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大阪・関西万博に向けて ~これまでの関西観光、これからの関西観光~

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コロナ禍までの関西観光

※1 出典:内閣府県民経済計算

 コロナ禍までの関西の観光をデータで見てみると、日本のGDPにおける関西の域内総生産の割合は15.2%(2018年度)(※1)に対し、訪日外国人旅行者(以下「インバウンド」という。)による旅行消費額の全国に対する関西の割合は28.8%(2019年)(※2)と高く、観光(特にインバウンドによる旅行消費)が地域経済をけん引していたことがわかります。一方で、旅行者に人気の高い京都市・大阪市への集中(※3)による混雑や関西を来訪するインバウンドの70%以上が東アジアである(※4)などの偏りが課題となっていました。

※2 出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査
※3 出典:RESAS「外国人滞在分析」
※4 出典:観光庁「訪日外国人消費動向調査」

これからの関西観光

 新型コロナウイルスの感染拡大で国内外の旅行需要が大幅に減少し、インバウンドは2019年の3188万人から2021年には25万人にまで落ち込み、観光と交通への影響は甚大なものとなりました。その後、コロナが収束に向かう中で、コロナ禍を契機として旅行ニーズや形態にさまざまな変化が見られるようになりました。密を避けるための混雑回避や非接触型サービスへのニーズの高まりによる一人旅・少人数旅行への需要増などです。1回あたりの旅行人数が少なくなるということは、コロナ前と同じように旅行者を受け入れるだけではなく、変容した旅行ニーズや形態を的確に見極め、観光コンテンツの高付加価値化等によって旅行消費を拡大させることが必須となります。

大阪・関西万博に向けた関西観光アクションプラン

 大阪・関西万博を関西の観光と交通を復活させる最大の好機とするため、2022年6月に「大阪・関西万博に向けた関西観光アクションプラン」を策定いたしました。このアクションプランは、国土交通省の地方機関で観光と交通の行政を担う近畿運輸局、社会インフラ整備を担う近畿地方整備局、そして、関西全体の観光をマネジメントしている広域連携DMOである関西観光本部の三者で取りまとめました。アクションプランでは、我々の実施方針を示すとともに、地域間連携を促進するという目的で地域の取組を紹介しています。2023年3月に観光立国基本計画が改訂されたのに伴い、現在、アクションプランも改訂に向けた作業を行っているところです。

関西全体のパビリオン化

 旅行者の誘客に向けて、優良な観光コンテンツを造成しても認知度が低ければ来訪につながりにくいことから、各地域では予算を投入してプロモーションを行っていますが、万博が開催されることで、地域側がプロモーションを行わなくても大阪に約2820万人が来訪する想定となっています。これを最大のチャンスと捉えるには、一人でも多くの来訪者に関西一円へと周遊していただくための取組が必要です。そこで、近畿運輸局では「関西全体のパビリオン化」を進めています。関西全体を万博会場に、各地域をパビリオンに見立て、実際の万博会場の外にも万博会場があるというのがコンセプトです。この取組を具現化するために、現在、有識者検討会を設置して議論を進めています。

関西MaaSの活用

 関西全体のパビリオン化によって周遊のための受入の取組を進めながら、実際に周遊していただくための移動手段の確保にも取り組んでいます。地域間移動には各地域(パビリオン)を巡るバスツアーの造成、地域内移動にはタクシー等の効果的かつ効率的な活用を検討しています。そして、これら移動手段と観光情報を一元的に提供するためにMaaSの活用を検討しています。現在、関西の鉄道会社が「関西MaaS」の構築に取り組んでいます。MaaSの活用により、新しいモビリティサービスが提供され、移動や観光情報の収集利便性が向上されることを期待しています。

官民一体での取り組みを

 これらの取組は、近畿運輸局だけで実現させることは不可能です。官民が同じ目標に向かって一体となって取り組んでいくことが重要です。地域関係者を始め、皆様のご協力をいただきながら進めていければと考えています。万博を成功させることが関西の地域活性化・地域振興につながります。そのための取り組みをしっかりと進めて参ります。

立溝純也(たてみぞ・じゅんや)近畿運輸局 観光部 観光地域振興課長

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