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地域課題を可視化する「じゃらんエリアダッシュボード」 統計データを活用した地域活性策とは⁉|リクルート 高橋佑司部長

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 旅行情報サービス「じゃらんnet」を運営するリクルート。地方自治体や DMO を対象に、旅行情報サービス「じゃらん net」の「宿泊」「遊び・体験」「口コミ」の統計データと、お店の決済サービス「Air ペイ」「Air ペイ QR」の決済統計データを可視化し、閲覧できるサービス「じゃらんエリアダッシュボード」の提供を2024 年4月から始めた。旅行Division 地域創造部の高橋佑司部長に、新サービス導入の狙いや活用手法などを尋ねた。

――昨今の地域における観光課題をどう捉えているか。

 多くの地域で、自地域の観光課題が何かを明確に理解していない場合がある。日本全国いろいろな地域を訪れているが、取り組みに関しては勘や今までの経験に頼るほか、別の地域でうまくいっているから自身の地域でも取り入れているという話をよく聞く。例えば、世の中の流れがオーバーツーリズム対策をしているから、自身の地域でも行っているということが実際にある。

 課題を解決するには、現状をデータに基づいて定量で把握することが非常に大事となるが、客観視できる指標を持ち合わせていないことが現状の地域における観光課題ともいえる。「じゃらんエリアダッシュボード」の提供を始めたのは、このような背景があったからだ。自分の地域の実態を把握し、課題が何なのかを常に定量で分かる状況にしていただきたい。結果的に、どういった課題が自身の地域には多く、時期別にも課題があるということを知ることにつながる。

――リクルート、じゃらんが取り組んでいる観光課題の解決手法について。

 まず、地域をどういう状況にしていきたいかということを大前提で考えながら取り組みを進めている。一般論ではあるが、地方に行くと必ず労働人口が足りないという話を聞く。少子高齢化で人口減少が進む中、誰がどう地域を支えていくか。今後は、観光産業が非常に重要な役割を担うはずだ。多くの地域を見て回っても、地域消費、地域経済をけん引するものとして観光には大きな可能性を感じている。一方で、慢性的な人手不足の話は今後さらに大きくなっていくだろう。デジタル技術を活用した業務効率化といった生産性向上もまだ道半ばであり、取り組むべき地域課題である。

 私たちは、地域消費額の増加を目指し事業を推進している。地域の消費を上げなければ経済も上がっていかないし、産業の成長も見込めない。会社としては、地域消費を最大値まで上げていきたい。

 今までリクルートは、マッチングサービスを主に手掛けてきた。例えば、結婚をしたい2人が結婚式場を探す際にチェックする結婚情報サービス「ゼクシィ」、引っ越しを検討したり住宅を探すときに見る不動産情報サイト「SUUMO」、どこかへ旅行がしたくて宿泊施設や体験を選ぶ旅行情報サービス「じゃらんnet」といったサービスがある。

 マッチングプラットフォームの役割をずっと担ってきたが、これからは人材確保の支援や、業務効率化を含めた業務・経営支援など、現在の地域課題に合った支援ができるサービスを提供していく。フィンテックサービスも含めて提供価値の幅を広げながら、より早くよりシンプルな企業経営や地域経営のサポートをしていきたい。

――「じゃらんエリアダッシュボード」の提供を始めたが、具体的には。

 4月1日にサービスをスタートした。サービスを一言で言うと、地方自治体やDMOが観光課題を可視化し、その観光課題に対して施策の立案や効果検証を行うための支援サービスだ。データに基づいた現状把握と課題の特定が求められているが、なかなかこのようなデータがまとまっていない。ある地域に行くと、宿泊データは人泊数や訪問客数を、消費額はアンケートデータから抽出している。日本全国を見渡しても、多くの地域で同様な手法が散見される。

 リクルートには、宿泊予約、遊び体験予約、キャッシュレス決済など、多くのお客様にサービスを利用いただいていることで、多くのデータが蓄積されている。例えば、遊び体験では、どのような体験が人気で、地域ではどのエリア・年代のお客様がどのような価格で体験予約しるのか、じゃらんnetでは、どのエリア・年代のお客様がどのような価格で宿泊予約しているかといったデータがある。決済データについても、お店の決済サービス『Airペイ』を通じて観光客の消費動向を把握することが可能だ。

