前回に引き続き、地域団体商標の活用事例を紹介させていただきます。
今回は、福島県の「会津本郷焼」の活用事例です。
地域団体商標「会津本郷焼」について
東北最古の窯場といわれる会津本郷焼の発祥は、1593年会津若松城主・蒲生氏郷がお城の改修のために播磨国(兵庫県)から瓦工を招き、瓦を焼かせたのが始まりといわれています。はるか400年以上も前、安土桃山時代のことでした。1993年には通商産業省(現在の経済産業省)より伝統的工芸品の産地指定を受けました。
模倣品対策のため地域団体商標の取得へ
もともと地域団体商標に興味があり、地域団体商標を取得することに組合内で意見が一致していました。しかし、自分たちのブランドは全国的に有名なものではないし、模倣のおそれもないと考えていたため、地域団体商標の出願には至りませんでした。そんな中、さまざまな分野の商標について、海外で悪意ある出願が多発しているという実情を目の当たりにしました。そして、いつ自分たちが標的になってもおかしくなく、自分たちのブランドを守る必要性を感じ、地域団体商標の出願に踏み切りました。
地域団体商標の活用
日本貿易振興機構(以下、ジェトロ)の「地域団体商標海外展開支援事業※」を活用して、海外事業の展開にも力を入れています。同制度は、その名の通り地域団体商標を付した商品やサービスの海外展開をジェトロが支援するというものです。本支援事業を活用して、北米の生活者のご家庭やレストランで、会津本郷焼が日常的に使われていることを「ありたい姿」として、ニューヨークにてテストマーケティングを行いました。
具体的には、会津本郷焼の商品を展示し、アンケートを実施したり、メディアやインフルエンサーを招いたレセプションの実施をしたりしました。市場にマッチした商品特性の把握のため、既存商品だけでなく、ディナープレートを中心に展示するコーナーを設けました。マーケティングを通じて次年度以降の事業展開の方向性の検討ができましたし、会津本郷焼の認知度向上にもつながったと思います。地域団体商標を取得したことによって、第三者である特許庁から地域のブランド品であることが認められたため、安心して海外の事業展開に取り組めたと思います。
※本事業は終了しています。
さて、次回の第10回は、「地域団体商標」活用事例(サービス編)についてお話します。
★地域団体商標制度や登録産品に関して詳しく知りたい方はこちら!
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/gaiyo/chidan/index.html
寄稿者 特許庁 商標課地域ブランド推進室