前編(https://tms-media.jp/posts/46496/)は、10月に米国DMO統括団体であるDestinations International (以下DI)が主催するアドボカシーサミットの舞台となったカリブ海に浮かぶ「プエルト・リコ」について、移住者の歴史や、DI組織とも関係が深いプエルト・リコDMO、同サミットについて紹介した。後編では、DMOの成り立ちから、21世紀のデスティネーション・オーガニゼーションとは? その目的、使命、目標、コアバリューなどを伝えていく。
*なお日本においては観光地域経営組織をDMOと称しているが、米国においてDMOは観光地経営組織のひとつであり、文中では読者が認識しやすいようにDMOの表現もするが、ここではディスティネーション・オーガニゼーション として記載する。ディスティネーション・オーガニゼーションはデスティネーション・マーケティング・オーガニゼーション(DMO)、デスティネーション・マネジメント・オーガニゼーション(同じくDMO)、コンベンション&ビジターズ・ビューロー(CVB)、観光局、スポーツコミッション、映画やメディア作品をデスティネーションに誘致するオフィスなどを指す。
DMOの成り立ち
1896年2月、デトロイト・イブニング・ジャーナル紙のライター、ミルトン・J・カーマイケルは、都市の宣伝におけるコンベンションの有用性について記事を書いた。彼は、地元企業や市民リーダーたちが団結して、デトロイトを望ましいコンベンションの目的地として宣伝すべきだと提案した。カーマイケルのこの主張は、それまでの5年間で、デトロイトがコンベンション都市としての名声を築き上げ、何百マイルも離れたところから代表団がやってくるようになったという彼の観察に基づいている。
製造業者たちは、デトロイトのホテルを中心に毎年商談を行っていた。このようなことは、市民の努力もなく、特別な誘致活動もなく行われた。市民が彼らをデトロイトに呼び寄せようと努力することもなく、彼らがデトロイトに到着した後も、訪問者に特別な注意を払うこともなかった。彼らはデトロイトに来たかったから来ただけなのだ。カーマイケルは、デトロイトのビジネス界と政府が努力すれば、さらに多くのコンベンションを呼び寄せることができると主張した。デトロイトに何千人、何万人という人々を呼び寄せることができる。これらの人々は、デトロイトに何百万ドルも落とすだろう。この主張は効果的だった。
1896年2月19日、商工会議所のメンバーはデトロイト製造業者クラブに加わり、キャデラック・ホテルに集まり、デトロイト・コンベンション・アンド・ビジネスマン・リーグ「the Detroit Convention and Businessman’s League」を結成した。彼らはともに、ホテル経営者、鉄道代理店、商人、市民リーダー、その他の関係者からなる設立委員会を結成した。彼らは新組織の使命を "コンベンションの誘致 "と定義した。
コンベンションの誘致には2つの価値があると考えられていた。第一に、コンベンションの開催を通じて、参加者や主催者がその都市で消費するお金であり、第二に、その都市や目的地にとっての広告価値である。これは、将来の訪問者につながり、人材、資本、投資の誘致に役立つだろう。
デトロイトは、デスティネーション・オーガニゼーション業界や専門職の正式な発祥の地として認識されているが、もちろん以前からデスティネーションを宣伝するためにセールスマンを派遣する都市も増えていた。しかし、その活動の多くは全国大会を地元で開催しようとする全国組織の地元メンバーによるもので、その多くは、地元のホテル経営者、鉄道代理店、小売業者、不動産業者、その他、自分たちの都市に観光客を呼び込むことの経済的利益を認識していた人々の宣伝活動の代表者であったに過ぎなかった。
こうした意味からも、デスティネーション・プロモーションが初めて産業セクターとなったのは、地域が自ら構想し専門組織を立ち上げたデトロイトだった。 デトロイトでは、観光客や会議参加者にデスティネーションを宣伝することを目的とした法人が設立された。デスティネーション・プロモーションの専門家というアイデアもここから始まった。今日ではブランディング、マーケティング、コミュニケーション、デスティネーション・プロモーション、セールス、ビジターサービスなど、あらゆる分野のデスティネーションの専門家がデスティネーション組織を構成し、地域社会を代表して重要な仕事を遂行している。
