このたび写真俳句を隔週で皆様にお届けすることになりました。写真俳句とは写真に俳句を添えた表現であり、俳句の世界では伊丹三樹彦氏がその先駆者とされています。まだ確立されたジャンルではありませんが、私は写真と俳句の両方が好きなので国内外でその魅力を広める活動を続けています。
昨年(2024年)は東京都美術館や松山市の正岡子規記念館をはじめ、福岡、小倉、名古屋などで写真俳句の展示を行いました。今年はさらに海外へと視野を広げ、英訳や韓国語訳にも挑戦中です。6月にはクロアチア・ザグレブでの展示も予定しています。この連載を通じて、皆様に写真俳句の魅力をお伝えできれば大変嬉しく思います。
延命を望まぬ母と花月夜
母が旅立ってから、もうずいぶん時が経つ。それでも、あの夜の光景は今も鮮やかに心に焼き付いている。母と二人で桜の季節に愛知県犬山市の博物館明治村を訪れた。母は末期癌を患いながらも、穏やかな笑顔を絶やさなかった。延命治療を望むことなく「自然がいいのよ」と 静かに言った。月の光に照らされた花びらは、静かに風に揺れ、まるで母の生き方を映しているかのようだった 私は母の横顔をそっと見た。月明かりに照らされたその横顔は、とても美しくどこか儚げであった。