JATA記者懇談会を開催
日本旅行業協会(JATA)は5日、JATA記者懇談会を開いた。髙橋広行会長は「ポストコロナにおけるさらなる成長と発展に向けて」をテーマに、旅行業の現状を説明。旅行会社が2019年年比で5~6割程度まで回復している状況説明や、今後のポストコロナのツーリズムや旅行業界の在り方における重要なテーマとして「持続可能性への挑戦」を掲げた。髙橋会長は、「コロナ禍を経て旅行需要が回復傾向にあるが、訪日、国内、海外が三位一体となり、全てが回復してこそ、本当の回復と言える」と話した。
業界の信頼とコンプライアンスレベルの向上を
髙橋会長は冒頭、国や自治体の案件で会員会社でコンプライアンスの問題が発生したことに触れ、「事案を非常に重く受け止めいる」と話し、これまでの再発防止に向けた啓発活動の取り組みが不十分であったことを陳謝した。観光庁からの指示のもと、総点検を行ったことを明らかにし、「総点検で新たな問題は出てこなかったが、新たな対応策を実施していく」という方針を示した。今後に向けては、「コンプライアンスの問題は経営の根幹に関わること。業界の信頼とコンプライアンスレベルの向上に努めていく」と決意を述べた。契約行為の勉強会などを開いていく予定だ。
2019年比で国内7割、訪日7割、海外4割まで回復
旅行マーケットの現状については、2019年比で5~6割程度の回復状況であることを発表した。
国内旅行は全国旅行支援の追い風があり19年比で概ね7割程度、訪日旅行は19年比で7割程度、海外旅行は19年比で4割程度まで回復。髙橋会長は、国内旅行・訪日旅行について「国内旅行は堅調であり、訪日旅行も順調に回復がしている。訪日旅行は中国の状況次第でさらなる回復が見込まれる」と明るい兆しを示した。
海外旅行については、「回復はスローであり、5月10日に観光庁と共に海外旅行推進の宣言を行い、パスポート取得費用を支援するキャンペーンによる一定の効果はあったが、まだまだ本格的な需要の回復に至っていない」と述べた。下期では、本格回復に向けた団体旅行の再開が見込まれている。
現在堅調な訪日旅行をさらに増加させる方策としては、「国際交流の基本は双方向交流にある。海外旅行の復活なくして旅行業界の復活なし」と、航空便の復便など双方向交流の拡大に向けた海外旅行の復活や、国内、訪日、海外の三位一体でのツーリズムの早期の回復の必要性を説いた。
旅行形態については、「ダイナミックパッケージ化が進んでいくだろう」と語った。
ポストコロナに必要な4つの要素
ポストコロナに向けたツーリズム、旅行業界の在り方については、重要なテーマとして「持続可能性への挑戦」を掲げた。挑戦の達成に向けては、①SDGsへの対応②旅の高付加価値化③双方向交流の定着④協調と共創-の4つの要素を紹介。
SDGsへの対応:サステナブルツアー展開
SDGsの対応に向けては、脱炭素やサステナブルツーリズムと言った観光配慮を行ったツアーを実施するほか、業界全体の意識の高まりや取り組みの強化、お客様と共に行うレスポンシブルツーリズムを推進する。髙橋会長は、「SDGsの対応に悩む旅行者も多いが、今後は個人情報と同様な価値基準になることは必至。世界ではサステナビリティが重視され、SDGsを取り組んでいないと避ける旅行会社がある。持続可能な事例を共有しながら、会員各社と取り組みを推進する」と強調した。
旅の高付加価値化:旅行者個人でできない旅の提供
旅の高付加価値化に向けては、旅行者個人ではできない体験の創出や高い収益性の実現による持続的な社会貢献、満足度向上と消費額拡大につながるアドベンチャーツーリズムの推進を挙げた。髙橋会長は、高付加価値な旅の一例として、北海道で9月に世界大会が開かれるアドベンチャーツーリズムのワールドサミットを挙げ、「日本が注目される絶好の機会。当たり前の密回避だけでなく、より深い文化の本質を体感できる商品を提供していきたい。訪日だけでなく国内旅行の消費にもつながる」を日本のポテンシャルの高さを示した。
双方向交流の定着:海外旅行復活で観光インフラ確立
双方向交流の定着に向けては、バランスの取れた2国間交流による対等な関係性の構築を図る。今年3月に観光庁が発表した観光立国推進基本計画では、訪日旅行だけではなく、海外旅行の重要さが示されている。「相互に交流人口が拡大してこそ航空路線など観光インフラが確立される。これが訪日インバウンドのさらなる拡大につながる。対等な交流のためにもアウトバウンドは必須だ」と髙橋会長。
協調と共創:業界全体で知恵絞る
協調と共創に向けては、これまでの個社での対応から、業界全体で知恵を絞りながらの共調共創策を展開していく。
このほか、髙橋会長は2023年10月26~29日に大阪府のインテックス大阪で開かれる「ツーリズムEXPOジャパン2023」をPR。「4つの観点を具現化して来場者に伝えていく」と来場を呼び掛けた。
取材 TMS編集部 長木利通