デスティネーション組織は、その初期から進化してきた。コンベンションやミーティングを誘致することは今でも目標であるが、今日のデスティネーション組織は、レジャーからビジネスまで幅広い潜在的な訪問者と、社交、スポーツ、映画、テレビなど幅広いイベントの誘致に重点を置いている。その中心はブランド・マネジメント、戦略的マーケティング、イベントやミーティングのセールス、ビジター・エンゲージメントを通じてデスティネーションのプロモーションと開発を行い、認知度を高め訪問客とともに投資を集めることに取り組んでいる。そしてこれらの活動は、観光客と住民、そして現在と将来の世代にポジティブな観光体験を提供することを目的としている。
出典 Defining 21st Century Destination Organization
https://publications.destinationsinternational.org/view/668989655/
21世紀のデスティネーション・オーガニゼーション(DMOほか)
そして、21世紀のデスティネーション・オーガニゼーションはより深化している。上述のような経済波及効果だけでなく、地域や地域住民にとって観光がもたらす意義やその効果、住民生活の向上にまで視点を置いてきている。また、時代の変化や取り巻く政治状況にも左右されることなく、デスティネーション・オーガニゼーション自体がぶれることがないように自らを改めて再定義することは重要である。共通の定義があれば、異なる地域、文化、セクターを越えて標準化できる。標準化された定義は、国境、言語、タイムゾーンを越えた努力や政策の調整に役立つ。こうしたことからDIは21世紀のデスティネーション・オーガニゼーションの定義を試みた。
定義を明確化するためにも組織の目的、目的を達成するための使命、使命を導くための包括的な目標、その成功を支える中核的価値、そして成功した地域社会の成果や結果がどのようなものか整理も行った。 現在、わが国においても、観光庁においてDMOの在り方検討会議が開催され、わが国のDMOをどう導いていくか議論を重ねていると聞く。よってここであらためて100年以上の歴史をもつDMO先進国・米国のこの取り組みをわが国に紹介することとしたい。以下は上述のDIレポート「Defining 21st Century Destination Organization」からの抄訳である。
https://publications.destinationsinternational.org/view/668989655/
デスティネーション・オーガニゼーション、その定義
・目的(Purpose)
目的とは、組織が存在する最も基本的な理由を示すものである。すべての活動の原動力となり、地域社会への長期的な影響を反映するものである。例えば、病院の目的は、医療を通じて地域社会の目標達成を支援することである。
同様に、デスティネーション・オーガニゼーションの目的は、デスティネーションを宣伝することによって、地域社会が目標を達成するのを助けることである。
それは、「ベッド数」(ホテル)やレストランの座席数、あるいは投資収益率の問題ではない。これらの指標も重要な尺度ではあるが、最も重要な指標ではない。DIはデスティネーション・オーガニゼーションが対処できる市民的問題に対する具体的な解決策に焦点を当てアプローチしてきた。その背景にあるのは、地域が世界のあらゆる地域と競合している現実である。すべての地域は、世界の観光客のシェア、消費者のシェア、有能な人材のシェアをめぐって競合しており、競合に取り残された地域は、地歩を失い、取り残されることになる。
地域社会が競合できるようにすることが、デスティネーション組織の役割であり、DIは感情や価値観の観点からもこの問題に取り組んできた。人々は食料、水、新鮮な空気を求めて旅をする。仲間やコミュニティを求めて旅をする。そして、脳を刺激し、現実的で実存的な問いに答えるために旅をする。それは、旅の本質であり、人々と場所をつなぐ架け橋となり、それぞれの地域の独自性を探求し、祝福し、感謝することを可能にするデスティネーション・オーガニゼーションの役割を物語っている。これによって、地域社会が訪問、生活、仕事、遊び、投資の理想的な場所として繁栄する環境が培われるのである。
DIはまた、市民・政治的観点から旅行の役割にアプローチしてきた。経済発展と雇用創出、税収の増加、コミュニティの発展、生活の質、国際競争力、より広範な目標への活用、有権者の支持と参加に焦点を当てた。これらのアプローチはすべて、デスティネーション組織の目的は、デスティネーション振興の力を活用することで、地域社会の目標達成を支援することであるという前提に基づいている。
・使命(Mission)
組織の使命は、その目的をどのように果たすかを明確にしたものだ。目標を達成するための当面の目標、戦略的アプローチ、具体的な行動を概説している。ミッション・ステートメントは、組織の優先事項、活動、目標とする成果について明確な指針を示すものでなければならない。
