高貴な紫色を放つ夏を感じさせる花菖蒲は、「江戸百景」に数えられる。それは、江戸時代後期に一気に広まった日本古来の伝統的な園芸植物だ。特に堀切あたりが発祥とされる手法は、菖翁と呼ばれる旗本が作り上げたものだ。地域には、最盛期に5つの菖蒲園が作られたが、現存するのは、堀切菖蒲園だけとなった。
残った堀切園を1959年に東京都が購入、1975年に葛飾区に移管された。
江戸郊外の花見どころ
欧米に苗を輸出していた時代もあるほど発展した花菖蒲園。その最古といわれるのが、小高伊左衛門が始めた「小高園」だ。そして、縁あって松平壱岐守が来訪したことにより、数多くの武家が訪れる場所となった。また、見物客に食事や酒を提供するようになり、江戸最後の新名所にもなった。
堀切菖蒲園は、戦前に作出された「江戸古花」を数多く栽培している。その数は園内の約200種のうち半数近くが江戸古花である。また、同じ品種を並べて植えるのではなく、緻密な乱数表を活用して、ランダムに植えている。それ故、変化に富んだ風景を見せてくれるのだ。

そして、毎年5月下旬から6月中旬に見頃を迎える。
かつては、綾瀬川・中川の流域であったこの場所も、現在は荒川のほとりになる。宅地化が進んで、群生する花菖蒲の周りは、マンションや首都高が立ち並んでいる。そのため、カメラを構える人々は、その姿を隠しながら、写真撮影に勤しんでいる。同じ品種が並ばずランダムに配置されているため、長い時間、写真を撮っていても飽きることが無い。
高貴な彩りが迎えてくれる
都会の片隅でありながら、時空を超えた場所、江戸時代にタイムリープしたような錯覚にも陥る。また、花菖蒲の時期は、紫陽花の時期とも被るために、庭園の内外には、紫陽花の花も数多く植えられている。

これまでは、堀切菖蒲園の園内だけが花菖蒲の名所であった。しかし、荒川の河川敷に水辺公園ができあがり、そこにも花菖蒲が植えられるようになった。見る角度によっては、花菖蒲の中にスカイツリーが咲いているような構図の写真を撮ることができる。そのため、ここも新たな名所ともなっている。
梅雨に入る前、朝早くから老若男女がさまざまな彩りを愛でる。「入園無料だから」などとも言われている。しかし、園内に入ると、とても優雅な気持ちになる。四季折々の花々は、いつ愛でても心地良いものだ。
(これまでの特集記事は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=8
取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長
(園内の様子を・・・)




