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第7回「地域団体商標」活用事例(加工食品編)

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 前回に引き続き、地域団体商標の活用事例を紹介させていただきます。

 今回は、愛媛県の「宇和島じゃこ天」の活用事例です。

地域団体商標「宇和島じゃこ天」について

 「宇和島じゃこ天」は、宇和海で水揚げされるホタルジャコを主原料としています。頭・内臓を手作業で取り除いた後水洗いし、直接骨や皮ごとミンチにかけ、出来上がったすり身を小判型にして、油で揚げます。水洗い以降は水にさらすことが一切ありませんので、うまみが流出することがありません。そのため、栄養価が高くてとても美味です。「宇和島じゃこ天」は基本的に手作りであり、製造元によって味や色に変化があるので、食べ比べを楽しめます。

宇和島じゃこ天

品質を守るために地域団体商標の取得へ

 地域団体商標を取得される前、「宇和島じゃこ天」の模倣品が増加していました。模倣品は、イベントやサービスエリアで発見され、第三者からの情報提供で発覚しました。そして、模倣品は品質が悪いものを高値で販売しており、申し入れをしましたが、何も対応されずに無視される状況が続いていました。さらに、組合員の会社のホームページから無断で写真を使用し、ポスター等に使われていたこともありました。そこで、権利者は、自分たちの商品の品質を守るべく、地域団体商標の取得へ動き出しました。

 権利者は、地域団体商標の出願にむけて、自治体や地域の企業などの協力のもと、PR活動を行いました。また、組合員の地域団体商標への理解を深めるために、地域団体商標制度に関する勉強会を実施しました。

地域団体商標権利取得の効果

 2017年に地域団体商標を取得後、権利者から模倣品への申し入れをしたところ、すぐに使用を中止してもらえるようになりました。

 地域団体商標の取得による組合員のメリットを権利者に伺ったところ、「地域団体商標を取得したことで、ふるさと納税の返礼品としてすぐに認められるようになったことです。年末が繁忙期となり、出荷が偏っていますが、ふるさと納税の返礼品として、通年、出荷することが可能になりました。それだけではなく、スーパーなどからお声掛けいただき、商品を卸すきっかけにもなりました。各地で開催される愛媛フェアや四国フェアからも声が掛かり、実演販売を行うようになりました。地域団体商標取得による信用力の向上を感じています」とおっしゃっていました。

 また、権利者は、地域団体商標の管理にも力を入れています。地域団体商標の取得を見込んで、地域団体商標の取得以前から商標使用に関するガイドラインを策定するとともに、「宇和島じゃこ天」の認証マークを策定し、各社貼り付けられるように、シールを作成しています。

 今後、「宇和島じゃこ天」を多くの方に食べていただけるように、各社のものをまとめて食べ比べできる取組など検討されているそうです!

さて、次回の第8回は、「地域団体商標」活用事例(工業製品編)についてお話します。

★地域団体商標制度や登録産品に関して詳しく知りたい方はこちら!https://www.jpo.go.jp/system/trademark/gaiyo/chidan/index.html



寄稿者 特許庁 商標課地域ブランド推進室

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