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越境ECで事前にどこまで準備すればよいのか

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 先月は、プロローグとして斜陽産業で、しかも英語もダメな人が、一念発起して越境ECに取り組んだ結果、同業他社でも知り得ない世界を開拓し、成功しているという話をいたしました。

 この12回の一連のコラムに通底するテーマは、「不安からくるゼロリスク思考のために、知識先行で安心できるまで動かない人より、知識などそこそこに、まず動くことを優先する人が成功する」という「知識より意識」です。このシリーズをお読みいただき、マインドセットを変えられることを期待しています。

 今回のテーマは「事前準備はどこまですればよいのか」です。感の良い方はもうお気付きかもしれませんが、用意周到を心掛けるのではなく、ある程度の、適当なところで準備は切り上げて、どんどん前へ進みましょうということをお伝えします。

 万が一とは0.0001%であり、カレンダーで言えば1万日に1日あるかないか。1万日とは約27年です。元巨人の槙原寛己選手からロッテの佐々木朗希選手まで約28年間完全試合はありませんでした。広辞苑では「ないに等しい」と書かれています。そのくらいレアなことです。そんな程度のリスクについて1週間も1カ月も考え込んでいたら、スピードの早い海外の企業に負けます。リスクは可能性の話であり、デンジャラスではないのです。デンジャラスだったら私も勧めませんが、リスクなら理解した上ですぐ歩きましょう。前に向かって。

どこの国・エリアに売るべきか

 訪日観光客で賑わう企業などであれば、すでに良いデータを持っていることになるので、この時点である程度売りたい先を決めている場合もあると思います。

 では、そうしたデータがない場合どうするか。

 私は「まず全世界をターゲットにし、色々試して次の戦略を考えましょう」と言っています。

 行き当たりばったりと言われればそうかも知れませんが、実はこの考え方のほうが、理にかなっていてスピードも早く、リスクも軽減できる策だと思っています。

 例えばあなたが多摩川の水の流れを完全に把握していて、季節ごと、時間ごとに集まる魚の種類も知っていて、完璧な釣りができるとしましょう。しかし、その知識でアマゾン川でも同じことができるでしょうか。

 警察が犯人を追う時に当てずっぽうで捜査するでしょうか。確信が持てるまでは地道にローラー作戦でじわりとターゲットを追い込むでしょう。

 越境ECは現地法人を作るわけではないので、ローコストです。地球ごとターゲットにできるなんて贅沢なことができるのですから全世界をターゲットにすべきです。周りが気づいていない市場で第一人者になれるかもしれません。なってしまったらもう勝ちです。ライバルは追いつけません。

 また、特定の国で戦争やテロが起きたら、その国に向けてはしばらく越境ECができません。そういうリスクを考えたら全世界に網をかけておくほうがリスク回避にもなるのです。この考え方に納得できず細かい指示の多い、なんでも段取り上司がいたら、その人は海外ビジネス文化を知らない人ですから国内ビジネスに専念させましょう(笑)。

みんなが不安、関税や外国政府の許可、物流はどうするのか

 かといって、何でもかんでもやみくもに突っ走れとは申しません。不安に感じる箇所は解消させましょう。

 その筆頭が関税、外国政府の許可や物流などでしょう。

 まず関税ですが、「お客様は神様です」と言った感じの売り手が買い手に対して下手(したて)にでる文化が根強い日本ですと、負担してあげなきゃいけないのでは?という意識が働いてしまうかもしれません。

 しかし、「関税は買い手が負担するもの」だという考え方が世界では一般的です。企業同士の貿易などでは、輸入者に納税義務がありますので、それにならっているからです。

 これだけでも、もうほとんど考えなくていい分野ですから気が楽になったことかと思います。

 さらに、関税にはデ・ミニマスという、関税がかからない基準値というのが国ごとにあり、その基準値以内の商品であれば、関税がそもそも掛かりません。アメリカなら800ドルまで無税ですから、多くの事業者は気に病むこともないでしょう。このデ・ミニマスはJETROのサイトで調べられますので、見てみてください。

 次に、外国政府の許可や認可ですが、これは微妙な問題です。

 BtoBの場合ですと、仕入れた企業や人が、その国で流通させるので、それぞれの国の許可を取る必要が出てきます。食品、化粧品、医薬品類、電化製品などは特にです。

 しかし、BtoCの場合、購入者は自己消費目的であり、購入者以外の人の手に渡るわけではないので、あくまで購入者の自己責任であり、その場合、外国の許可などは必要ない場合もあります(国によります。また、たとえ個人消費目的でも量が多すぎると貿易と疑われて通関しないこともありえます)。

 また、酒類、冷凍・冷蔵品は送れる国が限られますので、事前に送れる国をチェックしておきましょう。これらは物流業者さんに問い合わせれば回答してくれます。

 最後に具体的な輸送方法をまとめます。

 越境ECでは日本郵便か、FedEx、DHL、UPSなどの代表される、国際クーリエというものがあります。ここに挙げた大手クーリエは欧米の企業ですが、その他の国の企業でもクーリエはありますので、様々な企業と打ち合わせをして料金表を入手されることをおすすめします。

※日本郵便のeパケットは今秋廃止が決まっています。

 今回は、多くの方が時間を無駄にかけすぎてしまう部分や不安に感じる分野を簡単にまとめ、気に病むことなく気軽にできるということを書きました。次回は、具体的にどういった進出形態があるのかということを2回に分けてお伝えいたします。

寄稿者 横川広幸(よこかわ・ひろゆき)ジェイグラブ㈱取締役

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