東京商工リサーチは3月24日、2024年「自己資本比率分析調査」を発表した。自己資本比率が50%を超える企業は44.0%に達し、2020年から4.2ポイント上昇した。
一方で、債務超過の企業は13.7%と0.8ポイント増加し、過去5年で最悪の水準となった。物価高や原材料費の上昇を背景に、企業の財務内容の二極化が進んでいる。
宿泊業の自己資本比率(中央値)は17.1%で、業態別で唯一20%を下回った。次いで、飲食店21.1%、電気業21.3%、洗濯・理容・美容・浴場業24.8%と続く。

エネルギーや人件費などのコスト上昇で打撃が大きい業種、参入障壁の低い業種で自己資本比率が低い傾向にある。設備投資負担の大きい業態であることに加え、コロナ禍で蓄積した借入依存の解消が進んでいないことが要因とみられる。
感染症の影響で経営が悪化した宿泊施設は、政府の支援策や金融機関からの融資で運転資金を確保したものの、観光需要の回復後も収益改善が追いつかず、財務の健全化が進んでいない状況が続いている。
宿泊業界はインバウンド需要の回復を追い風に、稼働率の改善が進んでいるが、人件費やエネルギーコストの上昇が収益を圧迫している。特に、都市部の大型ホテルよりも地方の中小規模の宿泊施設で厳しい経営が続いており、過剰債務を抱える企業の割合が高くなっている。円安の影響で訪日外国人の宿泊需要は増加しているものの、国内旅行市場の伸び悩みもあり、業績の回復ペースにはばらつきがある。
調査は、東京商工リサーチが保有する財務データをもとに、2023年9月期から2024年8月期を最新期とし、5期連続で財務データの比較が可能な企業を対象に分析した。