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観光地域づくり法人(DMO)と天王洲アイル#5 ~まちのプロモーション~

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 観光地域づくり法人として登録された、一般社団法人天王洲・キャナルサイド活性化協会が、天王洲アイルの観光を推進する地域DMOとしてどのように活動していくのか。そのプロセスやミッションについて、第5回の連載になります。前回は、リブラディングにより天王洲アイルの小さな魅力を積み重ねることで、ツーリストが水辺とアートの癒しを享受できる雰囲気(ブランド感)の構築について述べました。今回は、天王洲アイルのプロモーションについて、天王洲キャナルフェスを通してご紹介いたします。

天王洲運河と天王洲アイルの街並み(左)、天王洲キャナルフェス 船上ライブ

天王洲アイルのまちの変化

 東京モノレールとりんかい線の乗り換え駅で羽田空港や品川駅、都心へのアクセスの良さを持つ天王洲アイルは、2000年以降、東京湾岸地域の居住エリアとして、タワーマンションが建設される地域に変貌しました。2000年当時の天王洲アイルは、居住人口1000人程度、就業人口3万人程度の働く人のまちとして成り立っていました。2005年以降、天王洲アイルの近隣エリアにタワーマンションが建ち並び、天王洲アイル駅の利用者を中心に多くの住民が天王洲アイルに流入することにより、働くまちの機能だけでなく、住むまちとしての機能も充実することを求められていくことになりました。

 美しい景観を持つ運河沿いのボードウォークも、以前は人通りが少ないため近寄りがたく、オフィスビルの低層部の商業は、ファストフード、コンビニエンスストア、レストラン、カフェ、居酒屋、文房具、花屋等のオフィス街に必要な機能的な商業店舗がラインアップされており、就業者が休日となる土日は、定休日の店舗も多くありました。休日の天王洲アイルは、人のいない抜け殻のようなまちでした。近隣住民の方は、天王洲アイルに不気味な印象を持ちながらも、商業施設の土日営業や、スーパーマーケットや生活日用品を購入できる店舗の誘致を望んでいましたが、その声は、なかなか届いていなかったように思います。

天王洲運河を挟んだプロジェクションマッピング(左)、天王洲キャナルフェス 2018 夏

地域活性化イベント「天王洲キャナルフェス」誕生

 2012年から天王洲アイルの賑わいを創出するために、寺田倉庫や地域関係者、行政が協力し、2014年に天王洲運河に水上多目的スペースや第三水辺広場が誕生しました。そして、2015年に天王洲・キャナルサイド活性化協会が設立され、運河に恵まれたロケーションを最大限に活かす、にぎわいづくりへの挑戦が始まりました。2016年の春、パナソニックグループ協力のもと、天王洲運河を挟んだ対岸へのプロジェクションマッピングの投影実験が実施されました。また、天王洲運河の日常的な夜間景観演出を施すために、建物や橋のライトアップを推進しました。そして、同年夏、水辺のプロジェクションマッピングを核とした「天王洲キャナルフェス」が開催されました。近隣地域の住民の方々に天王洲アイルの魅力を感じてほしいと、子ども向けの縁日、ワークショップ、マルシェ、ミニクルーズ等を実施し、1万人以上の来場者が訪れる盛大なフェスになりました。手応えを感じた私たちは、キャナルフェスを季節にあわせ定期開催とし、天王洲アイルの魅力を伝える新しい企画を追加することをコンセプトにしました。

 天王洲アイルのプロモーションは、近隣住民の方々にまちの魅力を伝えることから始まりました。

天王洲キャナルフェス アートワークショップ(左)、天王洲キャナルフェス 船上ヨガ体験

近隣地域との連携による天王洲のプロモーション

 天王洲キャナルフェスの開催を機に、近隣地域の方々との交流がはじまりました。天王洲をにぎやかにしたいと思う私たちの気持ちを受けて、地域の方々は応援してくれるだけでなくイベントのお手伝いもしてくれました。例えば、キャナルフェスの告知に苦労していた際には、近隣地域で開催される他のイベントと一緒にポスティングをさせてもらったり、互いのイベントの集客へ増やすためにスタンプラリーで連携したりと、地域の交流が広がり、地域の方々に興味を持っていただけました。

 このように天王洲アイルの魅力を共有することで、地域としての共同体の意識が生まれ、かつ、地域振興による交流が、天王洲キャナルフェスの来場者増加につながったのです。

天王洲キャナルフェス クルーズ(左)、天王洲キャナルフェス アートツアー

天王洲キャナルフェスから観光地域づくり

 天王洲キャナルフェスは、2016年から地域住民の方々に天王洲アイルの素晴らしさを感じてもらうことをコンセプトとして現在まで28回開催しており、フェスに来場された多くの住民、就業者が天王洲アイルのファンとなりました。天王洲キャナルフェスは、「水辺とアートのまち天王洲」の素晴らしさを共有するファンクラブイベントとして、住民や就業者のファン魂を育てています。さらに、天王洲キャナルフェスを定期的に開催することで、ファンが新たなファンを呼び込むイベントを核としたまちのプロモーションが行われています。

 このように、天王洲キャナルフェスを通して地域の方々との絆を築いてきました。地域の方々の大きな応援もあり、当協会は、観光地域づくり法人DMOとして、観光という新しい分野に挑戦することができます。地域との共創・連携を通じて「天王洲らしさ」を観光資源として活用し、持続可能な観光まちづくりを推進します。今後は、天王洲アイルの価値を具現化した観光商品開発に挑むことが重要な課題です。「水辺とアートの街」として、癒しのある都市型の観光地域づくりを目指していきます。

寄稿者 三宅康之(みやけ・やすゆき) (一社)天王洲・キャナルサイド活性化協会 / 理事長

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