二つの半島がカニの爪のように相並ぶ風景。日本のど真ん中の海辺に「渥美半島」と「知多半島」が横たわっています。爪の内側は、三河湾、その外側を伊勢湾と言います。
中京圏の海上観光コンテンツ
渥美半島は、太平洋側にある半島です。愛知県東南端から西南西に突き出すように延びています。全長は約50km、幅5.8kmと細長い半島です。そして、島崎藤村の抒情詩「名も知らぬ遠き島より流れよる椰子の実ひとつ・・・」でも知られる伊良湖岬などで有名です。
一方、知多半島は、愛知県西部、名古屋市や刈谷市の南に突き出した半島です。西は伊勢湾、東は知多湾・三河湾に挟まれています。こちらも比較的細長い半島です。また、平地は狭く、ほとんどが緩やかな丘陵からなっています。
そして、これらの半島を取り囲んでいるのが、伊勢湾です。伊勢湾は、別名「伊勢海」と呼ばれます。そのため、旧名には「伊勢海湾」とよばれることもあります。伊勢湾の名称が定着したのは、1959年の伊勢湾台風以降とされています。水深は概して浅く、伊勢湾の平均深度は19.5 m、最深部でも35~49m です。また、三河湾に至っては平均深度が約9 mとなっています。
目を三河湾対岸に向けると、そこは、神話の故郷といわれる伊勢志摩という中京圏の代表的な観光地がそんざいしています。
拡大する航空旅客数の未来のために
さて、知多半島の伊勢湾海上に、中部国際空港は2005年2月に開港しました。名古屋市中心部から南へ約35km、常滑市の沖合の人工島です。24時間運用可能な長さ3,500mの滑走路を有しています。関西国際空港に次ぐ国内第2の海上国際空港です。
また、愛称は「セントレア (Centrair)」です。英語で「中部(central)」と「空港(airport)」を組み合わせた造語です。現在、国内線19都市、国際線34都市を結んでいます。そして、訪日外国人の拡大に伴い、中部北陸9県の観光誘致活動(昇龍道)に合わせ、2本目の滑走路の建設が望まれています。
河川が集まる不安定さ・・・変化への対応が望まれる
中京圏・濃尾平野は、名古屋を中心に発展してきました。しかし、かつては現在の熱田神宮辺りが伊勢湾の岬でした。そのため、古代からの街道である東海道は、熱田から桑名まで、船を使い海上を移動していました。今では、埋立て等によって陸地が拡大され、現在の名古屋駅周辺が中心地になってきています。
そして、その海辺の低地には、数多くの河川が集まっています。木曽三川と呼ばれる木曽川、長良川、揖斐川が、伊勢湾に注いでいます。そこには、日本全国を見渡しても特異といわれる「輪中(わじゅう)」と呼ばれる堤防で囲まれた集落が存在します。この地域は、岐阜県・愛知県・三重県の県境でもあります。
輪中の定義は、
① 低湿地集落と農地を包括すること
② その集落には囲堤を持つこと
③ 水防組織体をつくって外・内水を統制すること
を指します。
一方、温暖化の影響で、水害が増えている昨今、外・内水の水防にも変化が見えてきています。伊勢湾自体の水深が浅いことが、輪中地帯を構築してきました。しかし、昨今の天候不順による水害は、予測を反したものになってきています。その意味からも輪中地域の在り方が問われているのです。
日本の中心たる気構え、期待される中京圏に
日本史上、大きな変革がある時は、不破関を制する者が天下を取ってきたという歴史があります。織田信長を輩出した尾張や徳川家康が育った三河など、日本列島の中心たる名古屋の地は、これからも期待の大きな場所です。リニア中央新幹線は、工事が遅れています。しかし、開業すると品川まで40分の距離になります。
また、その先、大阪に延伸されれば、東京・名古屋・大阪という3つの都市間は、飛躍的に近づきます。そのことによって、中京圏の位置づけは、さらに高まっていきます。
戦後の都市計画で、名古屋の道路網は先進的なものを作り上げました。また、昨今では、縦横に高速道路網も整備されました。このようなインフラは、クルマ社会の最先端と進んでいきました。そして、流通や経済の結節点としての中京圏は、より大きな存在になる可能性を秘めています。
名古屋を中心とするこの地が、改めて、天下を取ることを望むとともに期待を込めてエールを送りたいと思います。
寄稿者 観光情報総合研究所 夢雨/代表
(これまでの寄稿は、こちらから)https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=181