天草諸島への交通インフラは、1966年に天草五橋が開通すると大幅に改善された。これらの橋梁は、当初、有料道路だった。しかし、想定以上の観光客等の増加によって、39年間の無料償還が9年で償還された。しかし、地続きとなったものの、最果て感は否めない。
熊本市内から有明海沿いを走る。三角港までは、対岸の島原の山々や干満の差の激しい干潟が見える。途中、世界遺産となった三角西港など、見るべきものも豊富だ。そして、天草への入口である三角港からは、今でも観光船が就航し、水陸双方の交通手段が選べる。
三角港は、内海である有明海の出口にあたる港だ。ここはJR三角線の終着駅でもあり、熊本駅から「A列車で行こう」という観光列車も運行している。そのため、天草観光のキーステーションであり、島々を望む展望台や海産物の土産屋も存在する。
西陽の誘惑は、至福の別天地
天草諸島は、熊本側から上島と下島の順で位置する。観光高速船は、上島の港を経由しながら下島へ入っていく。また、下島には、イルカウォッチング体験や大空を飛ぶイルカがトレードマークの天草航空の拠点、天草空港もある。そして、観光船は右に左に方向を変えながら、進んでいく。対岸の島原普賢岳の姿も目に入る。
交通至便と言えない天草には、現在、部屋数が数室という高級旅館が増えている。仏教でいう西方浄土ではないが、本土から西方の海上の先には、天国に向かっていような至福の別天地。西陽に照らされた高速船が、魅力を倍加し、そこに誘っているように感じる。
(2016.11.11.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長