温暖化の影響で茶葉の生育が早くなっています。そのため、昨年は過去最速の4月15日に茶市場が開き、お茶シーズンがスタートしました。
今年はどうなるか?今からワクワク!ソワソワ!!です。
とは言え、この時期は日によって寒暖差が大きいため、この地域は雪こそ降ることはありませんが、霜が降りるような冷える日もあります。それ故、生産農家さんは日々の天候に冷や冷やしながら過ごされています。
茶畑の扇風機
茶畑でよく目にする扇風機のようなものが頭についた高さ5mほどの電柱、ご存じでしょうか?
初めて茶畑をご覧になるお客様からは必ず質問されます。この扇風機は「防霜ファン」と言い、茶畑には無くてないならいない必需品です。
ある一定の気温まで下がると自動でファンが回り、その高さにある温かい空気を拡散させます。そして、茶畑に暖かい空気を送ることで霜が降りないように対策するのです。
3月後半にもなると、ほぼ毎晩扇風機が回る音を耳にしながら寝て、ウグイスの声で朝目覚める、そのような季節なのです。
大切なナラシ作業
お茶農家さんは、「一番茶」の生産準備で今の時期”ナラシ”という作業が行います。昨年最後のお茶シーズン”秋冬番茶”の摘採が終わった10月半ば以降から、この時期までの間、延びた芽を綺麗に刈り揃えます。そのことで、一番茶の摘採時にほぼ均等に新芽が生長していきます。
綺麗に刈り揃った茶畑も美しいのです。しかし、これから約ひと月半かけて生長する一番茶時期の茶畑は、柔らかいふわふわな新芽が春のそよ風にゆらゆらと踊ります。まさに絶景です!
ただ、強い風が吹いたりすると葉っぱ同士がこすりあって、葉っぱが傷んでしまうほど繊細です。だからこそ、旨味が強い美味しい新茶として価値があるんですよね!
春のもう一つの楽しみ
そのような新茶シーズンも、ここで暮らし始めて、7回目を迎えます。そして、この時期もう一つの楽しみが春の山菜です。
既に蕗の薹はたくさん出ていて、ほろ苦い味が癖になります。お客様には天ぷらやふき味噌などにして旬菜として召し上がっていただいています。
そして、3月後半になると次は筍シーズンに突入です。既に猪たちは地中で成長している小さな筍の子供たちをエサにしてます。しかし、私たち人間の口にすることができる3月後半頃には食べ飽きてしまったためか、すっかり姿を見せなくなります。まさに共存共栄ですね!
3月後半から4月にかけて気温は日に日に上がります。そのため、筍も4月半ば以降にもなると毎日何十本と、採っても採っても生長してきます。そして、裏山の竹林はその時期だけ良いエクササイズができるジムに変身します(苦笑)。
また、ほぼ同じ時期ぐらいから蕨やコゴミ、フキ、ウドなどたくさんの山菜が冬場に草を刈った場所「茶草場」に顔を出してきます。これらは先人たちの生活の知恵の中で生まれた茶草場農法の恩恵です。
山菜は、買うものでなく採るもの
私もそうでしたが、こうした山菜は、まち暮らしをする人たちにとってスーパーで購入するものです。しかも、決して安くはなく、また、あまり多く店頭に並ぶことも無い、とても貴重な食材なのです。
でも、ここで暮らす人たちにとっては、まさに、この時期の自然の恵みとして毎食の食卓に並びます。また、4月後半にもなると、もう飽き飽きしてくる贅沢な食生活を送ることができます。
宿を営み、体験の紹介もしているおかげで、お客様にしっかりと消化していただくことができます。また、毎日採らなくてはいけない筍も、体験として楽しんで採ってもらうこともできます。そして、お土産としてお持ち帰りもしていただけて、とても助かっています(苦笑)。
もちろん、この時期、桜も里山を彩り、春の到来を全身で感じられます。そのような春の里山がここでの暮らしで一番気に入っています。
(これまでの寄稿は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=23
(体験型古民家宿「旅ノ舎」のHPは、こちらから) https://www.tabinoya-oldjapanese.com/
寄稿者 山田幸一(やまだ・こういち) 体験型古民家宿及び地域限定旅行業「旅ノ舎」代表