野沢菜発祥の地である野沢温泉は、大規模な野沢温泉スキー場を持つ全国でも有数の温泉地。自治体名に「温泉」とつく珍しい村でもある。大小の旅館や民宿、ペンションなどが、老若男女の来湯を待っている。そして、湯治客は、良質な温泉を求めて年間通じてやって来る。また、冬場のスキー客は、夜になると村内を闊歩する。
村内には13の外湯がある。その中でも大湯や麻釜(おがま)が代表的なものだ。そして、観光客にとって、最も人気のあるのが、外湯めぐりである。昔ながらの施設がそのまま残り、浴室での地元住民との会話も楽しい。人と人とのふれあいこそ、温泉湯治の素晴らしさなのだろう。
訪日外国人の好むモノ・コトが具現化されて・・・
最近、訪日外国人の来訪者数が一気に上がっている。その理由は、古い食事場所や土産屋だけでなく、彼らが好む今風のカフェやバーが次々に開業していることにあるようだ。日本人の旅先での生活は、静かに屋内で夜を過ごすもの。一方、外国人たちは、夜な夜な外でワイワイやるのを好むようだ。
昨今問われている「ナイトタイムエコノミー」とは、立派なハコモノやコンテンツを指すのではなく、自分たちが興味関心を持つモノ・コトが多数存在し、それらを選択して夜を楽しむことなのだろう。
このように新旧混在する野沢温泉は、村全体がテーマパークとなっている。スキーをしなくても、十人十色の楽しさが存在するのだ。訪日外国人は、利便性が悪くとも、北陸新幹線飯山駅から路線バスに揺られてやって来る。それだけの魅力が野沢温泉にはあるのだろう。そこには、新たな観光地の発掘のヒントがあるような気がする。
(2016.07.14.撮影)
(これまでの特集記事は、こちらから) https://tms-media.jp/contributor/detail/?id=8
取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長