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観光地域づくり法人(DMO)と天王洲アイル#14 ~DMOの課題と持続可能な観光まちづくり~

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一般社団法人天王洲・キャナルサイド活性化協会は、観光地域づくり法人(DMO)として、天王洲アイルの観光促進と地域活性化に取り組んでいます。前回は、跡見学園女子大学観光コミュニティ学部観光デザイン学科・篠原ゼミの学生をインターンとして受け入れ、産学連携の視点から天王洲アイルの観光地化についてご紹介しました。今回は、天王洲アイルの観光地化に向けた課題を整理し、観光地域づくり法人(DMO)として、持続可能な観光まちづくりについて検証したいと思います。

天王洲アイルのパブリックアート “猫も杓子も” / Art work by Damien Poulain (左)、“This is Mr. Shirai” / Art work by COIN PARKING DELIVERY
天王洲アイルのパブリックアート “猫も杓子も” / Art work by Damien Poulain (左)、“This is Mr. Shirai” / Art work by COIN PARKING DELIVERY

天王洲アイルの観光地化への課題

天王洲・キャナルサイド活性化協会は、観光地域づくり法人(DMO)に登録され1年が経ちました。当協会は、2015年から天王洲アイルの活性化を地域の企業、オフィスワーカー、住民の皆さまとともに「水辺とアートの街」のブランディングを育んできました。オフィスが中心であった天王洲アイルは、美しい水辺をもつアートのまちとして来街者も増加しています。しかし、東京の観光地として、観光客が訪れるまちにするためには、天王洲アイルの特性や観光資源のポテンシャルに加えて、観光地としての戦略的なマーケティングや運営体制の整備による持続可能な観光地化への取り組みが必要です。以下では、天王洲アイルの観光地化に向けたDMOとしての主な課題を整理しています。

天王洲キャナルフェス キャナルイースト会場(左) / アイルしながわ会場
天王洲キャナルフェス キャナルイースト会場(左) / アイルしながわ会場

①地域ブランディングの明確化

天王洲アイルは「水辺とアートの街」として、水辺の美しい景観やまちの中にアートを散りばめることにより、独自のブランディングを形成していますが、「観光地」としての認知度は限定的です。今後は、天王洲アイルの魅力をストーリーにして整理し、「天王洲らしさ」をしっかりと観光客に伝えていくPR活動が求められます。

②集客コンテンツと回遊性の強化

イベントの開催を通じて、天王洲アイルを訪れる人は年々増加しています。これは一定の成果と言えますが、恒常的に集客できるコンテンツの開発が課題となっています。また、天王洲アイル単体では観光資源が限られるため、近隣エリアと連携した観光ルートの構築も進めていきたいと考えています。

③地域住民・企業・施設との連携

天王洲アイルは、オフィスビルが中心のまちと思われがちですが、実は住居、文化施設、ホテル、店舗、イベントスペースなどがある複合型のまちです。観光振興をするうえで、地域経済への貢献や生活環境を踏まえた地域からの応援体制や連携の仕組みづくりが重要です。

④持続可能な運営体制の構築

天王洲アイルのDMOは、民間主導によりスタートしました。行政や企業の支援により、DMOとして運営されています。中長期的には、観光による経済効果を地域に循環させるビジネスモデルを構築することにより、持続可能な運営体制を目指していきます。

交通結節点 天王洲アイル駅 東京モノレール(左) りんかい高速鉄道
交通結節点 天王洲アイル駅 東京モノレール(左)、りんかい高速鉄道

⑤訪日外国人旅行者への対応

天王洲アイルの立地(羽田空港、品川駅、新宿、お台場、東京ディズニーリゾートからのアクセスの良さ)を活かすには、外国人旅行者へのサービス向上が不可欠です。多言語対応の案内やサービスの整備を進めるともに、受け入れ体制の整備が求められます。また、外国人旅行者が訪れる動機を高める、観光コンテンツの開発も必要となります。

⑥デジタルマーケティングとデータの活用

SNSによる発信力や来街者データの収集・活用が十分ではありません。今後は、データ・マネジメント・プラットフォーム(DMP)や顧客関係管理(CRM)システムを活用し、観光分析とマーケティング施策のPDCAサイクルを確立していきたいと考えています。

⑦都市と地方をつなぐゲートウェイ

当協会では、都市型観光地における新たなミッションとして、日本各地の観光団体との連携を推進しています。具体的には、天王洲キャナルフェスなどのイベントにおいて、地方の特産品や伝統文化を紹介するブースを設け、天王洲アイルを起点に全国の観光地をつなぐ試みを展開しています。このような活動は、地方創生や地域経済の活性化を目指し、都市部から地方への観光需要を創出・促進する新たな挑戦となります。

今後は、観光DXの施策としてARやVRといったデジタル技術を使い、地方の魅力を都市部で体験できる仕掛けも開発していきたいと思います。天王洲アイルは「都市と地方をつなぐゲートウェイ」としての役割を担い、日本各地のDMOとの連携を目指します。

天王洲アートツアー(左) 天王洲アートマップ(中) 東京港と天王洲アートクルーズ
天王洲アートツアー(左)、天王洲アートマップ(中)、東京港と天王洲アートクルーズ

水辺とアートから始まる都市観光のロードマップ

天王洲アイルが、観光地化を進めていくには、地域の特性を活かした「水辺とアートの街」というブランドをさらに深化させるとともに、地域全体の回遊性と集客力を高める取り組みが不可欠となります。また、地域住民や企業との連携強化、持続可能な運営体制の確立、多言語対応やインバウンド向けのコンテンツ整備、そしてデジタルマーケティングとデータ活用による観光施策の高度化など、包括的な観点からの課題解決が求められています。

また、天王洲アイルが「都市と地方をつなぐゲートウェイ」として、日本各地のDMOと連携による観光促進への挑戦は、都市型観光地の新たな役割となります。今後、天王洲アイルが国内外から選ばれる都市型観光地として成長するためには、これらの課題に戦略的かつ継続的に取り組むことが必要となります。

※アイキャッチは、「水辺とアートの街」 天王洲運河

寄稿者 三宅康之(みやけ・やすゆき) (一社)天王洲・キャナルサイド活性化協会 / 会長

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