第4章 東京都荒川区西日暮里・台東区谷中~夕やけだんだん~
着地型観光の先進的な地域である「谷根千」は、荒川・台東・文京区の区界。その人気は、1984年に地域情報雑誌『谷根千』が発刊され、町を歩く人々が増えたことによる。そして、玄関口とも言われるのが「夕やけだんだん」である。1990年に地元が公募した名前が、すごく町になじんでいる。
今、「夕やけだんだん」が再開発によって、大きなうねりに襲われている。日暮里駅から御殿坂を上り、「夕やけだんだん」に向かう左の坂道を七面坂。まさに、この階段と坂道に囲まれた一角がどんどんと更地になっているのだ。
防災か保存か・・・次世代につなげるには
風情のある建物が、谷中銀座商店街入口に彩りを添えていた。しかし、見通しの効く空間に変貌している。大きなマンションが建つのであろうか、映える景観も一気に変わってしまう。また、七面坂とは逆側の旧富士見ホテルの辺りも再開発が進んでいる。これだけの理由ではないが、古き時代を知っている住民からは「谷根千」離れも聞かれるようになった。
防災の観点から「谷根千」は再開発の対象になっているとも聞く。そのことによって、「夕やけだんだん」だけでなく「谷根千」全体が揺れている。それは、「土」である古きヒト・モノ・コトと新しくやって来た「風」の融合がうまくいっていないことに起因する。防災か保存か、次世代につなげる「風土」づくりが大きな課題である。
また一つ、こどもの頃の遊び場が無くなっていく、これも昭和喪失である。
(つづく)
寄稿者 観光情報総合研究所 夢雨 代表
(次ページは夕やけだんだん付近のある日の風景)
撮影・取材 2023年6月29日