様のほとんどが言います。そのため、なかなかリピーターづくりが難しい観光コンテンツです。いずこの展望台も手を替え品を替えイベントを創造し、お客様を呼び込む努力をしています。
あべのハルカスも例外ではありません。例えば、ヘリポートのバックヤードツアーや命綱を付けて壁面めぐりなどがその商品化されたものです。また、イルミネーションイベントも定期的に変化させています。
このように競合する展望台が実施していない企画創造が必須、さもないと集客力は急降下します。
館内ホテルは展望台と食事をセットにした宿泊プランや日帰りプランを設定。また、美術館は展望台との共通割引入場券の販売などを企画しています。まさしく、近畿日本鉄道が社運をかけ、傘下会社が持つ観光コンテンツを最大限に活かす取り組みを進めています。
オープンエアの展望台は、キラーコンテンツ
さて、最上階、視界360度の展望台は、朝な夕なにとても素敵な大阪の町を見せてくれます。特に人気のプランは、地上300メートルにあるヘリポートに登ることができるプランです。
夕暮れ、西陽が町を真っ赤に染めます。また、朝日が浪速の町にハルカスの巨大な影を落とします。風を感じることができる特別な体験、まさに、至極の時間・空間と言えます。
特別な体験は展望台だけではありません。館内レストランでは、「SNS映え」するグラス越しの景色。その写真を大勢のお客様が撮影し発信。そして、夜ともなると色とりどりの明かりが華を添えてくれます。まさしく、大阪の町を独り占めできる瞬間、そのような場所と言っても過言ではないでしょう。
混沌とした町の将来を占う・・・
あべのハルカスが建つ阿倍野の地は、新旧の光と影が隣り合わせの町です。
1918年、南東に飛田遊郭が開業すると数多くの人が訪れる町となりました。残念ながら、第二次世界大戦で通天閣が解体。1945年3月の大阪大空襲によって焼け野原となりました。終戦後にジャンジャン横丁が復興。1956年に二代目通天閣が誕生しました。それは、新たなスタートになると思われました。
しかし、界隈にはあいりん地区の労働者が闊歩。1961年の釜ヶ崎暴動が起きると、阿倍野は「怖い町」とレッテルを張られました。その結果、労働者の盛り場には、家族連れはやってこないという負の連鎖が止まらなくなりました。
21世紀になり、周辺に新たな観光コンテンツも増えました。また、NHK「朝ドラ」の舞台にも選定されました。そして、飛田新地の旧赤線や新世界を巡るダークツーリズムも人気が出てきています。
路面電車が走り、昭和を彷彿させる姿と平成の高層ビルが融合する町。あべのハルカスに泊まらずとも、ゆっくりと新旧のディープな阿倍野を体験いただきたいと思います。
寄稿者 観光情報総合研究所 夢雨/代表
(これまでの寄稿は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=181