例えば、デスティネーション組織のミッション・ステートメントには、次のようなものがある「私たちの使命は、ブランド・マネジメント、戦略的マーケティング、デスティネーション・スチュワードシップ、コミュニティ・エンゲージメントを通じて、デスティネーションを促進・発展させることです。地元企業を支援し、文化的体験を高め、経済成長を促進することで、住民の生活の質を向上させることを目指します」。
この声明の核心は、上記のような取り組みを通じてデスティネーションを発展させることで認知度を高め、来訪者や投資を惹きつけることである。これは、すべてのデスティネーション組織の使命である。これが、デスティネーション組織の目的を果たす方法なのだ。
・包括的な目標(Overarching Goals)
デスティネーション・オーガニゼーションの目的と使命は、地域社会の発展における組織の本質的な性質と重要な役割を確立するものであり、繁栄する地域社会を生み出す経済的、社会的利益の連鎖反応をおこすことである。このことを理解するために、デスティネーション・オーガニゼーションがどのように活動し、どのように包括的目標を通じて地域社会の活力を促進しているかを詳しく見てみよう。
包括的な目標とは、他の目標や意思決定に影響を与え、指針となる主要な、あるいは究極的な目標である。包括的な目標として5つの分野を明確に示している。
(1)地域住民の生活の質を豊かにする 観光は地域住民のQOLを豊かにできる。地域は、公園、文化施設、レストラン、レクリエーション施設など、観光客を惹きつけるのと同じアメニティを享受している。これらの投資は質の高い地域アメニティを生み出すが観光客の消費なくしては持続不可能である。また、デスティネーション・オーガニゼーションは、文化的スチュワードとして、地元の文化を高め、地域社会の感覚を育むイベントやイニシアチブを推進している。
(2)第二の目標は、人材の獲得と維持に貢献することである このプロセスにおいて、デスティネーション・オーガニゼーションは重要な役割を果たす。質の高い生活アメニティが人材をひきつける。デスティネーション・オーガニゼーションが主導するイニシアチブは、地元企業や起業家に基礎的なビジネススキルを身にt付けさせ、従業員研修を提供することが多い。ロングウッズ・インターナショナルの「ハロー効果(Halo Effect)」調査によると、観光広告は観光客をひきつけ、素晴らしい観光地としてのデスティネーションのイメージを高めると同時に観光地は、住みやすく、働きやすく、投資しやすい素晴らしい場所であるというイメージを高める。
(3)第三の目標は、文化とコミュニティを育むことである デスティネーション・オーガニゼーションは、その地域の固有の遺産を祝う文化的なイベントやフェスティバル、イニシアチブを支援することで、地域文化を保護し、促進する。また、多様なコミュニティや事業主に関するストーリーをメディア活動に組み込み、誇りとコミュニティ精神を育んでいる。このコミットメントにより、統一されたストーリーが構築され、訪問者も同様にコミュニティの活力が強化される。
(4)第四の目標は、公共サービスの支援である 観光客が生み出す収入は、必要不可欠な行政サービスを支えている。
観光客の消費から集められた税金は、公共インフラ、教育、医療に充てられ、すべての住民に恩恵をもたらす。調査によると、多くの住民は、観光客が支払う税金が自分たちの税金を相殺するのに役立っていることを高く評価しており、デスティネーション振興の取り組みに対する国民の支持を促進している。デスティネーション振興の経済効果は、ホスピタリティ部門にとどまらない。観光客の消費は、レジャーやホスピタリティ分野以外の産業にも大きな利益をもたらす。平均して、観光客の消費は、直接消費の60%近くに相当する追加的なビジネス売り上げを生み出す。
デスティネーション組織は、経済発展に不可欠なデスティネーションに関する一貫したメッセージの発信に主導的な役割を果たす。その地域が、住み、働き、投資するのに望ましい場所であることを宣伝する手助けをするのである。目的、使命、包括的な目標を明確にすることで、デスティネーション組織の定義が形成され始める。次のパートは、前の3項をサポートするために重要である。
・中核的価値(Core Values)
コアバリューを持ち得ていることは、成功するデスティネーション組織の特徴であろうか。成功するデスティネーション・オーガニゼーションは価値観(バリュー)の基礎のうえに成り立っており、まさの価値観がデスティネーション組織とその取り組みを形づくっている。 そして、コアバリュー(中核的価値)は組織が活動する上での基本的な信念となる。これらはあらゆる状況において広範な指針となる重要かつ永続的な信念や理想であり、日常業務や戦略的意思決定の指針となる実践的な原則となる。これらの価値を受け入れることで、デスティネーション・オーガニゼーションは地域活性化の真の起爆剤となることができる。DIはメンバーとの広範な協力を通じて、9つのコアバリューを特定した。
