1978年からディスティネーションキャンペーンは始まった。国鉄が新たな観光地開発のために生まれた。そして、国鉄民営分割化後もJR6社が競い合い、新たな観光地、コンテンツの開発を進めている。また、旅行会社もキャンペーンに際し、JRの列車を輸送手段とした商品を造成する。その結果、当該地域への送客拡大する仕組みを作ってきた。
北陸圏は、古くから関西圏の主要観光地と言われてきた。冬場になると、真っ赤なカニのパンフレットが旅行会社の店頭に並ぶ。一方、首都圏から北陸圏への旅行は航空機一辺倒だった。それ故、JR東日本の関わるコマーシャルには、北陸3県の観光地は皆無だった。特に、福井県は首都圏在住者にとって、すごく遠い土地となっていた。
しかし、その状況が一変する。2015年に北陸新幹線が金沢駅に延伸開業。すると、北陸3県も首都圏からのお客様の波が広がる。また、2024年の敦賀駅延伸によって、福井県観光の首都圏マーケット入りに拍車がかかった。
おそるべし、福井県観光
福井県は恐竜王国と言われる。また、勝山市の恐竜博物館や曹洞宗総本山永平寺、東尋坊などが全国的に知られる観光地だ。しかし、JR東日本のCMに吉永小百合さんが、とある寺院にたたずむ姿が映し出される。そこは、勝山市の白山平泉寺(はくさんへいせんじ)であった。これまで、団体バスツアーでも立ち寄ることがなかったお寺は、人気を博し新たなブームが生まれた。
日も暮れかかった頃、本堂に西陽があたる。すると世にも稀なる姿が現れた。観光客は、四六時中その場所を見ることはできない。それ故、たたずむ一瞬が、その観光地の良し悪しを決めてしまう。
観光とは、その瞬間にいかに同化し、出会った奇跡を自分だけの最良のものにつづることだ。そう考えると、まだまだ奥が深く、可能性を創造できる仕事になるのだろう。
(2016.03.27.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長