漆黒の闇に透き通った光を放つクラゲ、昨今、クラゲを展示する水族館が増えている。ここ山形県鶴岡市にある加茂水族館は、2012年にクラゲの展示種類が世界一と記録され、ギネスに認定された。その歴史は古く、1930年に湯野浜温泉の組合が開業したものである。庄内地方を代表する温泉地、集客拡大のために水族館を開くという気概を感じる。
かつての建物は、あえて見学しようという気持ちが生まれない何の変哲もないものだった。そのため、地域行政を巻き込みながら、営業スタイルが紆余曲折を繰り返していた。しかし、2014年にディスティネーションキャンペーンの開催が決まると、「クラゲ」に特化した水族館に舵を切ることにする。
唯一無二のモノ・コトを研き、次なる一手を
クラゲ展示館である新館は「クラゲドリーム館」という名称だ。その中でも、直径5mの大水槽にゆらゆらと泳ぐクラゲ、その数一万匹。半透明な姿は幻想的な宇宙空間のようだ。たった一つのコンテンツでも、特化することによって誘客拡大につながる。その好事例であり、水族館の努力は、学ぶことがふんだんに存在する。
国内いずこにも、動植物を集めたハコモノが作られてきた。そして、金太郎飴のように、同じ展示方法や変化のない土産がならぶ。訪れる人々は、「今自分はどこにいるのだろうか」「この前も見た気がする」といった錯覚に陥る。その結果、来場者数が大幅に減少し、経営危機となる。しかし、それを打破したのが、「行動展示」であった。今では、全国各地で、唯一無二の動植物をテーマにした館が増えてきた。人気の観光コンテンツとなっているが、過当競争は否めない。リピーター獲得のための次なる施策を考えねばならない時期かもしれない。
(2015.09.13.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長