今にもお客様が乗車して、次の目的地に赴くような雰囲気を醸し出している駅舎。ここは、さまざまな列車が動態保存されている旧片上鉄道・吉ヶ原駅跡だ。
片上鉄道とは、岡山県北部の棚原鉱山からの硫化鉄鉱を備前の片上港へ運ぶために開業した鉄道だ。しかし、1991年6月にその歩みを止めた。かつては、貨物輸送だけでなく住民輸送も行なっていた。そのため、戦時下でも陸運統制令の枠外とされた。他社との事業統合や国有化もされずに残されたローカル鉄道である。そして、古い気動車や客車がその当時のまま保存されているという稀有な存在となっている。
廃線後、1998年には棚原ふれあい鉱山公園に数多くの列車が保存。同時に一部区間を活用して、今でも列車が走っている。廃線鉄道を活用した観光コンテンツは、全国各地に存在する。しかし、これほど大掛かりなものはない。また、近隣には、岡山県有数の温泉地・湯郷温泉もあり、温泉街も昭和レトロな町づくりも進めている。その時代にタイムリープし、古き昭和の時代を体感できる観光コンテンツとして、日々集客を目指している。
(2015.12.16.撮影)
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取材・撮影 中村 修(なかむら・おさむ) ㈱ツーリンクス 取締役事業本部長