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都市開発と自然の調和によるプロムナード -天王洲アイル-

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 東京モノレールとりんかい線の駅が交差し、運河で囲まれた天王洲アイル(東京都品川区)。天王洲は、江戸時代の末期に築かれた埋立地、第四台場をベースに開発された東京ドーム約5個分の小さな島です。最近は、「水辺とアートの街」として多くの人が訪れています。

 天王洲は戦後、運河に面した立地を生かした倉庫街として栄え、周辺には旧東海道である品川宿があります。江戸時代からの船溜まりである品川浦には、多くの屋形船も停泊しています。アイルという名前の通り、運河に囲まれた島であり、海岸通りと山手通りが交差する物流の要所でもあります。

 天王洲アイルは1990年代には再開発により、高層ビルが立ち並ぶウォーターフロントのオフィス街に生まれ変わりました。現在は、「水辺とアートの街」として都市型文化観光拠点を目指した新たなまちづくりに挑戦しています。

運河に囲まれ港区に接する天王洲アイル(左)、江戸の情緒を残す品川浦の船溜まり
運河に囲まれ港区に接する天王洲アイル(左)、江戸の情緒を残す品川浦の船溜まり

都市交通と歩行空間の有機的な結合(品川~天王洲)

 品川駅から天王洲アイルまでは、直線距離で約800m。品川駅のコンコースから品川インターシティのペデストリアンデッキを通じ、八ツ山公園を経て、高浜運河沿いを通り、ふれあい橋を渡ると天王洲に入ります。品川駅から八ツ山公園までは、駅から連続性を持った動線を提供しています。

 この都市計画は、歩行者が快適にアクセスできる環境を構築し、地域全体が有機的に結びつくことを実現しています。バスやタクシーなどの移動交通網だけでなく歩行空間を整備することで、無機的な交通だけではない歩くことが楽しめる環境が生まれています。ペデストリアンデッキを降りてから天王洲までの道のりは、都市から自然の中を抜けるプロムナードとなっています。

多くの人が行き来する品川駅コンコース(左)、屋根付きペデストリアンデッキ
多くの人が行き来する品川駅コンコース(左)、屋根付きペデストリアンデッキ
ペデストリアンデッキから八ツ山公園へ(左)、水辺の遊歩道(港南公園)
ペデストリアンデッキから八ツ山公園へ(左)、水辺の遊歩道(港南公園)

 天王洲の入り口であるふれあい橋は、歩行者専用の人道橋として1995年に完成しました。この橋はテレビドラマの撮影にも使用され、アートと歴史が交わるランドマークとして訪れる者を引き込んでいます。ふれあい橋を渡ると、異次元な景観に新たな発見が待っていると感じさせてくれます。さらに、天王洲の周囲に設置されたボードウォークは、歩行空間だけでなく、イベントスペースや憩いの場としても利用され、自然と都市が調和した空間が生み出されています。

 天王洲アイルの魅力は、都市計画とデザインで、都市、歴史、文化、自然を融合した結果と言えます。品川区が目指す都市と文化と自然が融合するまちづくりビジョンを実現しています。

天王洲ふれあい橋アート展示(左)、ボードウォークでのイベントの様子
天王洲ふれあい橋アート展示(左)、ボードウォークでのイベントの様子

今後の取り組み―品川地区のまちづくり―

 品川駅周辺では、将来のリニア中央新幹線の乗り入れを見据え、大規模な再開発が進行中です。品川駅南地区では、品川浦を中心に3つの地区が計画されています。この再開発計画は、交通ネットワークの整備に重点を置き、地域インフラを強化し、魅力的な都市空間を形成するため、多岐にわたる取り組みが展開されています。

 特に注目すべき事業としては、品川駅南部の東西エリアで、かつては交通を分断していた京浜急行電鉄の"品川第一踏切"(開かずの踏切)の連続立体交差事業があります。2023年初頭からの準備工事を経て、2029年度末の完成が予定されています。完成することで交通の円滑な流れが生まれ、同エリアの魅力が一層引き立ちます。

 天王洲アイルエリアにおいても、近隣エリアと連携を強化し、地域同士で繋がりのある、単なる“点”ではなく“面”として、魅力的で持続可能なまちづくりを推進していきます。

品川駅南地域 まちづくりビジョン(左)、京浜急行電鉄「品川第一踏切」
品川駅南地域 まちづくりビジョン(左)、京浜急行電鉄「品川第一踏切」

寄稿者 大木清隆(おおき・きよたか)寺田倉庫㈱不動産事業グループ開発室長 兼 天王洲・キャナルサイド活性化協会事務局

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