長く入り組んだ入江の双方に山が迫る長崎の町。そのため、坂の町は地域住民にとって、上り下りが厳しい町となっています。しかし、夕暮れ、その山に登るとキラキラとした素晴らしい夜景を目の当たりにすることができます。
ダイヤモンドのような「稲佐山」。扇の要「立山」。そして、生活感のする音の聞こえる「風頭山」。かつては、これらが長崎三大夜景と言われました。しかし、最近は、手を差しのべるとつかめるような「鍋冠山」を加えて、四大夜景と呼ばれています。
また、春秋の修学旅行シーズンには、全国各地から子供たちが訪れます。そして、町中、特に眼鏡橋あたりを闊歩します。また、冬の時期には、市内全体が赤や黄色の提灯を纏います。淡い光に包まれたランタンフェスティバルが開催されます。
まちをぶらぶら歩くという意味の長崎弁「さるく」。町歩きの観光コンテンツとして、官民一体となって、開発・情報発信を進めています。そのために、町中を走る市電や平和公園周辺の史跡などの観光コンテンツ化も進めています。やはり、長崎の魅力は、「歩く」ことなのでしょう。
さて、それでは、長崎の俯瞰する夜景を、ひとつ一つを見ていくことにしましょう。
稲佐山
市街地の西方に位置する標高333mの市内を一望にできる山。裾野には、旅館ホテルや住宅なども建ち並びます。
そして、函館の函館山、神戸の摩耶山とともに日本三大夜景とされています。また、稲佐山からの夜景は「1000万ドルの夜景」と称されます。2012年には、モナコ、香港と並ぶ世界新三大夜景として認定されました。
立山
長崎市内の公園の中で最も桜が多い場所。見頃を迎えると、約700本の桜が咲き乱れます。長崎駅からも裏手を通り抜けると上ることができる立地です。
途中には、お墓地があります。忌み嫌われる通り道になりそうです。しかし、長崎のお墓は、それぞれにお休み処を持つ設えです。そのため、お墓参りの時にゆっくりと眼下の景色を眺めている方を見かけることもあります。
風頭山
長崎駅から東に約3km、長崎港を望む標高151.9mの山。長崎名物「凧(ハタ)揚げ」の名所としても有名です。桜やあじさいの名所でもあり、四季折々に花を愛でることができます。
また、眼下は長崎を代表する繁華街「思案橋」です。山頂からも市電ガタゴトとした音を聞くことができる生活感のある山です。
鍋冠山
鍋をふせたような形の標高169mの山。2016年にリニューアルされた回廊形式の展望台からの眺めは、標高が低いために手に取るような雰囲気です。グラバー園からも徒歩でほどなく上ることができます。
そのため、夜景スポットの一角を占めるようになりました。対岸の稲佐山や入港する大型クルーズ船も目の前に見ることができる好立地です。
女神大橋
市内は慢性的に交通渋滞を起こしていました。それは、長崎港の両岸に分散しているさまざまな施設が分離されていたからです。その解消のために2005年に供用開始されました。全長は1,289mです。
また、大型客船が不自由なく長崎港に入港するために、橋はかなり高い位置に建設されています。夜間はライトアップされ、町の大きなアクセントとなっています。
長崎ランタンフェスティバル
1986年に長崎新地中華街に牌楼が建設されます。そして、その際に観光振興イベントとして春節と元宵節を合わせた「灯籠祭」として始まりました。
その結果、観光客からの反応も好評で、1994年に長崎都市発展戦略の一環として、「長崎ランタンフェスティバル」と改められました。期間中は、約100万人が来場する長崎最大のイベントです。旧暦1月1日から1月15日にかけて行われるため、暦の関係で、年ごとに開催期間は前後します。
眼鏡橋(めがねばし)
中島川に架かる石造二連アーチ橋。沖縄の天女橋を除くと、日本初の石造りアーチ橋。そして、1960年に国の重要文化財に指定されました。橋長22m。半円を描くアーチ形式の石橋は、水面に映しだされた姿が眼鏡のように見えます。また、右側の石垣には、ハート模様の「石」が埋め込まれ、それを目当てに修学旅行生が探す姿もシーズンになると数多く見かけます。
町歩きの好事例
さて、長崎市は、諏訪神社あたりから眼鏡橋、大浦天主堂、グラバー園にかけてを「さるく」の中心エリアとして、整備を進めています。そして、歩くことによるお客様の「気づき」と「経済効果の拡大」を意図していると聞いています。
また、長崎市は、広島、沖縄と並ぶ平和教育の生き証人の町です。一方、市内に修学旅行を宿泊させる施設が少なく、航空機利用が解禁となったことで、長崎への修学旅行は、減少傾向にあった時期があります。しかし、班別行動などの安全性が認められ、再び、長崎への修学旅行が復権していると聞きます。
やはり、観光の基本は、「町を歩き」「地元の人々と会話し」、新たな発見をすることこそ、一番大切なことなのでしょう。
寄稿者 観光情報総合研究所 夢雨/代表
(これまでの寄稿は、こちらから)https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=181
故郷「長崎」を取り上げていただき、ありがとうございました。高校卒業まで、住んでいました。稲佐山からの夜景、まるで 「宝石箱」を、ひっくり返したような、素晴らしさです。