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新幹線は現代の北前船 ひがし北海道に人や文化を運ぶ|JR北海道 戸川達雄執行役員釧路支社長インタビュー

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 江戸時代から明治時代の交易を担った北前船の寄港地が交流する「第34回北前船寄港地フォーラムin ひがし北海道・くしろ」、 “地域間交流拡大”を強力に推し進め、地域の活性化に向けた課題解決に取り組む「第5回地域連携研究所大会」が2024年6月30日に開かれた。JR北海道の戸川達雄執行役員釧路支社長に、北海道・釧路でのフォーラム・大会や道東観光への思いを聞いた。(取材は6月29日に北海道釧路市の釧路市観光国際交流センターで)

JR北海道 戸川達雄執行役員釧路支社長
JR北海道 戸川達雄執行役員釧路支社長

――「第34回北前船寄港地フォーラムin ひがし北海道・くしろ」「第5回地域連携研究所大会」が北海道釧路で開かれることとなったが、受け入れ側としての思いを伺いたい。

 JR北海道は、会社の経営状況が大変厳しい状況が続き、国や道から支援をいただいてきている。2016年11月には、「当社単独では維持することが困難な線区」を発表し、新たにご利用の少ない線区を「黄線区」と呼ぶようになった。黄線区には、道東でいうと釧網線、花咲線が対象となっている。私は2年前に釧路支社に着任したが、札幌にいた当時には黄線区担当であったことから、何とかしたいという思いを持ち続けていた。実際に釧路に着任した際に、これだけ素晴らしい線路はないと改めて感じた。それからも、ずっと打開策を考えている。

 そのような中、縁があり、北前船寄港地フォーラム、地域連携研究所大会が開かれることとなった。準備をする中、地域と一緒にひがし北海道全体を盛り立てていく大きな流れができた。私どもの会社でいうと鉄道だが、さまざまな観光素材や関係者それぞれの事業生業をひがし北海道の中で結び付いていけば、大きなうねりへとつながるはずだ。

――フォーラム・大会の開催前にはエクスカーションが行われたが。

 エクスカーションでは、帯広から釧路へ向かうAコース、根室から釧路へ向かうBコース、網走から釧路へ向かうCのコース3つのコースを実施した。これらは、ひがし北海道の大きな区域となるとともに、私ども釧路支社の守備範囲であった。鉄道を通じた旅で、大いに地域に着目してもらえたはずだ。

 JRは、「ジャパンレール」ではあるが、「ジモトレール」でもある。鉄道は地元の中で生かされ、皆さまと共に支えていただきながら運行しており、言葉の中にその思いを込めている。フォーラム・大会では、地元と共にどう地域を作っていくかを伝えたい。

――北海道では人口減少が進み、鉄道を維持することは容易ではない。国では着地型旅行商品の造成や流通促進を唱えているが、鉄道を観光コンテンツにつなげられないか。

 特に釧網線、花咲線というひがし北海道の鉄道は、観光列車を運行し、観光が基軸となっている。観光を促進する中で、鉄道をどう使うか地域と共に考えていきたい。

――オフシーズンでの対策など事例があれば伺いたい。

 昨年からは、いろいろな形で実証実験を行っている。例えば、釧路湿原などを走るノロッコ号だが、ただ走らせるだけでなく、世界三大夕日が美しい街といわれる釧路ならではの企画として、夕方の時間帯に列車を走らせる「夕陽ノロッコ号」を運転した。とても大きな反響を得た。

 花咲線は、釧路から根室までを走る路線だが、根室に向かう際に右側ばかり美しい景色が続く。夏の期間においてこの右側の一部を指定席として販売。事前には席を予約できるようにした。鉄道を観光資源として生かし、どうしたら維持できるかを日々考えている。

――今後、北海道では2030年度末に開業予定である北海道新幹線の延伸が大きな話題となる。北前船の寄港地に訪れてもらうきっかけとなるか。

 「新幹線は現代の北前船」という話をよくする。過去には、北前船が物流もさることながら、人流、文化のつながりを運び、作ってきた。新幹線は、人、文化的なつながりを生む大きな軸となる。飛行機や船、高速道路もネットワークを形成するものだが、釧路、ひがし北海道、北海道全体において、新幹線の函館から札幌までの延伸はこれまでにない新たな交流を生むものと期待している。

聞き手 ツーリズムメディアサービス代表 長木利通

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