みなさんはコミュニティツーリズムの用語はご存知でしょうか?
コミュニティツーリズムは、コミュニティ・ベイスド・ツーリズム(Community Based Tourism)とも呼ばれます。用語の言葉としては文字通り、コミュニティ(地域)に根差したツーリズムの意図になります。(以下、コミツーと省略した言い方をいたします)
今回はコミツーを活用した取り組みの成り立ちから、具体的な活動そして今後に向けての展望を「大阪あそ歩Ⓡ」 (※以下、Ⓡを省略)を通じて述べたいと思います。
大阪を深堀・・・大阪あそ歩
筆者は2009年から2013年6月までの間、現大阪観光局勤務時に「大阪あそ歩」の事務局長業務に携わりました。「大阪あそ歩」の案内地域は大阪の主に市内となります。大阪市内のあまり知られていない伝統や文化、意外な歴史について専門家ではない市井の地域の住人であったり、その地域を愛する方達自分たちの手で「まち」の素晴らしさ、良さを研究してまち歩きコースをつくり、資料も用意して有料でガイドとなりまち案内を実施する取り組みです。
現在もこの活動は継続しており17年の月日を数えます。また、一般社団法人の組織にもなって自主運営を行っています。
「大阪あそ歩HP」( https://www.osaka-asobo.jp/)
ニューヨークのハーレムが、その先進事例!
このような地域住人が自ら活動してガイド役を引き受けて案内をする取り組みはアメリカ・ニューヨーク・ハーレムに先行事例を見ることができます。
ご周知のように、現在ニューヨークHPでも様々な観光情報が出されています。その中でも人気が高いコンテンツに「Harlem Walkig Tour」があります。人気が高くガイド役は現在は専門の方がされているかと思いますが、始めた当初は地域住人の方がいかに自分たちの住んでいる「まち」が素晴らしいかを伝えていました。このように住人ガイドが生まれた経緯についてご説明をいたします。
マイナスイメージを変えていく取り組み
第2次世界大戦後のハーレムは犯罪者や貧困者が多いといわれるまちで住む環境には悪いイメージがあったのですが、その中でもハーレムに住み、育っている住人にとってはかけがえのない場所です。何とか自分たちの住むまちのイメージを変えていきたい思いがありました。その中で少しずつ改善し、マイナスイメージを変えていくさまざまな試みがなされました。
具体的には街中の落書きを消し、ごみの放置をなくすなどのまちの美化に努めたり、治安が悪いイメージを少なくするために未然に犯罪を防ぐ自警団を組織して、まちの印象をよくする活動を頑張っていました。外から見ると少しずつイメージは改善されてきてはいるものの、実際にハーレム地区のまち中を訪れる方は少数です。少しでも多くの来訪者を増やし、まちの良さを見て、体験して感じるように考え出された手法の一つとして、住人ガイドによる、まち案内が始まりました。コミツーの揺籃期です。
この取り組みは評判がよく、安心してまちを案内付きで歩ける。歴史的な建造物や歴史的な出来事が分かりやすく解説される。そのようなメリットに気づき人気を呼んだわけです。おかげでハーレムへの印象が少しずつ変わり始め、先述のようにニューヨーク観光の強力な目玉となったわけです。
地域に合わせ、学び成長していく
「大阪あそ歩」のガイドさんたちも、案内したい地域に愛着を持ち、歴史的な建造物や出来事をわかりやすく解説を交えて案内します。参加者からは「知らない歴史を知ることができた」とか「今まで通っていたまちが違って見えた」との感想が事務局には寄せられていました。
このような取り組みは当時の観光庁からも評価され「観光庁長官表彰」を受賞いたしました。この活動で、地域住人が主役となり、地域に愛着を持っている方達の「地元愛」が参加者に伝わり、地域に住んだり、関係していることに自信を持つことによる「シビックプライド」の醸成にもつながりをみせます。
そして、この活動は広がりを見せ、150コースのまち歩きが2011年には3分冊の本として刊行されました。大阪市内の書店でも販売され完売したのはまち歩きブームのきっかけにもなったと思います。次回も引き続きコミツーについてお話したいと思います。
(つづく)
これまでの寄稿は、こちらから(https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=4866)
寄稿者 梅阪雅雄 合同会社GO-ON 代表