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「Opportunity」機会つかみ再構築|シンガポールLCC スクートCCO カルビン・チャン氏

コメント

どうする!?コロナ後、日本戦略

――コロナ前とコロナ後の市場の変化について。

 SCOOT(スクート)に関して言うと、コロナ期間中における最低限の収益や、各期・マーケットのカギとなる市場への接続は維持してきた。市場全体では、キャパシティの急速な回復が進んでおり、需要に先駆けた対応が行われている。コロナ禍でたまっていた需要は、各国が国境や規制を開放する中で確実に帰ってきている。われわれは、この需要を素早くつかめている。

コロナ禍でも市場への接続を維持してきたSCOOT(スクート)
コロナ禍でも市場への接続を維持してきたSCOOT(スクート)

――スクートの路線の回復はどうか。

 今日現在、日本への運航便数は週25便となっている。因みに、コロナ前である2019年6月には週37便を運航していた。これは運航頻度の話であり、座席のキャパシティについては、2023年6月時点で、2019年6月比で90%まで戻している。

 座席のキャパシティが増えている理由として、コロナ前になかった新たなシンガポールと東京間の直行便が導入されたことが大きい。シンガポール~大阪間についても、キャパシティを拡大しており、シンガポール~札幌間についても、台北経由の便ではあるが、週4便を運航しており、堅調と言える。

 日本向けの路線では、まだ回復できていないものもあるが、徐々に回復させていきたい。

――回復に向けての課題は。

 キャパシティ、運航頻度の両面に関わることだが、現地における人手不足、リソースの問題、オペレーションの問題がある。これは解決されれば、早期の復活につながる。

――旅客数は堅調だと聞く。

 まだ、キャパシティは完全に回復できていない状況ではあるが、旅客数の観点から言うと、2023年6月は2019年6月を超えてきている。

 コロナ禍で行き場をなくした需要がたまっており、日本路線に関しては、インバウンドが中心となり支えている。アウトバウンドについては、コロナ前水準までまだ戻っていない。

2023年6月の旅客数は、2019年6月を超えると話すスクートのカルビン・チャンCCO
2023年6月の旅客数は、2019年6月を超えると話すスクートのカルビン・チャンCCO

――アウトバウンドでは、どういった層が戻っているか。

 日本マーケットでは、販売チャネルから見ると、募集型企画旅行のお客様よりも、FITの方が回復が圧倒的に早い。恐らくだが、旅行リテラシーの高い方の動きが活況であり、国内では円安や国による支援がある中で海外旅行が選択肢として上がりにくい中、旅行への考え方がハングリーな方は海外に出ている印象がある。

 お客様の年齢層については、コロナ前とあまり変わっていない。

――今後のLCC市場について。

 LCCは、始まってから長い歴史ができてきたなと感じている。世界で飛んでいるキャパシティの30%をLCCが占めるようになっており、アジア・太平洋地域についても同様だ。2008年時点では14%ぐらい、1998年の段階ではほぼゼロだったことを考えると、かなり増えている。

 時間がたつにつれてLCCが受け入れられていると言える。すでに、LCCというビジネスモデル自体が成熟されつつあり、お客様の期待値、期待感も変化しつつある。

――LCCに期待されているものとは。

 LCCを運航する会社は、以前と比べてかなり顧客志向が強くなってきている。以前は、とにかく余分なものは全部省いたノンフリル型のサービスが中心だった。例えば、A地点からB地点に行くためだけのものだった。

 私が90年代に学生だった時、LCCであったイージージェットを利用した。飛行機に上がるにも橋がなく、自分たちで上がらなければならないほか、前もっての座席の割り当てがなく、自分たちが飛行機に向かっていかなければならなかった。また、座席指定がなかったことから、人がわれ先にと乗り込み、自身で確保した席の上に多くの荷物を置いて場所取りをする状態だった。

 今は、LCCであっても、業界を大きく変革できる機会に恵まれてきている。顧客体験をより高めることができるようになるほか、価値提案もてきるようになってきた。

 スクートでは、あまり時間がたっていない現代的な機体を使用している。平均で6年強であり、これは業界の半分以下の使用期間である。こういった戦略を提案することで、より快適な顧客体験を提供できている。もう一つ、燃費が優れていることも付けくわえておく。