(1)1つ目は情熱(Passion)である デスティネーション組織を成功に導く原動力は情熱である。情熱は、地域社会の経済的地位と活力を強化し、すべての住民に機会を提供しようという意欲をかき立てる。情熱的なプロフェッショナルは、デスティネーションの歴史、文化、コミュニティなど、そのデスティネーションのストーリーを信憑性と熱意を持って宣伝する。
(2)2つ目は認識(Awareness)であり、デスティネーションの歴史、状況、人々、発展に対する深い関心と十分な情報に基づいていることである。この意識をチーム内や関係者間で育むことが重要である。デスティネーションのユニークな側面を理解し、高く評価することは、観光客や地元の人々の心に響くマーケティング戦略を生み出し、正確で説得力のあるイメージを提示するのに役立つ。
(3)3つ目の価値は透明性(Transparency)で、ステークホルダーや一般市民に対してオープンで説明責任を果たすことであり、積極的に情報を積極的に共有し、精査されることを受け入れることで、信頼が生まれる。透明性の高い運営は、戦略や決定が理解され地域社会から支持され、協力的な環境が育まれる。
(4)次に、包摂性(Inclusiveness)である 包摂性とは地域や近隣、グループや一部の人々、歴史、文化、伝統が、組織の取り組みから排除されないようにすることである。新しい視点やアイデアを取り入れる努力は、地域社会の多様性を反映する。包摂的であることで次のようなポジティブなイメージを生み出す。
(5)これが、次の価値であるエンゲージメント(Engagement)の舞台となる エンゲージメントとは、デスティネーション内のグループに積極的に情報を提供し、耳を傾けることである。フィードバックや参加のためのチャンネルを作ることで、住民がデスティネーションのマーケティングや開発方法について発言できるようになる。参加型のコミュニティは、デスティネーション組織を支援・擁護し、観光客を歓迎する努力を支援する可能性が高くなる。
(6)前の2つの価値観に基づいて、次の価値観は協働(Collaboration)である コラボレーションとは、デスティネーション内で何かを生み出し、創造するために、ステークホルダーと協力することである。効果的な協働により、すべての努力が一致し、資源が効率的に使用され、デスティネーションとその住民にとってより良い結果がもたらす。
(7)次の価値はイノベーション(Innovation)である イノベーションとは、新しいプロモーション手法やアイデア、製品を導入することで、既成の慣習に変革をもたらすことである。デスティネーション・オーガニゼーションは、競争の激しい市場において適切な存在であり続けるために、積極的に適応しイノベーションを起こさなければならない。イノベーションを取り入れることで、訪問者にユニークで魅力的な体験を提供することが可能になり、デスティネーションは常に新鮮でエキサイティングであり続けることができる。
(8)次の価値は、今日よく話題に上るスチュワードシップである デスティネーション・スチュワードシップとは、地域社会が共有する価値観に沿った、好循環の観光エコシステムを追求し続けることである。簡単に言えば、スチュワードシップとは、観光客にとっても住民にとっても、そして現在と将来の世代にとっても、ポジティブな観光体験のことである。スチュワードシップとは、経済発展、持続可能な観光、生活の質のバランスをとることである。スチュワードとして、デスティネーション・オーガニゼーションは、環境や地域文化を損なうことなく、すべての住民が観光の恩恵を享受できるようにする。これには、資源を賢く管理し、持続可能な実践を支援することも含まれる。
(9)最後に、これらの価値観はすべて、デスティネーションで起きていることに密接につながり、関与することから生まれる最終的な価値、関連性(Relevance)につながる 地域や観光業界のニーズやトレンドに常に敏感であることは、インパクトのある取り組みを可能にし、住民と観光客の両方に響くものでなければならない。コアバリューが加わったことで、定義のもう一つの側面、つまりコミュニティの成果を特定することができる。
・コミュニティの成果(The Community Result)
