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日本旅行業協会「カスタマーハラスメントに対する基本方針」策定 離職防止策としても重要

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 一般社団法人日本旅行業協会(JATA)は、このほど「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を策定し、会員各社に発信した。発信日は3月12日。

 カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)は介護や医療現場で多発していると報告されている。ただ、旅行業界でもかねてから懸案となっており、カスハラを防止し、就業者を守る対策が深刻な人手不足が続く中で離職防止の決め手の一つであるとの認識も示された。基本方針の中で「従業員」と記載せず、「就業者」との表現を用いたのは、旅行業界は多くの派遣添乗員やフリーランスが従事しているほか、小規模な会社の場合、経営者自らが顧客対応をしているからだ。そのため業務を行うすべての者を指し「就業者」としたという背景があるからだ。

アンケートを実施、約 10%の会社が対応を迫られた

 基本方針の策定に先立ち、JATAは会員会社の経営者にカスハラ対応の状況や取り組みの実態に関しアンケートを実施(2025年1月14日~2月7日)した。 241 社から回答を得た結果、約 10%の会社が対応を迫られたことが明らかになった。主に「コールセンターなどの電話応対業務」「店舗等接客業務」「添乗業務」の場面で多く発生していたという。

経営層による現場のカスハラ実態把握が重要

 一方、各設問に関し4%から 9%の間で「把握していない」「わからない」という回答があったことも分かった。こうしたことから、カスハラ対応について社内で体制を整備するにあたり、まず、経営層が自社の現場の状況をヒアリング、把握することが何より重要といえるとしている。JATAでは、今後作成を予定している「カスタマーハラスメント対応モデル・マニュアル(仮称)」に会員会社の要望を反映させるためにアンケートを行ったとしている。

 JATAが例示したカスハラの対象となる具体例は11項目。その一部を記すと以下のようになる。長時間にわたり就業者を拘束や長電話で会話、通常業務に支障を及ぼす過度の追及をするなどだ。

SNSやインターネット上での誹謗中傷も

 また、SNSやインターネット上での誹謗中傷のようにネット社会を象徴するような問題行為も挙げている。市町村などの窓口では、担当者が付ける名札を名字だけにとどめ、漢字ではなくひらがな表記にする、顔写真の廃止など対策が講じられている。名札を撮影され、SNS上で名指しで非難されるなど個人情報の暴露や攻撃があるからだ。

 従来から企業に対し、労働契約法第5条によって、従業員の安全配慮義務が定められているが、国としても2024年12月26日には 厚生労働省・労働政策審議会が新たな方針を示した。また、東京都はカスタマー・ハラスメント防止条例を制定し、2025年4月1日から施行する予定だ。

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