「4月1日から合理的配慮の提供が義務化されます」。聞いたことがある方も多いと思います。しかし、それ以前がどうだったのか？ 合理的配慮とは？ など、法律の内容を知らない観光事業者も多いのではないでしょうか。多様な観光客を受け入れる観光地や事業者こそ、法律を理解し誰もが旅を楽しめる環境づくり（ユニバーサルツーリズムの推進）が必要であり、今回は参考になる資料を紹介します。
まず、内閣府のサイトでは以下のように法律の目的が書かれています。
改正障害者差別解消法
国連の「障害者の権利に関する条約」の締結に向けた国内法制度の整備の一環として、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、平成25年6月に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」（いわゆる「障害者差別解消法」）が制定され、平成28年4月1日から施行されました。令和3年5月、同法は改正（令和３年法律第56号）され、改正法は令和6年4月1日から施行されます。（内閣府）
障害者の差別解消に向けた理解促進のポータルサイト
https://shougaisha-sabetukaishou.go.jp/
ここでは、
・法律の条文
・リーフレット
・合理的配慮の事例データベース
・相談窓口
・法律の解説動画
など、理解のための入口として参考になる情報がまとめられており、従業員への啓発などに使える資料がいくつも公開されています。
平成28年に法律が施行された後、日本旅行業協会（JATA）ユニバーサルツーリズム推進部会が中心となり、「高齢の方・障害のある方などをお迎えするための接遇マニュアル」が制作されました。旅行業編、宿泊施設編、観光地域編として、観光庁のユニバーサルツーリズム推進サイトからダウンロードできます。
私自身も地域でユニバーサルツーリズムセミナーや研修会などで登壇する際、いくつかの資料は印刷して配付するようにしています。解説と同時にお伝えしていることとして、旅行を楽しもうとする高齢者や障害者のお身体の状態は一律ではないので資料に記載があるからこれがすべてではなく個別確認や対応が必要ということです。車いす使用者だけを考えても、自走式車いすなのか、電動車いすなのか、車いすに乗っているのがお子さんなのか、高齢で旅行中だけ使用している方なのか、介助者がいるのかなど個々状況は異なります。
法律の理解、障害の理解の両輪で誰もが楽しめる観光地、施設に向けた工夫が生まれるのではないでしょうか。ハード面のバリアをハート（ソフト）で対応する観光地や施設も増えつつあります。
観光庁心のバリアフリー認定制度
https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/kokorono_barrier-free/index.html
令和6年2月現在、全国で1678施設が認定を受けています。
また、神奈川県の箱根町はユニバーサルツーリズムの取り組みなどが評価され、「世界の持続可能な観光地トップ100選」を2年連続で受賞されました（https://www.hakone.or.jp/sustainable-tourism/8425）。観光からより良い社会を作ることを目的とした「ジャパントラベルアワード2024」では、奄美大島で障がいの有無にかかわらず誰もがマリンスポーツを楽しめる取り組みをしている「ゼログラヴィティ」がグランプリを受賞し、松江しんじ湖温泉で先進的にバリアフリーに取り組んでいる「なにわ一水」がアクセシブル部門、宿泊施設部門の2部門を受賞されました。観光地では、「戸隠ユニバールツーリズムデスク」が観光開発部門を受賞されています（https://japantravelawards.com/）。このような地域や施設の多くは法律に関係なく、より多くの方に楽しんでほしいという思いで取り組んでこられたのでしょう。
今後は、ますますユニバーサルツーリズムに積極的な地域や施設の見える化が進み、高齢者や障害者の旅の選択肢が広がっていくはずです。その時に顧客に選ばれる地域や施設になっているか？ 改正障害者差別解消法を理解し、誰もが楽しめる旅「ユニバーサルツーリズム」を加速しましょう！
オフィス・フチでは全国のさまざまなユニバーサルツーリズムの取り組みを紹介し、推進のためのセミナーなども承っています。
https://officefuchi.amebaownd.com/
寄稿者 渕山知弘（ふちやま・ともひろ）ユニバーサルツーリズム・アドバイザー / オフィス・フチ代表