 このようなデータを統計化し、地方自治体や地域に提供することで地域消費を上げることに寄与できるのではないかと考え、「じゃらんエリアダッシュボード」のサービスをスタートした。一方で、膨大なデータを一度に提供すると扱い方が分からなくなるのではないかと考え、シンプルで分かりやすさを徹底して設計した。視覚的に分かりやすいものであることを意識し、体験や宿泊の状況を天気予報で表示している。期間についても、昨年度やコロナ前と比べてどうかということが簡単な設定ですぐに分かるようになっている。

――地域の事例について伺いたい。

 最近DMO化をした栃木県那須町を例に挙げると、那須町は別荘地的なイメージがあるほか、観光施設が非常に多いが、集客面で季節的な変動があることにこれまで気付けていなかった。この4月にじゃらんエリアダッシュボードの利用が始まったが、データを見ると、春と冬で来訪するお客様とターゲットが異なっていた。例えば、冬の時期は雪が積もることがあるため、雪が降らない東京からの集客を考えてきた。しかし、データを見ると、実際には隣県の福島からの来訪者が多いことが分かった。これまで隣県へのPRなどは十分な対策ができていなかったが、今後は適切な対応を検討していく予定だ。

 このように、これまで課題と思っていたものとデータからわかるものが異なっているケースは多分にして起こりえると実感している。

――じゃらんエリアダッシュボードを使いながらどのような取り組みをしてもらいたいか。

 観光地はどういう姿がベストかと言うと、春夏秋冬において多少変動しながらも常に一定の集客ができている状態であることだ。例えば、雪のエリアだと冬、海辺だと夏に集客のピークを迎える。先ほどに労働人口の減少の話をしたが、繁閑差が激しければ激しいほど人材確保の難易度も高い。安定した人材確保をするためにも、集客は季節を問わず平準化をしなければならない。

 平準化に向けては、1年を通じて集客が弱い時期と強い時期を見比べながら、どのような人がいつ来て、何をしているかを知らなければ始まらない。サービスでは、旅ナカで言えば口コミの状況も含めて、総合的に理解できるようになっている。単に一つの課題を数字として確認するものではなく、課題に対してどのような打ち手がとれるかといった仮説までを立てられるようになっている。仮説検証をしながら問題解決に取り組んでもらいたい。

 宿泊単価については、昨年対比で110%、120%と上がってきているが、ここも実際に自分の地域の単価はどうなのかということもすぐに確認できる。期間を限定した確認ももちろん可能で、ゴールデンウイーク(GW)の単価がどうだったかという時にも、日付指定をすれば、過去の年も含めて可視化できる。正しい値付けによる地域消費の最大化を図ってほしい。

――サービスの今後の展開について。

 まずは直近で言うと、じゃらんエリアダッシュボードを使った成功事例を増やしていきたい。中長期的には、これまでに地域が何年もかかっていた施策のPDCAの周期を短期で回せる形にしたい。統計化された実態データにより課題を把握することで、施策の立案、施策に対しての評価のスピード感が高まり、商品についてもより具体的で成功の角度の高いものが生まれてくるはずだ。それが、地域経済を上げていく重要なきっかけ、継続的に使ってもらえるサービスにもつながっていく。

――最後に、地方自治体やDMOの方々に一言。

 このサービスを使っていただきながら、各地域がデータに基づいて課題を特定し、施策を立案・実行していただきたい。このサービスはあくまでツールでしかないので、課題を特定して施策を打っていくことが大事だと考えている。そのため、誰でも使えるということを考えており、データ分析官のような人がいなくても使えるサービスにしている。早く簡単に、そして知りたいところが分かる地域観光データ把握サービスとなっているので、ぜひ使っていただきたい。

高橋 佑司(たかはし・ゆうじ)㈱リクルート Division統括本部 旅行Division 地域創造部 部長。観光・地域振興支援を担当する観光庁などの中央省庁、全国の地方自治体の営業責任者。2006年(株)リクルート入社。じゃらんリサーチセンターでエリアプロデューサー、マネジャーとしてエリア活性に携わった後、2023年4月から現職。地方自治体の各種審議会委員等を務める。

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