学び・つながる観光産業メディア

赤や黄色がキラキラと! ~東京三大「秋景色」~編集部が独断と偏見で選定する隠れた名所探しの旅<三大あるある・第1回>

コメント

 編集部が独断と偏見で選ぶ「東京三大あるある」シリーズ、第1回目は「秋景色」です。名立たる紅葉の名所は、都内にも数あれども、探してみると、隠れた場所も少なくありません。昨今、JR東海が勧める「ずらし旅」は、脚光を浴びつつあります。それは、オーバーツーリズムの京都市内においても、ゆっくりと観光できる時間・場所を紹介しているところにあるのかもしれません。

 そのような「脇役」探しの旅にお誘いしたいと思います。

名主の滝公園(北区王子)

 一つ目は、北区王子にある名主の滝公園です。

名主の滝周辺マップ(Google Mapより転載)
名主の滝周辺マップ(Google Mapより転載)

 江戸時代安政の頃(1854~1860年)に王子村の名主、畑野孫八が自邸を公開しました。その公園が「名主の滝」の発祥と言われています。ここは、武蔵野台地の突端、王子周辺には、「王子七滝」と呼ばれる滝がありました。そして、現存するのが名主の滝公園にある四つの滝です。その中でも、落差8mの男滝は、残念ながら現在では機械制御されています。しかし、武蔵野台地の地形をうまく活用して、見事な滝を見せてくれています。

江戸から二里半、名主の夢

 秋になると、せせらぎ沿いのもみじが真っ赤になり、小川を染め上げていきます。また、それと競演するように、銀杏の葉が黄金色の絨毯と化します。そのため、その姿は、この公園を作り上げた名主の夢を語る場所と言えましょう。

 今で言う「観光コンテンツ」づくり、いずれの時代も先見の明は、大事なことですね。

名主の滝公園(彩り豊かな紅葉の向こうに男滝)
名主の滝公園(彩り豊かな紅葉の向こうに男滝)

駒込天祖神社(文京区本駒込)

 二つ目は、駒込の鎮守様・駒込天祖神社です。

駒込天祖神社周辺マップ(Google Mapより転載)
駒込天祖神社周辺マップ(Google Mapより転載)

 ここは、1189年に源頼朝が奥州征伐に赴く際に、神明を祀ったのが始まりと言われています。そして、祭神は天照大御神です。そのため、伊勢神宮と同じ神明造りの社殿が、荘厳な雰囲気を醸し出しています。

 江戸時代初期になるまで、宮守が居ない時代が続きました。慶安年間(1648-1652年)に越後村松藩主堀直吉によって再興され、駒込神明宮と称されました。時を経て、お社は空襲によって焼失し、消滅の危機に直面しました。しかし、氏子たちの熱意によって1954年に再建され、現在に至っています。

輝葉絨毯

 参道は、東京都の木でもある銀杏並木です。秋が深まると黄金色の絨毯に変わっていきます。そして、日の出から数時間後、東からの強い光が散り落ちた黄色にキラキラと彩りを加えます。神社の方が、掃き清めても、次々と輝葉が降り注ぎます。それは、神様が「掃くな」と言って、景色を楽しんでいるかのようです。

 早朝から地元の方々も参拝にやってくる姿、地元密着の神社、大切にされてきた証です。

駒込天祖神社(黄金色の絨毯が早朝の光と競演します)
駒込天祖神社(黄金色の絨毯が早朝の光と競演します)

旧安田楠雄邸庭園(文京区千駄木)

 最後は、旧安田楠雄邸庭園をご紹介します。(トップの写真は、こちらの入り口です)

旧安田楠雄邸庭園周辺マップ(Google Mapより転載)
旧安田楠雄邸庭園周辺マップ(Google Mapより転載)

 千駄木の谷間に通る不忍通りは、本郷台地と上野公園とを貫いています。「谷根千」、特に谷中銀座から根津あたりまでは、国内外の観光客が毎日のようにやってきています。

 一方、千駄木の坂の上は、閑静な住宅地です。そのため、観光客の姿を見受けることも少ない場所でもあります。そして、不忍通りから一歩入ると、斜形地に須藤公園という公園があります。かつての大名庭園を実業家の須藤吉左衛門が取得し、のちに東京市に譲渡したものです。

 ここから先は、下町の雰囲気は一瞬にして消え去り、千駄木のお屋敷町となります。その証として、この辺りには高村光太郎旧宅(跡地)や森鴎外記念館(観潮楼跡)もあり、古くからの町でもあります。

お屋敷町にひっそりと・・・

 その中にある旧安田楠雄邸は、豊島園を開いた藤田好三郎が1919年に建てたものです。その後、安田財閥が取得しました。そして、関東大震災や第二次世界大戦の際も被災せず、創建当初のままの姿を伝えていました。そのため、地下には防空壕も当時のまま保有している邸宅です。和風建築の粋を集めたお屋敷ながら、洋風の応接間を持つ和洋折衷の建物です。

 1937年に安田財閥の三代目に当たる楠雄が相続しました。1995年に楠雄が他界すると、遺族から日本ナショナルトラストに寄贈されました。古い建物ゆえ耐震補強を進め、2007年から再び公開されるようになりました。(但し、水曜日と土曜日のみの公開ですので、ご注意ください)

旧安田楠雄邸庭園(建物の中の景色、床紅葉が都会の喧騒を忘れさせてくれます)
旧安田楠雄邸庭園(建物の中の景色、床紅葉が都会の喧騒を忘れさせてくれます)

都内の秋は、12月・・・今週末がラストチャンスです!

 さて、地球温暖化の影響か、東京都内の紅葉は、12月初旬がピークと言われるようになりました。四季がなくなり、夏と冬という二季になりつつあるとも言われます。

 秋が短くなり、年を経るに従って、朱色や黄色の彩りを見る機会が減ってきています。しかしながら、一年の終わりに素晴らしい景色に出会うこと、新しい年への準備にもなると思います。

 あくまでも編集部の独断と偏見、この週末、どこの紅葉を愛でることにしましょうか?

(これまでの特集記事は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=8

取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長

/
/

会員登録をして記事にコメントをしてみましょう

おすすめ記事

/
/
/
/
/