前回は、観光振興が発地から着地への変化や観光協会の有無などに焦点を当て、継続的な取り組みとしての町歩きの重要性を述べてきた。今回は、東京23区の予算(特に観光予算)ついて考え、将来に向けた「あり方」を検討してみたい。
(前回記事は、こちらから)https://tms-media.jp/posts/311/
5.隣り合わせの区、これだけ違う観光予算
観光の持つポテンシャルは、「地元の宝物の価値向上」「地域消費の拡大」「将来を見据えた地域蓄財」と前回も述べた。しかしながら、そのことは、地域に住む人々には、なかなか理解されない。
以下の表をご覧いただきたい。
東京23区の隣り合った区である文京区と荒川区について、観光目線で比較検討したい。両区は、東京中心部の北に位置し、面積や人口がほぼ等しい。また、総予算も等しいと言える。しかし、大きな違いは、観光に関わる予算と観光協会の有無である。
今回、両区の予算書を精査すると文京区(約3.1億円)荒川区(約0.8億円)と観光予算に大きな開きがある。文京区には、一部、観光協会への助成金(約1.4千万円)があるが、その差は大きい。
6.知名度のある観光コンテンツの有無は、重要なこと!?
観光協会の有無は、その自治体が観光に力を入れていることの現れと言える。交流人口を拡大し、収入を得る。そのためには、自治体内にどれだけの観光コンテンツがあるかが、まず一つの要因となる。
例えば、文京区には、江戸時代から続く大名庭園(六義園や小石川後楽園)や名立たる神社(湯島天神や根津神社)がある。そして、東京ドームという野球場や遊園地といった複合的アミューズメント施設を保有している。
一方、荒川区には、都電や隅田川、日暮里繊維街などが観光コンテンツであるが、万人に受け入れられるものとは、なかなか言い難い。
つまり、保有する観光コンテンツの知名度が、全国区と言えるかどうかが、一番重要なことではないだろうか。そして、全国区の観光コンテンツを保有することによって、観光に重きを置くか、置かないかにつながってくるのである。しかし、まだ磨き切れていない原石は、素晴らしいダイヤモンドに変換できる可能性を秘めている。
荒川区の観光コンテンツである都電や隅田川は、移動手段としての二次交通となる。同時に近隣自治体との広域連携の手段にも利用できる。また、日暮里繊維街は、日本人だけでなく、訪日外国人も買い物に訪れる場所でもある。すなわち、告知・宣伝の仕方によって、一気にお客様が増えるのである。