観光地域づくり法人として登録された、一般社団法人天王洲・キャナルサイド活性化協会が、天王洲アイルの観光を推進する地域DMOとしてどのように活動していくのか。そのプロセスやミッションについて、第2回の連載になります。今回は、天王洲キャナルフェスの誕生秘話から来場者が2万人以上となった成長と成果について検証致します。
天王洲キャナルフェスの前身は、2012年に始まった小規模な夏祭りでした。「ボンドストリート夏祭り」と名付けられたこのお祭りは、寺田倉庫の敷地内を中心に開催され、来場者も少なく、インパクトもありませんでした。しかし、天王洲地域の活性化を促すためのイベントにするには、より広いエリアで多くの人々が参加できるイベントに成長させる必要がありました。2015年、その目的を達成するために、天王洲・キャナルサイド活性化協会が設立され、イベントはボードウォークなどの公共空間を活用して、広いエリアと運河を活用して開催できるようになりました。
キャナルフェスの成長と発展
2016年7月、天王洲キャナルフェスが、初めて開催されました。このフェスの目的は、近隣の住民や就業者の皆さんに、天王洲アイルの水辺の美しさを体感してもらうことでした。キャナルフェスのコンセプトは、四季折々の水辺の魅力を楽しむこと、天王洲アイルをアートの街としての感じてもらうこと、そして、水辺やアートを活用した新しいコンテンツを常に提供することです。この3つのコンセプトは、いまでもキャナルフェスの企画において重要なテーマです。
初回のキャナルフェスでは、フライヤーのポスティング、駅前での配布を通じて1万人以上の来場者を集めました。その後も開催を重ねるごとに来場者数は増加し、現在では2万人以上が参加する品川区を代表する大きなイベントの一つになりました。
キャナルフェスの効果と地域への影響
キャナルフェスは、近隣住民や就業者の皆さんを中心に多くの支持を集めました。来場者は、水辺の非日常体験を楽しみ、水辺とアートの街 天王洲のポテンシャルを体感することが出来ましたと多くの声が寄せられました。リピーターも多く、家族や友人を誘って参加してもらえるケースも増えました。
著名なアーティストの音楽ライブを導入することで他の地域からの来場者も増加しましたが、これらの来場者は、アーティストのファンであり、天王洲アイルをライブ会場として天王洲を認知しているので、来街者を誘致するためのまちのPR活動としては、希薄なことに気が付きました。
キャナルフェスの課題と持続可能性
キャナルフェスの開催回数が増えるにつれ、気候や天候の影響、コンテンツのマンネリ化といった課題が浮上しました。特に屋外イベントは、天候や気温によって来場者数が大きく左右されるため、フェス開催が中止になることもありました。また、フェスのコンテンツが固定化され、魅力あるフェスの開催を続けることが難しくなってきました。そこで、キャナルフェスの開催頻度を年2回に減らしました。夏と冬の厳しい気候を避け、フェスのコンテンツを充実させ、来場者の満足度を上げることに注力しました。
その結果、日常的にまちの魅力を発信して来街者を誘致する、新しい手段を模索することになりました。9年間で28回のキャナルフェス開催を経て、さまざまな課題を解決するために、当協会は、2024年3月に観光地域づくり法人(地域DMO)になりました。DMOとしての使命は、イベント開催による一過性のまちのにぎわいの創出から、日常的に天王洲アイルの魅力を創出し、持続的に来街者の増加を目指すことです。具体的には、イベントだけでなく、天王洲の魅力を観光資源としての価値を高める取り組みが求められています。
キャナルフェスの未来と地域の発展
天王洲キャナルフェスは、地域住民や就業者との交流を深め、街の魅力を再発見する場となりました。フェスを通じて得られたノウハウやデータは、地域の活性化に貢献しています。今後は、フェスだけに頼らず、日常的に地域の魅力を発信し、観光客や新しい来街者を引き寄せる施策が必要です。その一環として、天王洲アイルの景観を活かしたアートプロジェクトや、地域の特性を生かした体験型観光プログラムなどが考えられます。
次回は、天王洲アイルが日常的な地域の魅力を創出するための具体的な施策とそのプロセスについて詳しく紹介します。地域住民と共に進める新しい取り組みを通じて、天王洲アイルがさらに魅力的な観光地として成長していくことを期待しています。
寄稿者 三宅康之(みやけ・やすゆき) (一社)天王洲・キャナルサイド活性化協会 / 理事長