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脱炭素とツーリズムの融合が創る地域の明るいミライ

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ウニサミットに参加して

 7月18日(土)岩手県洋野町で地元のウニ加工会社北三陸ファクトリー、(一社)MOOVA 主催による「ウニ サミット」が開催され、全国各地はもとよりオーストラリア、イギリスなどから集まった各界の専門家90人余の皆さんとディスカッションや交流を楽しんできた。

 陸上における自然環境保全や再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)施設の増加に比べると、海における「藻場(もば)の喪失」と「CO2 吸収力(ブルーカーボン)の低下」については、まだまだ一般社会では問題の深刻度に対する認識は浅いと言わざるを得ない。そして、藻場の喪失や磯焼けという海の砂漠化の原因の一つに言われているのが、何でも食べ尽くしてしまう海のギャングことウニの存在である。

 ブルーカーボン回復のため、藻場を再生する方策として考え出されたのが、ウニを捕まえ海中の生態系バランスを回復しつつ、捕獲したウニを陸上の水槽と人工飼料で飼育して実入りをよくした上で海外へ輸出するという社会貢献型のビジネスプロジェクトなのである。

 風光明媚な太平洋沿岸で美味しいウニ料理とお酒をご馳走になりながら、ふと頭に浮かんだのは「何故、この場にツーリズム関係者が(過去経験者の小生を除けば)一人もいないのか?」という素朴な疑問と少々残念な気持ちであった。

本当は相性が良い?脱炭素とツーリズム業界

 本年4月、62歳にして全く土地勘のない再エネ企業に入社して 4 カ月弱の新米の身ではあるが、過去ツーリズムの世界にいたからこそ感じられるのが、この2つの業界がお互いの補完性、共創力を活かして垣根を取り払ってコラボしていけば、地域のためにお役立ちできて、ビジネスチャンスとしても多くの可能性を秘めているとの直感である。

 脱炭素の取り組みは日本はもとより、世界全体で考え、取り組むべく地球サイズの社会課題であるが、一方で適切な政策と民間の力を組み合わせれば、地域おこしや災害時対策、現地の雇用増加、さらに地域や地元産品の信頼ブランド化につなげることで、ethical消費者(環境保全や社会貢献に感応度の高い消費者層)ひいては旅行者や交流人口増加につなげることができるのである。

 弊社(㈱レクスポート)でも、鹿児島県いちき串木野市にてグループ会社である合同会社さつま自然エネルギーが「環境維新のまちづくり 薩州自然エネルギー工業団地事業」が評価され、2013年度新エネ大賞において最高賞の経済産業大臣賞を受賞した。今も地域のクリーンな発電所として、地元に定着している成功モデルだが、旅行者や交流人口増加までは実現できていないのが現状である。それは当然と言えば当然でツーリズムのプロが計画段階から関わっていない中で、旅行者誘客のスコープまで共有、実行に移すことは困難であろう。

 何故、そんなもったいない状況が日本各地で放置されているのか? 問題の所在は比較的、シンプルな気がする。

①  お互いの業界の仕組みや過去のビジネスモデル、用語等が違い過ぎて、コラボできる余地の存在に気付けないでいたこと

②  「地域おこし」行政ひとつとっても、観光でいえば観光庁主導の DMO(観光地域づくり法人)、食・農でいえば農林水産省の「地域食農連携プロジェクト推進事業」、再エネで言えば環境省による「脱炭素先行地域」、さらに総務省による「地域おこし協力隊」といった縦割り行政に基づき各団体が動いている。本来、この縦割りを包摂・統合して地域の復興、活性化のために推進していくのが地方自治体の役目であろうが、過去に例を見ない取り組みを地方自治体と職員にだけ押し付けても無理があろう

③  過去、太陽光発電業界で言えば、政府による FIT(固定価格買取制度)を利用して「とにかく作ればもうかる」という単純な発想で突っ走ってきたこと。旅行業界についてもSDGsの必要性は声高に言ってきているが、脱炭素のように緊急度の高い問題にフォーカスした努力が顕著であったとはいえない

脱炭素とツーリズム業界が創り出す地域の明るいミライへの示唆

 太陽光発電所の設置が美しい自然景観を著しく害したり、不適切な傾斜地に設置して土砂崩れ等の災害を引き起こす可能性についてはわれわれ業界としてしっかりと自制していかなければならない。一方で、日本全体として再エネ比率を更に加速しなければならない現実にあって、住民やツーリストからも共感を得られる設置という観点を提唱したい。

 人工の構造物は美しい自然景観に全くそぐわないのか? ヨーロッパにある昔からの水車や風車も発明当初は「最新のエネルギー転換動力」という最先端技術であったはずだが、美しい景観を自然と共になしている。日本でも山間を走る蒸気機関車や海外線を走るディーゼル列車が景色に溶け込んでいることを否定する方はいないであろう。要は、そこにある人工物が自らの個人的体験(心の自分史)にひも付き、またその役割も正しく認知できたときに人工物も自然と人間の共生のピクチャーとして受け入れてもらえるのだと思う。

「そんな観念論でわからない!」「具体的に何やるんだ!」というお叱りも受けるかと思いますが、だいぶ長くなりましたので、その答えは次回の寄稿にて報告させていただきます。

7月18日(土)岩手県洋野町で開かれたウニサミットの様子

寄稿者 江利川宗光(えりかわ・むねみつ)㈱レクスポート 環境エネルギー本部副本部長

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