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多文化共生で観光まちづくり堅調、長野県白馬村の丸山村長がインバウンド誘客の秘訣を語る(楽天オプティミズム2024)

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 楽天グループは8月1~4日、ビジネスカンファレンスや体験などを提供する同社グループ最大級の体験イベント「Rakuten Optimism(楽天オプティミズム)」を開いた。8月2日に実施したビジネスカンファレンスでは、トラベル領域として「持続的な観光まちづくりに向けて」をテーマに、楽天グループ常務執行役員トラベル&モビリティ事業ヴァイスプレジデントの髙野芳行氏と信州白馬八方温泉の旅館「しろうま荘」の経営者で長野県白馬村村長の丸山俊郎氏が、地方へのインバウンド誘客に向けた戦略や観光資源の活用について議論した。丸山氏は、住民参画による観光振興や、多文化共生社会による外国人観光客を迎え入れる姿勢の大切さを説いた。髙野氏は、「インバウンドと地方観光が両輪となることで、観光産業全体が伸びていく」と述べた。

 楽天オプティミズムは、より明るい未来に向けて多くの発見のきっかけとなる場を提供するイベント。2019年からスタートし、今年で5回目を迎えた。2023年には10万人を超える来場者を記録している。2024年は、「AI」「モバイル」をキーワードに大人から子どもまで楽しめるコンテンツを用意するほか、最新テクノロジーや楽天エコシステム(経済圏)を体感できる「フューチャーフェスティバル」を展開。また、同社のビジネスリーダーに加え、第一線で活躍するスピーカーが集う「ビジネスカンファレンス」が行われた。

楽天オプティミズム内での楽天トラベルブースの様子
楽天オプティミズム内での楽天トラベルブースの様子

ストーリーと多文化共生がインバウンド誘客につながる

 「持続的な観光まちづくりに向けて」をテーマに行われたビジネスカンファレンスでは、髙野氏と丸山氏が登壇し、白馬村における住民参加型の観光まちづくりやインバウンド観光客の受け入れ、地域資源の活用について意見が交わされた。

白馬村の丸山村長
白馬村の丸山村長

 丸山氏は、2022年に村長に就任し、白馬村を持続可能な観光地域にするために日々取り組みを行っている。村長になる前は、オリエンタルランドや、オーストラリアでのワーキングホリデーなどを経て、家族で経営するしろうま荘で支配人をしていた。しろうま荘は、2012年に旅行業界のアカデミー賞と言われる「World Luxury Hotel Awards」のLuxury Ski Resortのカテゴリーで、Global Winnerを受賞している。また、丸山氏は、イギリスの富裕層向けの旅行誌によるトラベル・アワードで世界一の支配人に選ばれている。 

 対談では、まず高野氏が観光業の市場規模を解説。日本では年間約40兆円で、全産業におけるシェアは7.1%だが、世界では年間約10兆ドル(約1500兆円)でシェアが9.1%であり、今後はさらに2桁を超えてくるという予測を示した。髙野氏は「日本は製造業が大きな割合を占めるが、世界の伸びを見ても観光が経済発展におけるキーの産業になってくる。観光産業の発展には、インバウンドと地方の観光の成長を同時に進めていかなければならない」と指摘した。

楽天グループの髙野ヴァイスプレジデント
楽天グループの髙野ヴァイスプレジデント

 丸山氏は、しろうま荘でのインバウンドの集客手法について紹介。国内のスキー客の取り合うのではなく、グローバルでの集客の目指してホスピタリティやエンターテインメント性といったソフト面に力を入れたことが、欧米など海外からの誘客につながった。丸山氏は、「白馬村は民宿発祥の地と言われ、登山客の受け入れや、農家が冬にはスキー客を受け入れて発展してきた歴史がある。農家民宿は海外からの方が評価が高く、建物や食材などの背景にあるストーリーなどを英語で伝えてきた。結果、海外からだけでなく常連である日本人からも評価が高くなった」と振り返った。

しろうま荘ではストーリーを伝えるなどソフトサービスに力を入れてきた
しろうま荘ではストーリーを伝えるなどソフトサービスに力を入れてきた

 白馬村の観光の位置付けについては、丸山氏は「白馬村は観光立村であり、住民の約7割が観光業関係者だ。観光が住民にとって密接なものであり、振興されることで村も行政も住民生活も潤う」と語った。村長に立候補した理由への問いには、「観光事業者であった時から地域全体のことを考えなければならないという観点を持っていた。就任前にも行政や地域と一緒に取り組みをしてきたが、自分が培った能力を地域に還元できて貢献できるポジションだと感じた」と説明した。

 また、スキーリゾートのイメージがある冬以外の季節での観光需要の創出の取り組みとして、グリーンシーズンを生かした登山需要、ゲレンデを生かしたトレイルランといったイベントなどを披露した。通年での集客が人手の安定した雇用にもつながっている。「地域内での営業表記や住環境を伝える動画など情報発信も大事だ」と丸山氏。

 白馬村では、村民と外国人住民が安心して暮らせるように多文化共生社会の推進に関する条例を制定している。条例に伴い、多文化共生社会の形成に向け、外国人住民が地域社会の一員として共に生活することができる社会環境の形成を図るため、白馬村多文化共生支援員を置いている。丸山氏は「どういった方が迎えてくれるかは、旅行者にとって非常に重要。暮らす人は地域そのものである」と話した。

 最後に、髙野氏は楽天グループによる地域課題解決に向けた取り組みを紹介。7月に長野県と包括連携協定を締結するなど、地方自治体と包括連携協定を結びながら、楽天が持つアセットの提供などを行っている。

取材 ツーリズムメディアサービス編集部

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