――ネットワークについて。

 ネットワークは、70以上の行き先があり、これはコロナ前よりも増えている。コロナ期間中でも、①韓国・チェジュ島②インドネシア・ロンボク島③インドネシア・マナドーへのルートが増えている。シンガポールからその先について切れ目なく体験していただけるようになっている。また、入国審査や手荷物の回収、再チェックインの際などでも切れ目のないサービスを提供している。

スクートのネットワーク(行き先)は70以上に
スクートのネットワーク(行き先)は70以上に

――他社との差別化は。

 以前から多くのLCCは、広告を打つ際は運賃の安さをアピールしてきた。ただ、ウェブサイト上で航空券を購入する際は、最後のページに到達したところで購入する仕組みとなっており、最後のページで初めて燃油サーチャージや税金などが追加表示されている。これは、お客様の期待や信頼感を損なうものだ。

 われわれは、広告の表示価格に全てが含まれるオークインクルーシブの形を採用している。例えば、燃油サーチャージも顧客に対してのチャージはしていない。税金というところも透明性をもって広告で出している通りの価格を提供している。

 2019年6月以降はクレジットカードの決済手数料についても、負担いただかない形に変えている。そういった観点からも、広告で謳っている価格を透明性を持って提供しているし、そうあるべきだ。

――今後の市場を勝ち抜くポイントは。

 1点目は、われわれのネットワークが充実したものでなければならない。つまり、お客さまがいろいろな地点に接続できる広範囲のネットワークを持たなければならない。

 2点目は、強力な販売を持つこと。他のLCCも保有する直接的なチャネルや、モバイルアプリ、ウェブに加えて、われわれは業界パートナーとかも活用することで、より多くの顧客層にリーチしていく。

 3点目は、マーケットにおけるブランドの認識をしていただくこと。コロナ後は、日本を含むキーマーケットでブランドを刷新しており、いろんなメディアで露出している。日本では例えば駅での広告も活用している。非常に費用は掛かるが、日本のような重要な市場では重要な施策であり、長期的な存在感の構築につながる。

 また、新たな規範の中で勝ち抜くためには、顧客体験が重要だ。スクートのリピート顧客として何度も乗っていただきたいことから、オペレーションは卓越したものでなければならず、信頼性、効率、時間といったことをしっかり守っていく。

 その一方で、安全性を犠牲にすることなく、顧客体験を充実化することが重要となる。コスト管理についても、規律を持たなければ、結局は運賃に反映されることにつながるので、対応を重視している。

――2023年のスローガンを。

 「opportynity(機会)」という単語で表したい。コロナ禍でたまった需要の消化は堅調に続く。あとは、LCCがどういったものかを再定義する機会に恵まれる1年にもなる。これはLCCのあり方であったり、お客様のLCCに対する認識を再構築できる機会になる。

 マーケットに対しては、われわれが改めてどういった存在であり、どのようなプロダクトがあるのかなど、価値提案をし、他社との違いも明確に示していきたい。

――スクートが日本地域に対して世界一といえること。

 どこか一つの分野で飛び抜けていると言うことでなく、いろいろな分野で他社より少しずつ良くできていることが強みだと言いたい。例えば、荷物の荷重については、多くのLCC採用する7キロではなく、10キロを採用している。

 また、なるべく非接触型のものを採用し、お客さまが効率良くセルフサービスでいろいろな体験ができるようにしている。顧客体験の充実化は、世界的に評価されており、3年連続でワールドベストロングホールローコストエアラインの賞もスカイトラックスからいただいている。

 われわれのやっていることは正しいと証明されており、今後も持続、進化していく。

飛躍を誓うスクートのカルビン・チャンCCO(左)と比留間盛夫日本支社長
飛躍を誓うスクートのカルビン・チャンCCO(左)と比留間盛夫日本支社長

聞き手 TMS編集部 長木利通

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