学び・つながる観光産業メディア

ボーダフル・ジャパン・第2部 第1話「仮面ライダー」

コメント

 子どもの頃、アニメや特撮が好きだった。あまり覚えていないのだが、悲しい記憶がある。母方の祖母が早世したとき、福岡の通夜でテレビが見れないと泣いたそうだ。母はまったくこの子はと思ったに違いないが、人が死ぬということの意味がわからない年齢だ。

藤岡弘、さんのサイン
藤岡弘、さんのサイン(子供の頃、
サイン後、握手した記憶もあり)

 最近も叔父の通夜で遠縁の子どもがそばで無邪気に騒いでいた。ただそのとき見たかったのが「妖怪人間ベム」だったということだけは強く覚えている。

 小学生になって特撮ブームに火をつけた「仮面ライダー」。当初は夜の闘いが多く、異形のヒーローだったから、さほど人気があったわけではないが、主人公(藤岡弘)がケガで交替し、2号が登場したあたりから、ブームとなった。熱狂して、

 仮面ライダースナックを買いあさってカードを集める競争が始まった。お菓子をたべずに捨てるので社会問題にもなったほどだ。

(これがライダーカード) http://aclub201207.blog.fc2.com/blog-entry-2538.html

仮面ライダー、ロケ地ツーリズムの走り!?

 仮面ライダーは、川崎の東映生田スタジオで制作されていたから、その近辺がロケ地となることが多かった。資材置き場や用水路、何よりもライダーのバイクの見せ場がいるから、関東の各地で順次、撮影が行われた。お台場、青梅、稲城の大丸、ちょっと離れたところで天城高原(伊豆)などが知られている。

 仮面ライダーのロケ地については全国を行脚して写真や動画で発信している熱心なファンもいる。ぜひその昭和の素晴らしい思い出を振り返ってほしいと思う。

(ロケ地めぐり本) https://booth.pm/ja/items/5400231

(ロケ地めぐり動画) https://www.youtube.com/@kame_chari

 九州の田舎にいた私には当時ピンとこなかったが、北海道ロケがあった。札幌オリンピックの前年1971年、札幌ではテレビ塔、クラーク像、小樽では港や博物館、定山渓から昭和新山、洞爺湖と一大ロケがあった(第19話、第23話)。登場してくる怪人がカニやムササビと北海道を意識したものであるのも興味深い。

ロケ地が、次の旅をいざなう

仮面ライダーグッズ
UFOキャッチャーで大枚をはたいて
ゲットした仮面ライダーグッズ

 第1部の「えびの高原」でも触れたが、都城に暮らす私にとっては、えびの高原と桜島をロケにした回(第40話、第41話)がいまでも最も好きだ。私が好きな天本英世が死神博士として登場し、ケガから復帰した藤岡弘が2号ライダーとダブルで共演する素晴らしいマッチングだった。

 怪人もいきなり冒頭、ここはヨーロッパのアルプスという語りで現れたスノーマン、桜島の顔をしたゴースターという怪人がけっこう強くて痺れた。何よりも死神博士が霧島と桜島に地下トンネルを掘ってマグマを動かして九州を爆発させるという計画は子ども心にショッカーのスケールを感じさせた。

 その後、仮面ライダーが次にどこにいくのか、私は楽しみになった。個人的に好きな回は千葉の行川(なめがわ)アイランド・リゾートを舞台にしたナマズ怪人の回(第61話)。ライダーに勝てないため、南米に左遷されていたとされる死神博士が来日し、東南アジア支部から日本征服のために赴任(?)してきた地獄大使(潮健児)との共演は心をうった。

ロケ地ツーリズムを実践してみた!!

 実際、仮面ライダーのロケ地にいきたくて、研究会を紀伊半島でやろうと提案したことがある。場所は紀伊勝浦(第72話、第73話)。これもダブルライダーの共演編だが、映像で見た熊野大社、那智の滝に行きたかったのが理由だ。ホテルは勝浦の温泉、怪人はシオマネキ。

 昭和天皇も泊ったことのある旅館で、ここからポンポン船なるものにのって、海のなかの温泉に行く。この温泉のなかからいきなり地獄大使が現れてきたシーンが私の心をわしづかみにした。そう、この温泉のためにみんなにここに泊まるようしむけたのだ。

 だが残念ながら、海がしけ、ポンポン船は出ず、私は地獄大使の入った温泉にいけなかった。また、いつか行きたいと願っていた、憧れの行川アイランドももう遠の昔に廃園されている。

 番組で巡るボーダーフル・ジャパン。第2部はじまり、はじまり。

(仮面ライダーカードなど、筆者のコレクションです)

私のライダーカードコレクション
私のライダーカードコレクション
実はライダーよりショッカーが好き❤️
実はライダーよりショッカーが好き❤️
博士論文に匹敵する「ライダーカード研究」
博士論文に匹敵する「ライダーカード研究」

(これまでの寄稿は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=20

寄稿者 岩下明裕(いわした・あきひろ) 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター教授

/

会員登録をして記事にコメントをしてみましょう

おすすめ記事

/
/
/
/
/