前回は、奈良で商売をする時に、昔から下手の代名詞のように言われる「大仏商法」という言葉からの脱却に向けて「どうあるべきか」ということを私なりに簡単に綴らせて頂きました。
今回は、奈良県への観光目的での来県者数の推移を中心にお話させて頂きたいと思います。
コロナ禍前の来県者数に、早晩戻るであろう!
コロナ渦では当然のことながら観光での来県者数は激減しました。少し遡って、コロナ渦直前の2019年の数字を見てみたいと思います。
図➀をご覧ください。2001年からの奈良県の観光客数推移を表しています。
2019年の年間観光客数は4,502万人と、インバウンド観光客数の増加もあり、過去最高を記録していました。何かと比較されやすい、お隣の京都が5,352万人ですから、決して大きな差がついているということでもなさそうです。
2010年を除いて、ずっと3,500万人前後だった年間の観光客数が、2014年頃からインバウンド観光客数の増加もあり、大きく伸びてきています。
2010年が突出しているのは、「平城遷都1300年祭」が開催されたことによるものです。この効果が後押ししているものと推察されます。
外国人訪問客数は、意外と健闘している?
次に図②をご覧ください。奈良県の外国人訪問客数の推移を表しています。
2019年における外国人訪問客数は350万人(年間観光客数に占める割合は約8%)で、過去最高を記録しました。しかし、お隣の京都の外国人訪問客数は886万人(年間観光客数に占める割合は約17%)、奈良は大きく水をあけられています。
この人数は来日観光客数全体のそれぞれ約10%と30%といった割合になっています。隣接府県でありながら開きがあるのは、やはり交通の便と宿泊施設数に関係しているのではないかと思っています。
ただ個人的には、京都に比べ交通の便が悪い割には十分すぎるほど健闘。そして、部分的に「大仏商法」から脱却できつつあるのでは?と思っています(笑)。
これは、奈良の持つポテンシャルの高さを来県者の皆様が感じている。そして、奈良で商売されている一部の方々が気づき始めたからだと考えています。
この気づきが自治体や観光に関係する個人から組織まで拡大し、大きな協力体制を構築することで、将来が楽しみになっていくと信じています。
ポテンシャルの高い、新たな観光コンテンツが誕生!
現在、JR東海の「いざいざ奈良」キャンペーン等もあり、奈良県の来県者数は増加しています。
今後も、2025年の大阪・関西万博。2026年の「藤原京関連資産群」の世界遺産登録。さまざまなイベントが来県者数の増加を後押ししてくれると思います。
既存の有名神社仏閣・遺跡・古墳等への見学者が増加しています。
それに加え、「壬申の乱」にゆかりのある「牽牛子塚古墳」をはじめとする飛鳥周辺地域。邪馬台国に関わりがあるかもしれない桜井市周辺地域。2023年1月に「蛇行剣」(長さが237cmと国内最大の鉄剣)と盾形銅鏡の「ダ竜文盾形銅鏡」が発見された国内最大の円墳である「富雄・丸山古墳」。新たなコンテンツが、奈良の持つポテンシャルを今後も高めていくと思います。
次回以降も、これからも目が離せない、壮大な歴史ロマンの集合体・奈良(大和の国)のことを、雑学を交えながら、様々な角度から検証していきたいと思います。
(つづく)
寄稿者 志茂敦史(しも・あつし) 奈良交通㈱ 東京支社長