地域社会の成果とは、地域社会の全体的な幸福、経済的健全性、社会的基盤に貢献し、地域社会の全体的な状況や状態を改善するものである。これは、目的、組織の根本的な存在理由、そして組織が地域社会にもたらすより大きな利益に焦点を当てるものである。数年前、DIの年次会議のスピーチで、取締役会議長のマウラ・ガスト氏は「人々が訪れたいと思う場所を作れば、私たちは人々が住みたいと思う場所を作るでしょう。人々が住みたいと思う場所を作れば、人々が働きたいと思う場所を作ることができ、人々が働きたいと思う場所を作れば、ビジネスがなければならない場所を作ることができ、ビジネスがなければならない場所を作れば、人々が訪れなければならない場所を作ることができる。すべては訪れることから始まる」と話した。ブランド・マネジメント、スチュワードシップ、投資、プロモーション、セールスを通じて、デスティネーション・オーガニゼーションは、人々が訪れ、住み、働き、遊び、投資したくなるような場所をコミュニティが構築する手助けをするのだ。
こうした定義づけの努力を積み重ねてDIはデスティネーション効果(Destination Effect」という言葉を強く打ち出している。デスティネーション効果とはデスティネーション・オーガニゼーションがその場所をデスティネーション(目的地)、つまり人々が訪れ、住み、働き、遊び、投資したいと思う場所に変え、活力にあふれたデスティネーションとコミュニティへと変革していくことである。そしてこのコンセプトによりデスティネーション・オーガニゼーションが地域社会にもたらす成果を特定することができる。目的、使命、包括的な目標、中核的価値観、地域社会の成果が明らかになったことで、デスティネーション・オーガニゼーションの定義が形作られこととなる。
デスティネーション・オーガニゼーションとは何か?
デスティネーション・オーガニゼーションは、デスティネーション・プロモーションの力を活用することで、地域社会の目標達成を支援する。
デスティネーション・オーガニゼーションは、ブランド管理、戦略的マーケティング、デスティネーション開発などを通じてブランド・マネジメント、戦略的マーケティング、デスティネーション・スチュワードシップ、地域社会との関わりを通じて、デスティネーションを促進・発展させることで、注目を集め、投資を誘致する。
デスティネーション・プロモーションは、住民の生活の質を高め、人材の誘致と確保を支援し、文化とコミュニティを育成し、公共サービスを支援し、経済全体を成長させる。そのコアバリューは、情熱、意識、透明性、包括性、エンゲージメント、コラボレーション、イノベーション、スチュワードシップ、そして関連性である。
そして、デスティネーション・オーガニゼーションは、その活動を通じて、地域社会が理想的な観光地として繁栄する環境、すなわち住み、働き、遊び、投資する理想的な場所として地域が繁栄する環境を作り出す起爆剤となるのだ。
結論
21世紀において、デスティネーション組織は単なる観光プロモーターではない。デスティネーション・オーガニゼーションは、地域社会の目的を果たす存在である。地域の活力を生み出す起爆剤なのである。デスティネーション・オーガニゼーションの活動は、観光から始まり、繁栄し、活気あるコミュニティへと至る好循環を支えている。
地域社会が前進するためには、デスティネーション・オーガニゼーションが、ディスティネーション・オーガニゼーションを通じたプロモーションを支援し、投資し続けることが不可欠である。デスティネーション組織が地域社会で知られた存在となり、住民に評価され、市民のリーダーシップによって力を与えられるようになればその成功は、人々が訪れ、住み、働き、遊び、投資したいと思う場所を創造することでより広範な地域社会の成功につながる。このような組織は、観光客と住民の双方にとって、また現在と将来の世代にとって、ポジティブな観光体験を生み出せる。
おわりに
プエルト・リコの会期4日間はあっという間に終わった。青い空と海風に吹かれ、夜は満天の星空に癒やされたが、日中は新しい知見が洪水のように押し寄せ、夜はグロッキー気味だったが、時差ぼけも幸いして目がぱっちり開いていたこともあり一日の振り返りを行った。日本のエアラインの研究機関からの参加に初対面のDMOのCEO達は興味深く色々な質問をぶつけてくる。ワークショップではとにかく発言し相手の見解も辛抱強く聞いた。DIの担当官とも昼夜を問わず語り合った。また、参加する会を重ねるごとに知己もふえ、そのおかげでわが国においても共同で事業に取り組むこともできてきている。地域における合意形成やコミットメントに焦点をあて、DMOの存在意義を改めて定義したこのサミットで得られた知見は宝の山であり、引き続き日本の読者に紹介していくこととしたい。
※メインビジュアルは、プエルト・リコ リオグランデの海岸線(筆者撮影)
寄稿者 中村慎一(なかむら・しんいち)㈱ANA総合研究所主席研究員