イギリス・ロンドン大学が運営するMBAスクール「ロンドンビジネススクール(LBS)」とANA総合研究所(ANA総研)は2025年2月26日、観光庁を訪れ、観光地域振興部の長﨑敏志部長、竹内大一郎観光資源課長らに訪日観光案のプレゼンテーションを行った。LBSからは、昨年末に日本人生徒を中心とした組織「Japan Club」が「北陸地域の震災・豪雨からの復興を観光で後押しするアイデア」をテーマに企画した「ビジット・ジャパン・マーケティング戦略コンペティション」の優勝チームから4人が参加。事前の北陸現地調査で感じた訪日誘客への課題を指摘するほか、主要な施策として北陸の海の幸と日本酒などを紹介するインタラクティブ・マップの活用などを提案した。同日には全日本空輸(ANA)の訓練施設でもプレゼンテーションを行った。

LBSのビジット・ジャパン・マーケティング戦略コンペティションは、メインスポンサーとなるANA総研とともに協議を重ね、昨年末には最終選考会をロンドンで開催された。参加者は、優勝したケンブリッジ大学のジャッジ・ビジネススクールのチームなど35チーム、132人。最終選考には6チームが進んだ。優勝したケンブリッジ大学のジャッジ・ビジネススクールは、北陸の海の幸や日本酒の魅力を最大限に引き出すインタラクティブ・マップを提案。ユーザーが自分の興味に合わせて観光プランをカスタマイズでき、マップから直接予約サイトに遷移したり、訪問した場所のレビューを他のユーザーと共有が可能になる施策を設計した。
優勝チームは2月24日から訪日し、実際に北陸地域を訪問。石川県加賀市長を表敬訪問してアイデアを披露するほか、石川県の北前船の里資料館や九谷焼美術館などの視察、能登半島地震に関する講話を聞いたりした。
英語表記や情報発信が少なくインタラクティブ・マップの活用で課題解消を
意見交換では、長﨑部長から加賀市を訪れて感じたことを尋ねられた優勝チームのメンバーが、英語情報の発信や表記が少なくベジタリアンのメンバーが何を食べられるか悩んだこと、金沢は有名で東京、京都、大阪に継ぐ「第2グループ」となるが、視察で訪れた美術館などは今回のように同行者がいなければたどり着くのは難しいと指摘。また、北陸地域が豊富な資源を持ち、良好なアクセスを有しているが、訪日外国人旅行者数が格段に少なく、情報の不足と認知度の低さが「マスト・ビジット」な観光地としてみなされていない原因として挙げた。

メンバーは課題の解決手段として、北陸地方を外国人旅行者の「地図に載せる」ための包括的なマーケティング戦略策定の必要性を訴えた。具体的には、滞在期間が長くて観光消費額が高いヨーロッパからの旅行者をターゲットとして、空間データや位置データを活用して情報を伝えるインタラクティブ・マップの活用のほか、SNSキャンペーン、OTAや交通事業者との連携、レビュー・ハッシュタグキャンペーンといった施策の展開を提案した。

竹内課長はインタラクティブ・マップに何を書き込むべきかを質問。メンバーからは、価格や内容などを交えた北陸地方のおすすめの海の幸・日本酒スポットや、今回の調査で訪れたような厳選された旅行ルート、交通手段の選択肢の提供などの意見が上がった。このほか、世界のどこにでもあるインターナショナルホテルチェーンと異なる日本独自の体験ができる旅館体験の独自性を挙げ、OTAや情報の提供など予約の動線を分かりやすくことで誘客、顧客満足度の拡大につながる可能性が述べられた。竹内課長は、「皆さんからの提案を参考にしながら、認知度を上げることなどの取り組みを進めていく」と返答した。
約130人のANA社員とも意見交換

同日には、ANAの訓練施設「ANA blue Base」でも同様なプレゼンテーション、ANAグループ社員との意見交換が行われた。ANAグループからは会場に約20人、オンラインでは105人が参加。ANA社員から「北陸を訪れる外国人のなかで、イタリア人が比較的に多いとのことだがなぜか」の質問が上がると、メンバーから「イタリアではSNSでの拡散がとくに盛んで、それが効いているとおもわれる」といった声が上がった。

ケンブリッジ大学のジャッジ・ビジネススクール 訪日メンバー
宮浦広樹氏、シン・ウエイ・ホウ氏(台湾)、アイリス・チャン氏(香港)、サガール・カクシウ氏(インド)
※宮崎太郎氏(ロンドン・ビジネス・スクール〈幹事〉)
取材 ツーリズムメディアサービス編集部