旅行商品には、特許がない。集客力が高く人気ツアーとなると真似されることが少なくない。そのため、旅行会社各社は、独自企画を創造することに余念がない。
青森県弘前市は、弘前城公園を中心に日本有数の桜の名所。市役所に桜に関する部署も存在する。そのミッションは、桜の剪定をはじめ、桜をいかに素敵に見せるか、努力することと言われている。また、春の桜だけではなく、秋のリンゴの季節には、紅葉も素晴らしい。
さて、公園の頂きには、弘前城天守閣が置かれている。現存する12の天守閣の一つである。維持管理する調査で、天守台を支える石垣が膨らみ、崩落に危険があることが判明した。そのため、2015年に石垣の修復のために曳屋が行われた。曳屋とは建物を一切壊さず移動することだ。その結果、天守は70mほど天守台中心部に移された。石垣の修復には10年の歳月を経ることとなったが、既に2024年12月に終了。2026年度中に、天守は元の位置に戻る予定だ。
イベント開催を起爆剤に
中心部に移った天守は、まさしく、海の真ん中に浮ぶお城だ。そのため、ディスティネーションキャンペーンに際してイベントが計画された。青い海原に浮かぶ白いお城に、岩木山が夕暮れには、シルエットとなっていく。夏休みも終わった9月の観光客掘り起しを目的に開催された。
日本人の観光は、子どもの休みに影響されることが多い。また、社会人の長期休暇も盆暮れが中心だ。そのため、旅行時期を平準化させることが大きな課題となる。国が進める「ハッピーマンデー」は、一定の効果はあったと言われている。しかし、それ以外の週末や平日は、より閑散期となっている。
今や、お客様が直接、交通機関や宿泊施設を予約できる時代。旅行会社が実施するイベントも集客が伴わない。しかし、観光業界全体を潤すためには、起爆剤は必要である。平準化の問題とともに、難しい課題である。
(2016.09.16.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長