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「軍艦島(端島)を忘れないで」~亡き妻に贈る 第10話~

コメント

 「もう15年になるんだなあ」「家内(裕美子さん)と昔ばなししてるかな」。

 毎年家内と必ず仏壇に手を合わせていた。その家内も彼と同じ世界に行ってしまったが・・・。

節目の日柄には、さまざまなことが起こる

 2009年8月30日、民主党が大勝。自民党は歴史的大敗を喫し「政権交代」の日である。

 その日の選挙にきちんと投票を終えた後、16:30にその歴史的事実を知ることも無くこの世を去った一人の男性がいた。

 小島隆行・・・享年38歳であった。

 あれから15年、時代があっという間に変わってしまった。彼は何故死に急いだのか、いや事故だったのか偶然の出来事であったのか。未だに彼の口から聞くことはできない。

愛すべき場所・・・端島(軍艦島)

 軍艦島をこよなく愛し、2002年に初めて会ったあの日のことは今でも忘れられない。機関銃のように、軍艦島の話を始めた君は目がきらきらと。そして、饒舌に長崎弁をくまなく使いこなし、周りの人々を軍艦島ワールドへ導いた。端島(軍艦島)の出身でも無い君が何十年もかけて調べ上げた軍艦島の細部までの知識と表現は大学の先生でもかなわない博識であった。

 定期的に軍艦島に渡り続け、常にオニギリとお神酒を携帯し、島に着くなりオニギリを慰安のために海に流しお寺、神社にお神酒を上げ、そして、祝詞をあげながら島の安泰を祈った。

 自分の口には水すら与えず。

 人が消えたこの軍艦島に元島民以上に愛情をささげた君が、15年前の今日・・・この世に別れを告げた。あの日の16:30に君に何があったのだろうかと・・・。

盆送り

新盆の舟送り
新盆の舟送り

 もう想像するのはやめよう。きっと、君は今でもこの軍艦島を家内(裕美子)さんと空の上からきっと眺めているに違いない。彼も家内も軍艦島に散骨している。

 今朝仏壇のロウソクが直ぐに点かなかったのは君がすこうし「思い出して」と言っているような気がした。

 15年目の夏に・・・合掌

(つづく)

これまでの寄稿は、こちらから

https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=21)

寄稿者 坂本道徳(さかもと・どうとく) NPO法人 軍艦島を世界遺産にする会 理事長

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