新型コロナウイルス感染症により、レジャー業界では多くの事業者がデジタル化への取り組みを加速させました。この春、事業者に対して行った独自調査では、中小〜大手まで、約半数近い観光事業者が「コロナ禍によりデジタル化が進んだ」と回答しています。事業者はオンライン予約システムや非接触対応などのデジタル技術を取り入れ、顧客が安心して施設を利用できる環境を構築することで、混雑を抑え滞在の質を向上させると同時に、より広範なマーケットにアプローチできるようになりました。
デジタル技術のマーケティング活用
最近当社で捉えている業界のニーズは、こうしたデジタル技術をマーケティングに活用したいというものです。需要の回復を受けて、施設運営の見直し・デジタル化の本格推進を検討し始める経営層は少なくありません。人材不足と費用高騰の課題に対応しながら、顧客を獲得し収益最大化を図りたいと相談を受けます。
契機となったのは、今年のゴールデンウィークです。遠方志向となった旅行トレンドの変化、天候事情等により、地域や施設の特長によって明暗が分かれる結果となりました。コロナ禍で人気を集めていた施設が前年実績を下回った、という声も聞きます。旅行のニーズが変わり、事業者は真の競争力向上が急務だと考えているのです。旅行先の選択肢が再び世界中に広がり、これまで以上にマーケットの競争が激化しています。
ここで事業者に求められるのは、自社の強みと顧客の理解を深めることです。顧客に選ばれるための施設運営には、顧客のニーズや要求を把握することが必要不可欠です。
顧客データを生かした差別化、好循環
鍵を握るのはデジタル技術を介して取得・蓄積した顧客データ。顧客の行動データや嗜好データから、自社の本質的な魅力が明らかとなります。顧客に評価されている魅力を理解し、独自の体験やサービスを強化することで、他との差別化を図ることができるようになります。また、それぞれの顧客に適した体験を提供することで満足度を高め、繰り返し利用してもらう好循環を生み出すことができます。
データを活用することは、効率のよい施設運営にもつながります。
あるレジャー施設様から「施設を繰り返し利用するリピーターを増やし、客単価を上げたい」「広告代理店を利用してCMも打っているが、効果に疑問がある」等の相談を受け、施設入場に利用された販売データから顧客層を分析しました。運営側で捉えているメインの客層は幼児連れファミリーでしたが、実際のところ、ファミリー層の来場率はわずかなものでした。データ分析により初めてその課題を認識し、幼児を対象にしたプレゼントを付けた来場キャンペーン施策を実施。施策によってファミリー層の来場が伸びたか、データとともに振り返り、自分たちでPDCAを回す社内体制を構築しています。
データの取得・分析をして初めて自社が持つ強みや課題を知り、そこから次の施策を打って振り返る、と、費用を抑えながら効率的な組織運営に取り組む事業者は増加傾向にあります。
アフターコロナ時代においては、デジタル技術の活用だけでなく、自社の本質的な魅力ならびに顧客の理解が求められます。あくまでもデジタルツールは手段であり、それを活用して顧客とつながりを深めることが重要です。競争力を高め、顧客の心を掴むための近道は、真に魅力的な体験やサービスの提供です。アフターコロナ時代のレジャー業界においては、常に変化する顧客ニーズを捉え、対応する柔軟さがより一層求められていくと考えます。